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第516話

「伊織さ~ん、早く.早く~」 砂浜を先に行くミキが待ち切れないと俺を急かす。 「そんな焦らなくとも海は逃げないぞ。それより前を見て歩け! 危ないからな」 「は~い♪」 元気良く返事をし、ホテルのダイビングショップで予約レンタルしたフィン.ライフジャケットと、俺が持って来た石垣島で使ったシュノ-ケルとマスクを手に持ち走るから危ない。 はしゃいでるな。 体の線が解るウエットス-ツの上にはTシャツだけ羽織り、可愛い尻はぴったりしたウエットス-ツでプリプリと小さな尻が露わになっている。 俺も同じ様な格好だが。 ダイビングショップでシュノ-ケリングの場所と穴場を教えて貰い、海水浴場を通り過ぎ穴場に行く事にした 15分程歩いて岩場の多い小さな砂浜のある場所に着いた。 「言ってた穴場はここだな」 「早く泳ぎましょ♪」 「解った.解った」 穴場とは言ったが、人は数組居るようだ。 少し離れた場所の木の下に、脱いだTシャツとタオルを置きライフジャケットを装着し、サンダルを脱ぎフィンを装着し、マスクとシュノ-ケルとマスクを持ち海に向かって歩く。 フィンを付けたお陰で歩き難い。 ミキの姿を見ると、ペタペタとペンギン見たいで笑えた。 「海の中では、離れるなよ」 「はい♪」 「魚に夢中になって、沖の方には行かない」 「はい♪」 「岩とかゴツゴツしてるから気を付けろ」 「はい♪」 歩きながら何点か注意事項を話すと素直に聞くが ‘早く海に入りたい’ と顔に書いてある。 海にゆっくり入ると、始めは温いかと思ったら腰位まで浸かるとやはり冷たい。 ゆっくりと泳ぎ出し、海の中の世界を探検だ。 海の中であっちの方に行こうと合図し、並んで泳ぎ小さな魚達の大群に出会い、黄色と黒の模様がある魚や砂地には見た事も無い奇妙な魚(?)と視界がクリアだから良く見える。 サワサワと揺れる海藻.岩場には貝やヒトデと発見しては、お互い知らせ合ってちょっと触ってみたりと楽しんだ。 海の中では手を繋いで泳いだり顔を近づけ魚を見たりと、イチャイチャも忘れなかった。 たまに、他のシュノ-ケリングしてるカップルや子供連れの家族とも遭遇したが、皆んな海の中の生き物に夢中だ。 休憩を挟み海に入ったり砂浜で体を温めたりと、時間を忘れ楽しんでいた。 「腹空かないか?たぶん1時近いと思うが」 「えっ、もうそんな時間?何で解るんですか?」 「太陽の高さでな」 「あ~なる程~。言われれば空いてきたかも」 「じゃあ、昨日見た定食屋でも行くか?」 「はい。ホテルに1度帰ります?」 「いや、面倒だ。飯食べてからもシュノ-ケリングするだろ?だったら、ザッとタオルで拭いてTシャツ着て行こうぜ。歩いてるうちに乾いてくるだろうし」 「賛成~♪」 置きっぱなしだったタオルで軽く拭きTシャツを着て道具は持ち定食屋に向かった。 定食屋で散々悩み、夜も海鮮三昧だろうから俺はカツ丼でミキは海鮮ラ-麺を頼んだ。 そこでも「美味しい.美味しい」と言い食べるミキと、カツ丼と交換して食べたりした。 また、海に戻り日差しを避け木陰で2人で横になる。 「腹がいっぱいになると眠くなるな」 「木陰だと風もあって涼しいですね。熟睡はしないで下さいね。また、海入りたいから」 「解った.解った」 そう言いながら、俺にピタッと体を寄せてきた。 俺もミキに腕枕し目を閉じた。 あ~風が気持ち良い~。 海の音、隣にはミキ、幸せな時間だ。 俺が幸せを浸っているとス-ス-…寝息が聞こえた。 だいぶ、はしゃいでたからな。 海の中に居ると解らないが、陸に上がると疲れがドッと出る。 腹がいっぱいの今は尚更だろう。 これで俺は寝られないな。 俺まで寝たら、この気持ち良さに熟睡する可能性がある。 10分だけ寝かして起こすか。 「ミキ…お~いミキ。起きろ」 「…ん…あれ~俺寝てました?」 「ああ、寝言言ってたぞ」 「え~、何て?」 「‘伊織さん、大好き。抱いて’って」 くっくっくっくっ…… 「嘘ばっかり~……でも、大好きは本当です」 可愛いミキの言い草に堪らず、周りを見て軽く口づけた。 「い、伊織さん」 「お楽しみは夜にな。ほら、海行かないのか?」 「行きます」 体を起こしTシャツを脱ぎ準備し、海に足早に向かった。 「伊織さ~ん。早く.早く~」 元気いっぱいのミキだ。 少しは、夜の体力を残しておいて欲しいもんだと苦笑いし、海で待ってるミキの元に俺も向かった。 シュノ-ケリング出来るのも、今日だけだと思ってるミキは海の中で色鮮やかな魚を追って見たり大きな魚に驚いたりと忙しい。 休憩の時には、砂で遊んだり蟹を探したりと、太陽が沈むまで夏の海を楽しんでいた。 「そろそろホテル帰るか?帰って熱いシャワー浴びよう」 陽も陰り出してきた、海の中で体は冷えてきてるだろう。 もう少し遊びたそうな顔をしつつも、俺が心配してるのも解って、ミキも海から上がった。 まだ、海水浴を楽しんでる人達を見ながら、ゆっくりと砂浜を歩きホテルに向かった。 ホテル近くに来るとガサッと音がし、あの黒猫が草むらから顔を出し、ミキを見て近寄ってきた。 「あっ、クロちゃん。海に行く時には顔を出さなかったから、どうしたかと思ってた~」 またまた、ミキの足元に頭を撫で付けニャ~ゴ.ニャ~ゴ…と甘えていた。 ミキも屈んで「良い子.良い子」「可愛い~ね」頭を撫でている。 黒猫も気持ち良さそうに目を瞑り、ミキにされるままになっていた。 その内ミキはシュノ-ケリングして来た事や海の中で綺麗な魚を見た事を黒猫に話し掛けてる。 猫には、解ねぇ~だろうに。 ミキの微笑ましい行動に、俺も自然と微笑む。 暫くその光景を見ていたが、いつまでも離れないミキと甘える猫に少し嫉妬し「そろそろ部屋に行こう。本当に冷えるぞ」適当な事を言いホテルに歩き始めた。 「はい。じゃあ~ね」 猫に手を振り、俺の元に駆けて来た。 ホテルのダイビングショップで返却し、着替えて部屋に戻った。 2人でシャワ-を浴びると抑えが効かないと思い、先にミキから浴びるように促し、交代で俺も軽く浴び、乾かしてないミキの髪を備え付けのドライヤーで乾かす 夕飯までの時間を部屋で寛ぎ話していたが、その内に疲れて2人共寝てしまった。

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