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第488話

「こんばんわ」 「優希さん!」 「優希さん、遅いよ~」 現れたのは、優希さんだった。 俺を見つけた優希さんが笑いながら声を掛けて来た。 「やっぱり、成宮来てたんだ~」 「当然! 優希さんこそ何で?」 「沙織さんに連絡貰って、今日、美樹君がここで料理習ってるからって」 ここまでネットワ-クが広がってるのか、ある意味怖い 「まさか、龍臣まで来るんじゃねぇ~だろうな」 「龍は、今日、接待で来られないし、尊も友達とご飯食べて来るって言ってたから。夕飯がてら美樹君の頑張ってる姿見ようと思って」 「そう」 「優希さん、立ってないでこっち座って~」 真琴君に呼ばれ隣に座ったが、ミキの働いてる姿を見て「すっごい可愛い~。エプロン姿似合ってる~」スマホを取り出しカシャカシャ…写メを取り出した。 おいおい、優希さんもかよ~。 「優希さん! 来てくれたんですか?」 「仕事で遅くなっちゃったけど。ねぇ、その姿で写メ撮って良い?龍にも見せたいから」 「恥ずかしいですけど、1枚だけなら」 カウンターの中でピ-スサインで写メを撮られていた。 良く言うよ。 散々、写メ撮ってた癖にと思ったが、そんな事言ったら3人に何を言われるか解らないから心に留めていた。 ったく。ミキの周りには、ミキのファンが多くって困る。 それもミキの魅力なんだろう。 「皆んな揃ったし乾杯しよう。大将、適当にお料理出してね。乾杯」 仕切り屋の沙織の音頭で、俺達はビ-ルで乾杯した。 「ん~旨い」 「優希さん、これさっきミキが作った出汁巻き卵だよ食べて.食べて。メチャメチャ美味しいから」 「うわぁ、良く出来てるぅ。素人が作ったとは思えない出来栄えだね。ん~ふわふわで美味しい~」 「でしょ.でしょ」 俺を放って3人で盛り上がってる。 おやじの指示に従って、ミキも忙しそうに働いてる。 頑張ってるなと、ずっとミキの姿を眺めて飲んでいた 次々と出てくる料理を食べ、たまに沙織達の話に加わり楽しく過ごした。 こんな時間も良いなぁ~と思った。 「ヨシ君、そろそろ上がって食事しなさい」 おやじがミキに声を掛けた。 時間を見ると9時30になろうとしていた。 おやじには10時には帰れる様にしてくれと頼んでいた おやじに言っとかないと、ミキはいつまでも頑張ってしまうと思ったからだ。 おやじも気に掛けてくれてたんだと、おやじの心遣いに感謝した。 素直に「はい。それじゃあ、上がらせて貰います」と言って、奥の部屋に引っ込んだ。 エプロンを外し、ス-ツの上着を着て鞄を持ち俺の隣に座った。 「ミキ、お疲れ様」 「疲れたでしょ?」 「休んで.休んで」 3人から労わりの声が直ぐに掛かった。 愛されてるんだなぁ~と、俺の方が嬉しくなる。 「慣れないから少し疲れたけど、楽しかったです。大将の側で見てるだけで勉強になります。ありがとうございます。大将」 律儀に、おやじにもお礼を言うミキに、またおやじは嬉しそうな顔をし、ミキの前に煮魚と炊き込みご飯、味噌汁.刺身を出した。 「疲れだろう。ほれ、これでも食べて。わしも楽しかった」 「わぁ~美味しそう」 お腹が空いてたのかモグモグと食べ始めた。 余程、腹が空いていたんだろうな。 仕事を定時で上がって、それからおやじの店で働いてるんだからな。 「ミキ、少し経ったら帰ろう。明日も仕事だしな」 「はい。伊織さん、やっぱり大将の所で勉強させて貰って良かったです」 「そうか。ほら、話すより食べてしまえよ」 「は~い、この炊き込みご飯美味しい~」 「俺もさっき食べた。味が染みてて旨かった」 「うん.うん」 「ミキ、食べたら少し話さない?」 「うん。今、行く~」 真琴君に呼ばれサッサっと食べ、真琴君達の所に行ってしまった。 ゆっくり食べれば良いのに、忙しい奴だ。 暫くは真琴君達と楽しそうに話してる所に俺が声を掛けた。 「ミキ、そろそろ帰ろう」 「あっ、はい。マコ.沙織さん.優希さん.今日はありがとう」 「何言ってんの~。僕達は来たかったから来ただけだよ~」 「そうよ。今度は金曜日でしょ?また来るわ」 「私も仕事の都合によるけど、来られたら来るね」 おい.おい、また来るのかよ~。 「うん。また金曜日ね」 「俺達は先に帰るけど、まだ居るのか?」 「私達はもう少し居るから。成宮、気にしないで帰って良いよ。帰りは車呼んで真琴君と沙織さんを送って行くから」 「んじゃ、頼みます。龍臣にも宜しく言って下さい」 「じゃあねぇ~」 「またね~」 3人は挨拶すると、直ぐに話し始めた。 「じゃあ、おやじ。また金曜日宜しくな」 「また、金曜日来ます」 「待ってるぞ。そうだ、ヨシ君、これ持って行きなさい。明日の朝ご飯にでも」 紙袋をミキに渡し、中身を見ると炊き込みご飯と少しばかりのおかずがタッパに入っていた。 ミキが嬉しそうにお礼を話すと、おやじも嬉しそうにしていた。 「じゃあな」 「お先に~」 ガラガラ…ガラガラガラ… 本当はタクシーで帰りたい所だが、ミキが電車で帰ると言うと思って駅に歩いていく。 ミキが帰り仕度する為に奥に引っ込んだ時に、おやじが俺に小声で 「ヨシ君、仕事絡みでわしの所に来たかったのもあるらしいが、この機会に料理を少しでも習って、お前に美味しい物を食べさせたいって言ってたぞ。本当に良い子じゃ、大切にするんだぞ」 思い掛けないミキの俺に対しての思いやりに、心が温かくなった。 おやじに言われなくとも大切にするが、本当に俺には勿体無いくらいだ。 外見の美しさはもちろんだが、心まで美しい。 純粋で素直で穢れを知らないミキの優しさに、俺はいつも癒される。 絶対に、誰にも渡さない。 ミキと並んで歩く帰り道で、今日は一緒に居たいと思い。 「ミキ、このまま俺の所に来ないか?今日は疲れてるだろうから何もしない、誓う。ただ一緒に居たい、いや抱きしめて寝たい」 「伊織さんったら、凄い口説き文句ですね。俺も一緒に居たいです」 暗闇の中で街灯の灯りで照らされるミキの顔が微笑んでいた。 ミキを腕の中で抱いて寝られる。

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