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第491話
部屋着に着替えたミキがやっとソファに座った。
「ふう~、やっと落ち着きました」
俺の部屋が落ち着くと言う事か、それ程ミキがこの部屋で過ごしたと言う事だろう。
そんなミキの些細な一言でも、俺には凄く嬉しかった
「お疲れさん。コ-ヒ-入れたぞ」
「ありがとうございます」
隣に座るか迷い、ミキをソファからラグに座らせ背後に陣取る。
背後から抱きしめ、やっと俺も落ち着いた。
「どうだった?」
「う~ん、やはり池谷さんが紹介するだけあって、どれも美味しかったです」
「そうか。酒は飲んで無いみたいだな?勧められ無かったのか?」
「勧められましたけど '料理を美味しく食べたいから、今日は止めておきます’ って断りました。……伊織さんと約束したし」
俺との約束を優先してくれたミキをギュッと抱きしめた。
ミキの腹の前にある俺の腕と手を摩りながら話し続けた。
「お店もミシュラン1つ星をとった程で、料理も凄く美味しかったです。店の雰囲気も木の温もりのあるシックなお店でした。料理長は池谷さんの知り合いらしく今回は通常の料理の他に池谷さんからの注文した料理も2品程作ってくれてました」
「へえ~」
「通常の会席料理も美味しかったです。池谷さんがヘルシー料理を2品頼んでいて、こんにゃくに豚肉を巻いた揚げ物と豆腐のデザートを頂きました。こんにゃくや豆腐を使ってるのに全然物足りなさを感じ無かったです。凄~く、美味しかった~」
「池谷さんも使えそうなレシピをミキと一緒に、実際に食べてみようと思ったのか?」
これなら俺の思い過ごしか?
純粋に仕事絡みだったのか?
「そこのお店、外国の方が多く来店するみたいで。料理長が店を開く際に、池谷さんがアドバイスしたらしいです。料亭や小料理屋はなかなか敷居が高く日本人でも入店しづらい、どうせなら外国人観光客相手にした方が儲かるかもって。ズバリ当たったみたいで、今ではガイドブックにも載ってるらしく、問い合わせや予約がいっぱいだって喜んで話してくれました。さすが池谷さんですよね」
池谷を褒めるミキ。
背後に陣取って良かった。
今の俺の顔は嫉妬で見苦しいだろうな。
「そうか、先見の明があったんだな」
ミキの話に合わせることで回避した。
「そうですね、凄いですよね。それと出てくる料理も1つ1つ教えてくれて勉強になりました。あっ、その料理長が話してたんですが、外国人相手なら料亭みたいに先付.小鉢と順番に出すより、ある程度お膳で出してメインを何個か別器で出す方が喜ばれるって言われ、池谷さんともその方が良さそうだねって話しになりました。それから、料理長が外国人が好きそうな物など教えて頂きました」
「ふ~ん、成る程な。待つ楽しみもあるが、それは外国人には通じ無いか。そうだな、その案で明日、田口にも話してみろ」
「はい」
ここまでの話しでは、やはり仕事絡みだな。
「そうか、じゃあ池谷さんに誘われたのも強(あなが)ち間違いじゃ無かったか」
「………そうですね」
何だ.何だ?さっきまでの勢いとは、声のトーンが全然違う。
やはり何かあったのか?
「ん、どうした?何かあったか?」
「……始めは、お店の雰囲気や料理長との話しや料理が出る度に説明をしてくれたりと、勉強にもなったし楽しかったですが……」
そこまでは、ミキのさっきの話しで解る。
「ですが…何だ?」
「豆腐の使ったデザ-トを食べてる時だから…もう最後の方ですね。池谷さんが……」
池谷が……何だ?言い難い事か?
ミキに手出ししたら、俺も黙っては居ない!
「何だ?言ってみろ!」
「……池谷さんが伊織さんの話しを持ち出してきて凄~く質問されました。恋人はいるのか?どんな人がタイプか?仕事面ではどうか?モテるでしょ?とか、色々聞かれて困りました」
何だ?それ。
「それで、ミキは何て答えた?」
「プライベートは解りません。恋人は居ると聞いてます。仕事面では頼り甲斐のある上司です。本人は言ってませんけど、モテるって他の人が言ってたのは聞いてます。と答えました」
「そうか。別に変な事は言って無いと思うが?」
プライベートは知らないが解る範囲で話すと言うスタンスだな。
「……他にも、伊織さんの事ばっかり聞いて、もしかして……伊織さんの事を知りたいから俺が誘われたのか?と。それに前に池谷さん、男も女も恋愛対象だって、こっそり教えくれたので。……言い方悪いですけど、伊織さんの事狙ってるのかもって……」
はあ?
ミキの話しだと確かに俺を狙ってるように感じるが?なんだか腑に落ちない。
「で、ヤキモチ?」
「……そうです。池谷さんに伊織さんを取られたく無いって。後半は池谷さんと話すのも嫌になっちゃうくらい妬いて…俺、ヤキモチ焼きなんです。池谷さんにも感じ悪かったと思います」
「ミキ」
「…………」
返事もせずに、背後に居る俺には構わず体育座りで膝を抱えて落ち込んでた。
俺にとっては、ヤキモチ妬かれるのは嬉しい限りだ。
ズバリ言い過ぎたか?
落ち込んで拗ねてるミキのご機嫌を取るか。
それも楽しい~♪
背後でニヤニヤしてる俺を知らずに、体を小さくして落ち込んでるミキ。
可愛い過ぎて、どうしてやろうか?と頬を緩めた。
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