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第514話

熱海湾に着き近くの駐車場に車を置き、何とか間に合ったフェリーに乗る事が出来た。 熱海湾から初島までフェリーで30分程の船上だ。 デッキで潮風に当たり海を感じる。 「気持ち良い~♪」 「大丈夫か?酔うなよ」 「はい。風に当たってれば大丈夫です」 沢山のカモメが飛びながら、いつまでも着いてくる。 遠くに見えていた初島が段々と近くなって来た。 「あれが初島だ」 「もうすぐですね。楽しみです♪」 青い空と海が夏を感じさせる。 初島に着いたとアナウンスがあった。 荷物を持ちフェリーを降りて、島に初上陸だ。 「うわぁ~、初島に来たんですね~」 「着いたな。ホテルの車が来てるはずだ」 見渡すとホテルの名前が書いてある車を発見し挨拶し乗り込んだ。 車で15分程行った所にホテルはあった。 都会の俺達から見れば余り大きく無いリゾートホテルだが、島には民宿が多い中で数少ないホテルだ。 ホテルマンに案内され部屋に入った。 リビングとベットルーム.浴室とトイレと言う良くある部屋だが、小さなバルコニーから海が見える。 全ての客室から海が見えると言うのが売りらしい、俗に言うオ-シャンビュ-だ。 「海が近い~♪」 「どうする?少し島を散歩して海行くか?」 「行きた~い♪」 部屋に入って間も無いが荷物を置いてホテルを出て、近場を散歩し海を目指す事にした。 部屋を出ようとするミキの腕を掴み抱き寄せ唇を奪い舌を捻じ込み舌を絡めとり直ぐに唇を離した。 額同士をくっつけたまま待ち切れなかった想いを伝えた。 「早く2人っきりになりたかった。これ以上スルと部屋に籠る事になるが……どうする?」 答えは解っていたがわざと聞いた。 「……海見たいです」 体を離し頭をポンポンする。 「じゃあ、お楽しみは夜に取って置くか。キスもシタしな。取り敢えずは満足だ。ほら行くぞ」 「は~い♪」 今度こそ部屋を出た。 ホテルから出ると、海からの風と晴れ渡る空が気持ち良い。 海の匂いを嗅ぎながら腕を大きく伸ばした。 「気持ち良い~♪」 「散歩日和だな」 ホテルを出て歩き始めて間も無くカサッカサッと、草が揺れ顔を覗かせたのは黒い島猫だった。 「猫ちゃん♪」 ミキの声に反応し、草むらからノソノソと出て来た。 大きな黒猫で金色な目が印象的だ。 俺とミキの顔を見て、ミキの足元に頭を擦り付け戯れ出した。 珍しい。 ミキ自体は動物好きだが何故か?動物に嫌われるのを何度か見てきた俺には珍しい光景だった。 今までは、動物から寄って来た事が無かったミキは大喜びだ。 「可愛い~♪ 伊織さん、俺に懐いてるぅ♪」 「島民が餌与えたりしてるから人馴れしてるんだろ?観光客も多い所為もあるのかもな」 ミキも嬉しそうに足元の黒猫を屈んで頭を撫でてる。 「クロちゃん♪ クロちゃん♪ 可愛いですね♪ 伊織さん、女の子かな?」 名前付けたのか? 黒猫だからクロちゃんか、安易だな。 ミキの単純さに微笑む。 持って来たスマホでミキと黒猫の光景を数枚写メし、俺も屈んで黒猫を見るとしっかりと大きな玉々と男のシンボルが見えた。 ミキの足元から離れず、俺には見向きもしない黒猫を ‘こいつ面食いだな’と思っていた。 「いや、オスだな。立派なモノぶら下げてる」 「もう、変な言い方しないで下さい。へえ~男の子なんだ~。そう言えば、何処と無く大きい体に風格が有りますよね?」 「そうだな」 俺も頭を撫でようとすると俺の手を避け、ミキに擦り寄り纏わり付く黒猫を嬉しそうに頭や体を撫でていた ん?何だ~この黒猫~。 野性の勘で、俺がミキの恋人だって解って挑戦的な態度取ってんじゃねぇ~だろうなぁ? そう言えば、猫にして堂々として自信たっぷりって風貌してる。 ミキは人間だけじゃなく猫にまでそう言う奴らを引き寄せてしまうのか? まさかな。 嬉しそうな顔して黒猫ばかり構うミキ。 もういい加減に猫から離れて欲しい。 「ミキ、そろそろ行こう」 「あっ、はい。またね、クロちゃん♪」 ニャ~ゴ.ニャ~と何度か泣き別れを惜しんでるようだ。 歩き始めて後ろを振り向き手を振るミキに黒猫は数m程俺達の後を着いて来る。 「ダメだよ。もう、お家帰りな。バイバ~イ♪ またね」 ニャ~.ニャ~… 歩き出し気になるんだろう振り向き手を振るが、猫は立ち止まり俺達を見送っていた。 「もう着いて来ないですね」 「縄張りでもあるんだろう?その内黙ってても帰るさ」 「あ~可愛いかったなぁ~」 「そうだな」 猫にまで少し妬いたのはミキには内緒だ。 それからホテルの周りを歩いて散歩し、日用品と食料品を売ってる小さな個人店と食べ物屋(食堂)が2軒あった。 ホテルから目の前の海にも散歩しに行くと、家族連れやカップルと海水浴している。 砂浜を歩いてキラキラ光る海を見た。 「石垣島とは海の色が違いますね。石垣島はエメラルドグリーンだったけど、こっちは青ですね。あ~泳いでる。気持ち良さそう~」 「石垣島は南の島って感じだったからな。砂浜も違うよな。こっちは砂が荒い。……海、入りたかったか?」 「まあ…でも、明日にはシュノ-ケリング出来るし。こうやって海見てるだけでも良いです」 「今日の分、明日名一杯楽しもうな」 「はい」 暫く砂浜に座り海を見て話していた。 オレンジ色の夕日が落ちていくのを2人で見てロマンチックな気分に浸った。 石垣島で見た夕日も綺麗だったが、初島での夕日も海に反射して綺麗だった。 「夕日が綺麗ですね。石垣島でもこうやって夕日見ましたね」 ミキもそう感じていたらしい。 海辺でも2人のツ-ショットやミキだけを写メし数枚撮った。 この旅行で沢山の写真を撮り、旅行が終わったら2人で見よう。 思い出に浸って語るのも楽しみだ。

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