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第508話
「ありがとうございました。楽しかったです。送って貰って、すみません」
予定通り映画を観て、デパートやら雑貨屋などをフラフラ見て歩き食事をして、ミキのマンション前に着き今は車の中だ。
「送るのは当たり前だ。良いから早く寝ろよ。明日も仕事だからな」
「はい」
車のドアに手を掛け降りようとするミキの腕を引き運転席から乗り出し、ミキの後頭部に手をやり深いキスを仕掛けた。
クチュクチュ…ヌチャヌチャ…
離れ難く名残惜しい。
咥内で舌を絡め堪能し唇を離した。
「はぁはぁ…もう」
「おやすみのキスだ。ゆっくりと寝ろよ」
頭をポンポンし体を離した。
「こんなキスされたら、ゆっくりなんて寝れませんよ」
「添い寝でもするか?」
くっくっくっ……
「遠慮しておきます。じゃあ、本当におやすみなさい」
助手席のドアを開け降りてしまった。
窓を開け「ここで見てるから、早くマンションに入れ」過保護と言われようが、何があるか解らんからな。
ふふふふ……可愛く微笑み。
「はい。じゃあ、明日会社で。気を付けて帰って下さいね」
俺の事を心配し、マンションへ歩き1度振り返り、俺に手を振って中へ消えて行った。
可愛い~な。
ミキが消えたマンションを暫く見て、俺も自宅に車を発進させた。
部屋に入って着替えソファで一息ついた。
「まだ、10時前か」
俺はスマホから電話を掛けた。
♪♪♪♪~♪♪♪♪~
「何だ?」
祐一が機嫌悪そうに出た。
「電話の一発目に、それは無いだろう」
「はっ、お前に猫撫で声で出る言われは無いしな。また、喧嘩か?」
喧嘩じゃないと祐一に電話しない様な言い方だったがま、何か無いと電話しないからな。
「いや。喧嘩はしてないが、祐一に聞きたい事があってな」
「何?どうせ、ミキの事だろうけど」
「ミキの事以外で、お前に聞く事なんて無いからな」
「へい.へい。で?」
俺は池谷との事を掻い摘んで話した。
「ふ~ん。ま、ミキのファンは確かに居る。そんな事を確かめに電話したのか?下らねぇ~な。解りそうな事だろうが」
「ミキのファンが居る事は俺にも察しがつくっつ-の。ただ ‘金曜日の女神(ヴィ-ナス)’って、本当に呼ばれてたのか?と思ってな。センスの無いネ-ミングだし」
「ああ、それな。いつから言われてたのか?誰が言い出したのか?は解らんが、確かに陰でそう呼ばれてたな。当の本人は自分に無頓着だから知らないだろうがミキ以外は店の客は殆ど知ってるんじゃ無いか?たぶん、ミキが金曜日の夜に現れる確率が高かったからだと思うが…」
「やはりな。ミキはそう陰で呼ばれてるのは知らないだろうと思っていたが。知ったら嫌がるだろうな」
くっくっくっ……。
「そう笑うなって。ミキが店に来るのと来ないとでは売り上げも多少なりと変わる程だからな」
「マジで?」
「今は、そんな事も無くなったが当初はな。ま、そのくらいファンは居たって事だ」
「ふ~ん。良く金曜日に来るって1人でか?」
俺と出会う前の事だが……少しだけ気になった。
「まあな。1人の時もあったしマコと一緒だったり……その時に…ま、昔の話だが……その時に付き合ってた相手だったりな。隠れファンはまだ良いが……ミキ狙いの奴も居たな」
そうだよな。
ミキ見たさに通ったと池谷も言ってたくらいだ、他にもそんな奴は大勢居ただろう。
そうか、当時付き合ってた奴とも…か。
祐一や真琴君はミキの男遍歴は全て知ってるんだろうな。
今更、俺が聞いても仕方ない事だ。
お互い聞かない方が良い事もあると、無理矢理に納得する事にした。
「そんな事聞きたくって電話したのか?そんな昔の話を?お前、ミキの過去知りたいのか?そんな事を愚問愚答したって仕方ないと思うが?下らねぇ~」
「悪い、そんなつもりは無い。ミキにも過去はあるし俺にもある。そんな過去はどうでも良い。俺達には、これからの方が大事だ」
「ふ~ん、なら何?」
「いや。池谷から聞いて、本当にそんなセンスの無いネ-ミングで呼ばれてたのかと思ったのと……昔から、祐一と真琴君はミキを守ってくれてたんだなって改めて思った。ありがとうな。これからも頼む!」
何となく祐一に照れ臭いが本音を話した。
「何だか気持ち悪いが。ミキはマコの親友だしマコからも頼まれてたからな……後…変な意味に取らえれるなよ?」
何だか言い難そうだ。
「何?まさか。昔、ミキを好きだった何て言うなよ!」
‘まさか’ とは思ったが、あのミキの美貌を目にすれば……。
「まあ確かに、初めて会った時は目を奪われたのは本当だ。店の客にも綺麗な奴も居たが、そんな奴らを何十人と見てきた俺でも ‘群を抜いてる’ と思った程だからな。でもな、ミキは何て言うか……穢れを知らない素直な性格が気に入ってるし外見とのギャップが面白い。それに放っておけ無い健気さがあるんだよ。弟みたいな妹みたいな感じだな」
ここにもミキを家族と感じてる奴が居たと俺も嬉しかった。
「お前の場合も隠れファンか?真琴君はファンを通り越して信者だし。困ったカップルだ」
嬉しさを隠し、わざと憎まれ口を聞いた。
それに、こいつの場合はファンって言うより、趣味の人間観察に近いしな。
「くっくっくっ…そうかもな。まあ、マコの崇拝的信者には負けるな」
「沙織もな」
「だな」
さり気無く、俺と出会う前に真琴君と2人でミキを守ってあてくれた礼は言ったつもりだ、祐一も解ってくれたと思う。
祐一に礼を言う事何て無いに等しいから照れ臭い。
「何だか下らねぇ~話しになったな。じゃあ、またな」
「解った」
祐一との電話を切り、これで池谷との事も解決したしと胸を撫で下ろした。
それにしても、本人は全く意図しない所でそんな攻防が有ったとはな。
ミキが自分に無頓着で無自覚天然で良かった。
俺の知らなかったミキの過去を垣間見たが……ミキの美貌に惹かれ魅了されたファン達には悪いが、今は俺だけの者だ。
今後は、そんな奴は蹴散らしてやる!
良し、後1週間もすれば夏休みだ。
ミキと思いっきり楽しむぞ!
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