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第519話
フォ一…プォ-…。
俺達は初島から熱海に向かうフェリーのデッキに居る
海カモメがあっちにもこっちにもフェリーを追う様に飛んでいた。
初島がどんどん小さくなっていく。
「楽しかったですね」
「天気にも恵まれたし、目的のシュノ-ケリングも出来たしな」
「うん♪ 料理も美味しかった~。最後にクロちゃんともお別れの挨拶出来たし」
少し寂しそうな顔をしたミキの頭をポンポンし
「東京からも近い。また、会いに来れば良いさ」
「うん」
結局、猫島って呼ばれる程に猫が島中にどこにでもいるが、あの黒猫以外はミキを遠回しに見てるだけだった。
「おいで.おいで」とミキが呼ぶと近寄るが頭を撫でさせる事はしない。
隣に居る俺の足元にまとわりつく。
本人は動物好きなのに可哀想なくらいだ。
そんな些細な事もあったが、相対的には楽しかった。
これから熱海だ。
遊び過ぎた初島だったが、熱海ではゆっくりと過ごそう。
今日も晴天で青い空と海だ。
熱海の宿に到着し離れの部屋に案内され、やっと一息ついた。
「伊織さん。また、高そうな宿ですね?」
「ミキが思ってるよりそうでも無いから安心しろ。温泉宿は離れと部屋風呂(露天)は絶対に譲れない!」
男2人での旅館に泊まるんだ。
男友達で泊まりに来る人達も居るし俺は気にしないがミキが気にするだろうと離れがある宿にしている。
それにセックスの時のミキの喘ぎ声やベットの軋む音など気にしなくって良いのも離れを選ぶ理由の1つだ、いや重要か?
ま、そんな安いホテルを選ぶ訳は無いが、念には念を…だ。
「初島では遊び過ぎたからな。ここでは、ゆっくり温泉に浸かってゆっくり過ごそう」
「はい♪」
部屋の間取りをグルっと見回し、寝室との2間にトイレ.内風呂と露天風呂だ。
2人なら充分だ。
お茶を飲み話していると立ち上がり、外へ続くガラスドアを開け庭と露天風呂を見ている。
「伊織さん、お庭も綺麗ですよ。あっ、露天風呂は温泉掛け流し~♪」
「まだ、夕飯には早いから露天風呂にでも入るか?」
初島のホテルを12時チェックアウトして、フェリーまでの時間を港の食堂で食べ、少し近場を歩き猫達と戯れ熱海に着いたと同時に駐車していた車に乗って、どこにも寄らず3時のチェックインに合わせて熱海の旅館に来たから、まだ充分時間はある。
「そうですね。特にやる事も無いですし、初島はシャワーだけだったから。温泉入りたい♪」
「よし、決まったな」
「はい♪」
服を脱ぎ捨て、浴衣を羽織り露天風呂に向かう。
4人程入れる余り大きく無いが2人なら充分だ。
温泉は掛け流しだが、人工的に造られた露天風呂に入る。
足を伸ばし胸の辺りまで浸かる。
少し熱めだが、気持ち良い~湯だった。
「あ~いい湯だぁ~」
気持ち良い湯に思わず無意識に声が出た。
ん、ミキ遅いなぁ~と思っていた所で、ガラガラ……ガラスドアが開き浴衣を着たミキが現れた。
「遅かったな?」
「伊織さんったら、脱ぎっぱなしで行くんだもん」
そう言いながらスルスル~…と浴衣とパンツを脱ぎ籠に入れ露天風呂に足を入れた。
白い肌に昨日付けたキスマ-クが数え切れない程あった
そのキスマ-ク跡に執着心と独占欲が見える。
そんな自分に苦笑し、ミキの綺麗な体に微かに反応する俺のモノを抑えるのも忘れない。
「片付けてくれたのか?悪いな」
俺の隣に腰を下ろし、足を伸ばして2人並んで湯に浸かった。
「気持ち良い~♪ お湯が透明でサラサラしてますね」
「少し熱めだが、気持ち良い~♪」
「初島ではシャワーだけだったから。それに殆ど海に行ってたし~」
「ああ、たくさん遊んだからな。温泉が体に染み渡る」
クスクスクス…
「ちょっと親父臭いけど…気持ち解ります」
「ミキも親父の仲間入りか~」
くっくっくっくっ……
「違います.違います~」
焦ってる顔が可愛いらしい。
頭を露天風呂の縁に乗せ、空を見上げ湯に浸かる。
「露天風呂って開放感があって良いですね。風も気持ち良い~♪」
「ああ、海風も良かったが、露天風呂でのそよ風は最高だな」
「昨日、ずっと海の中にいたのがなんか夢の様です。やっぱり石垣島で見る魚とは全然違う。石垣島の方が気候も良いから魚も色鮮やかでしたね。初島は初島で東京から近いし良かったです。何より晴天に恵まれました」
「ああ、魚の事は海に入って直ぐに俺も思った」
「楽しかったなぁ~♪ 東京に近いのに星も凄~く綺麗だったし、月灯りの海も幻想的でロマンチックでした」
「本当にな。月灯りの下のミキも綺麗だった」
ニヤニヤして話すと、ミキは頬を染め恥ずかしいのか?誤魔化す様にパシャパシャ…湯を手で遊んでる。
「俺も海でヤルのは初めてだったな」
恥ずかしがるミキが可愛くって、ついついそう言う話をしてしまう。
「まさか海で青姦するとは思わなかった」
パシャッと遊んでる手が止まり
「青姦って?」
何の事か解らないと言う顔をして聞く。
純粋なミキには解らないか?
調子に乗って、余計な事を話してるのに気付かずにいた。
「ヤッタ事無いのか?青姦って、青空の下でヤルって事、つまり外でヤルって事だ。学生の時に、学校の屋上とか公園でヤッタりしたなぁ~。誰かに見られるかもって、スリルもあって興奮するんだよなぁ~。俺も若かったから性欲旺盛な多感な時期だったからな~」
隣のミキが嫌な顔をしていたのにも気づかず、つい昔の事を思い出し語っていた。
ザバァッ。
露天風呂から勢い良く出て、そそくさとバスタオルで体を簡単に拭いて、パンツを履き帯もせず浴衣を羽織り、足早に部屋に向かい歩きガラスドアをピシャッと閉めた。
「おい、ミキ」
呼んでも返事もせずに、部屋に入っていった。
1人残された俺はヤバいと余計な事言ったと焦り、ミキの後を追う事にした。
口は災いの元だ。
調子に乗り過ぎた。
今更、反省しても口に出して言ったものは取り戻せない。
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