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第497話

月曜日の午後、突然の来訪だった。 「こんにちは♪」 声かする方に顔を向けると、入口付近に池谷が立っていた。 「あれ~。池谷さん、どうしたんですか?今日、打ち合わせありました?」 田口がすかさず対応した。 俺達の方に向かい歩いて来ると、俺の席の前で 「月曜日なら、皆さんいらっしゃるかと思って。これ、今日の教室で作った物ですけど、後で皆さんで、どうぞ。因みに、豆腐チ-ズケ-キです。今度のプロジェクトのデザ-トの1つと思って作りましたから、味見してみて下さい」 「ありがとうございます。後で、皆んなで頂きます。あっ、上野さん。すみません、お茶とこれ冷蔵庫にお願いします」 「お茶はいいです。直ぐにお暇しますから」 上野さんに渡すと嬉しそうな顔をし、池谷にお礼を言って、いそいそと冷蔵庫に仕舞いに行った。 幾つになっても、女は甘い物に目が無いなぁ~と、上野さんの可愛らしさが見えた。 「凄え~な。豆腐でチ-ズケ-キ作れるなんて~」 「さすが料理教室やってるだけあるなぁ~」 「楽しみですね♪」 池谷を褒めたり賛辞の言葉が飛び交っていた。 「所で、わざわざ届けに?」 その為だけで来訪する筈無いと思っていた。 「あっ、そうそう。今週の金曜日の件で。うちの教室スタジオには私が作る過程を収録して、それを大きな画面で見ながら、生徒さん達は作り始めるんですけど良かったら撮影はその機材を使いませんか?」 「ありがとうございます。そうして頂ければ助かります」 「いつも撮影しながら教えるんですよ。何回も同じ画像流せますし、その間、生徒さんとコミュ二ケ-ションを取る時間持てますから。教室終わった後は、その画像を加工してホ-ムぺ-ジとSNSに上げてるんです。便利ですよねぇ~」 「凄いですね。教室だけじゃなくそういうのもやられてるとは。忙しいのに」 「慣れると簡単に出来ますよ。あっ、そうそう、本題に入りますね」 やはり何かあるのか? 「何でしょう?」 「金曜日の撮影前に、香坂君をうちの教室体験して貰おうかと思って。今日は急だろうし水曜日の夜の教室にでもどうかと。当日は一応アシスタントで入ると言う事なので、1度教室の雰囲気と物の場所確認も兼ねてと思いまして」 また仕事絡みだ。 こちらが断り難いように策を考えてるとしか思えないが、今回は池谷の意見も最もの事だ、断る理由が無いが……。 「なぜ?それを私に」 前回は、香坂に直接だった筈だが…。 「就業時間外で前回も仕事半分プライベート半分で香坂君を誘ったけど、上司の許可を貰ってたからね。また本人に誘っても許可を貰うのかなって、だったら初めから許可貰った方が話しが早いと思って、どうですか?」 声を落とし他には聞こえないように話す池谷は自然と俺に距離が近い。 それを不安な目で見てるミキと目が合った。 「香坂、ちょっと良いか?」 「はい」 大丈夫だと目で訴え俺の席に呼ぶ。 池谷からの話しをミキに話す。 「そうですね。当日にアタフタとするより事前に場所とか知ってた方が良いですね。解りました。水曜日に伺いますが私が急に入っても大丈夫ですか?」 「大丈夫.大丈夫。その時は見学を兼ねて私のアシスタントのアシスタントをやって貰うつもりだから」 「はい、解りました」 「じゃあ、水曜日ね。7時からの教室だから。これがパンフレットね。場所も、そこに載ってるから」 「はい。あと、この間はご馳走様でした。とても勉強になり美味しかったです」 「そう言って貰えると誘った甲斐があった。また今度も宜しくね」 ミキの肩をポンポンと気安く叩き、用は済んだとばかりに挨拶して出て行く。 「じゃあ、皆さん、金曜日に」 「はい、ご馳走様です」 「ありがとうございます。頂きます」 ミキも自席に戻り、田口や佐藤も通常業務に戻った。 俺も一応通常業務に戻ったが、頭の中では池谷はやはりミキを狙ってるんじゃ無いか?と、疑問から確信に変わりつつあった。 それと池谷の「上司の許可を貰う」って、発言も気になる。 確かに仕事絡みの誘いだ、就業時間外だとしても上司の報告.許可を貰っててもおかしくないとは思うが、池谷の意味深な目が気になる。 何か感付いたか? 会社では、俺もミキもそんな素振りも見せて居ないと自負してるが……。 あ~、良く理解出来ない男だ、イラつく。 まだ、ミキに積極的にアプロ-チしたり口説いた方が、まだ対処のしようがある。 解り易い方が俺も動けるが……掴み所の無い池谷が不気味だ。

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