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第484話

たぬきの個室での懇親会が始まった。 会議も池谷さんのお陰で思ったより進み、これなら早い段階でG&Kにプレゼン出来ると内心思った。 「池谷さん、改めて宜しくお願いします。それじゃあプロジェクトの成功を願って、乾杯」 「こちらこそ宜しくお願いします。乾杯」 「「「乾杯」」」 俺の音頭で懇親会が始まった。 「池谷さん、すみません。こんな居酒屋で。ここ良く使ってるんで融通が効くんです」 田口が恐縮しながら話す。 「全然構いませんよ。料理研究家って事で、良いものばかり食べてると思われがちですが、そんな事無いですから。居酒屋も良く行きますし」 「へえ~、私達が思ってるのと違うんですね」 「そうですよ。皆さんと変わりませんよ」 そう言って居酒屋料理を口に運び「これ美味しいです」と言って食べる所は庶民的だ。 「やあ、池谷さんのお陰で思ったより、早く進んで助かりました」 「ほんと私達だけだと思いつかないレシピで。やはり専門家が入るだけで違いますね。私も佐藤も料理は殆どしませんから。香坂は自炊はするらしいけど、な、香坂」 「素人の自己流で適当です」 「得意料理は?」 ミキの得意料理かぁ~。 '何でも旨い’ と言いそうになった。 サッサと冷蔵庫にある物で作ったり、時間短縮でレンジも上手く使って早くて旨い。 俺だけが知ってるんだと1人でニヤけそうになる。 「特にはありません。本当に適当です。調味料も目分量ですし」 「料理上手な人は、目分量でやっちゃうんだよ。へぇ~、次回のアシスタントも楽しみだ」 池谷さんを上座に俺と田口が向かい合い、俺の隣には佐藤、田口の隣には出入り口の近くにミキが座ってる 池谷さんが1番離れてるミキにやたらと話し掛けるのが気になるが、まあ、プロジェクトでもミキとの絡みが多いから、コミニュケ-ションを取ろうと思ってるのかも知れないが。 それにしても、ミキの顔が何だか浮かない顔をしてる緊張してるのか?それか疲れたのかも知れない。 そう思ってると話題は料理から恋愛話に変わっていた 「池谷さんってモテそうだけど、彼女は?」 やはり佐藤が聞いた。 「お前、本当にそう言う話し好きだよなぁ~」 田口に言われ、開き直った顔で話す佐藤。 「ここに居る人、皆んな独身なんだし良いじゃないですか?それで彼女は?やっぱクッキングスクールやってるだけあって、生徒さんからも誘われたりしませんか?」 ははははは… 「しませんね。あっ、でも、たまに居ます。丁寧にお断りします。1人と個人的にどこか行くと、後で面倒事になりますからね。もし行くとしても、何人かで行くようにしてます。女性は怖いですからね。それと彼女ですか?最近、別れたんですよ。忙しくって、なかなか会えないのが原因ですかね。やっぱり女性は側に居て欲しいんですね、同じ職場の人と付き合うからって振られました」 「す.すみません。そんな事とは知らず」 流石の佐藤も恐縮してた。 「いいんですよ。忙しくって放っていた私がいけないんですから。何となく別れの予感もしてましたし。ですから、気にしないで下さい。本当に女の子は難しいです」 「同感です」 佐藤と池谷さんはその点では、意気投合していた。 年も近いし、直ぐに田口や佐藤とも馴染むのも早かった。 ミキは黙って笑って聞いていた。 食べて飲んで和やかに進み、そろそろ終わろうかと言う時間だった。 今日はミキをこのまま俺の部屋に連れて行こうと考えてると、池谷さんから俺だけに聞こえる様に話してきた。 「香坂君って、素直で可愛い~ですよね。さっき、眼鏡取った所を見たんですが、凄い綺麗な澄んだ目をしてたんですよ。眼鏡と前髪で隠すの勿体無いくらいですよ。隠された美貌って感じですね。あ~、勿体無いなぁ。僕のタイプなんだけど…」 「………」 「実はここだけの話、僕は男も女も両方大丈夫なんですよ」 「……そうですか」 なぜ、それを俺に言う必要がある? ミキの眼鏡を取った素顔を見たとは、どう言う事だ? 考えてると内緒話するように、更に近づいて小声で話す。 「成宮課長も…そうなんじゃない?」 「……そう見えますか?」 「ん~、女の人にモテる割りには……まあ、僕の直感です。当てにならないので、気にしないで下さい。そうそう、次回の香坂君のアシスタント楽しみだなぁ~」 ミキ狙いか? 何で、次から次へと……モテる恋人を持つと気苦労するが……俺の者だと思うと、自慢と嬉しさがあるのも本当だ。 「課長、そろそろ」 「おっ、じゃあ締めるか。それでは池谷さん、今後共宜しくお願いします。それじゃあ、次回は2週間後と言う事で」 「「「はい」」」 「こちらこそ楽しみです」 どう言う意味の楽しみなんだか? 意味不明な言葉だ。 店を出てタクシーに池谷さんを乗せて見送り、俺達4人は、まだ早い時間だから電車で帰る事にした。 方向が違う田口と佐藤とは改札で分かれた。 「ミキ、今日このまま俺の所に来ないか?」 「俺も今日は帰りたく無いと思ってました。お邪魔して良いですか?」 「当たり前だ。早く部屋でゆっくりしたい」 「俺もです」 早く2人っきりになりたい。 電車からの流れる景色を眺めていた。

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