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第529話

「うわぁ~、どんどん高くなってくぅ~♪」 「結構、レトロなゴンドラだなぁ。大丈夫か?」 俺の心配を他所に、窓際で景色を眺めてはしゃいでいる。 「ねぇ.ねぇ。ほら海も見えるぅ♪ 眺めが良い~♪」 「だな。天気が良いから眺めが良いな。海の青さも山の緑も綺麗に見える」 「うん.うん♪」 3分程のロ-プウェイを楽しむ。 「ほら、そろそろ到着だ。振動あるかもな、掴まってろ」 「は~い♪」 俺の腕に掴まり衝撃に備えてる。 ゴンドラ内に到着のアナウンスが流れロ-プウェイを降りた。 「うわぁ~涼しい♪ あっ、あっちに何かある。行こう♪」 俺の腕を掴み引っ張っていくと展望台があり、そこから見る景色は、目の前に輝く青い海と大空が広がっていた。 テラス席と木目調でゆっくりと眺める事が出来るカウンター席もあり、四方をパノラマで楽しめる作りになっていた。 「伊織さ~ん。すっごい良い眺め~♪ あっ、下にもデッキがある~。行って見よう♪」 「走るなって、危ない!」 「は~い♪」 二重構造の下のデッキはフェンスの向こうが、絶壁のスリル満点の展望台だった。 眼下には熱海市街、海の方に目をやると相模湾の向こうには、三浦三崎や房総半島が薄っすら見え景色は良い。 何だかフェンスも心無し頼りない気がする。 ゲッ、なんつー展望台だよぉ~。 ゆっくり見てらんねぇ~。 ミキは平気で歩き景色を眺めていた。 綺麗な横顔を写メで、カシャッ.カシャッと盗み撮りした。 こういう高い所とか遊園地とかの絶叫系とかは、平気なんだよなぁ~。 「ミキ、上のデッキで何か飲み物でも買って飲まないか?」 「はい♪」 売店&カフェでコ-ヒ-を2つ頼み、店の中で面白そうな物が見えた。 「ん、絵馬?」 絵馬が売られる場所に説明が書かれていた。 ‘愛鍵(あいじょう)絵馬’ と言うらしい。 俺が読んでいるとミキも近寄って来た。 「へぇ~、ロマンチック。この絵馬に錠前と鍵が2つあるんだ。ふ~ん、絵馬に願い事を書いて、モニュメントの柵に絵馬と共にジョイント?あっ鍵を掛けるって事か~」 「らしい。その2つ付いてる鍵は持ち帰って記念にするらしい。最近、こういう手合いって多いよな?」 カップルスポットにする為に良くあるよな~。 若い奴らにはもってこいの場所なんだろうけど、俺達には関係無いかと思っていたが。 隣で目をキラキラ輝かせ、説明書と写真を食い入るように見ていた。 もしかして、やりたいのか? 「絵馬、買ってやるか?」 一応、聞いて見るとそのキラキラした目で ‘いいの?’ と言う顔をするが嬉しそうに笑う。 「うん♪ やる~♪」 そうか、やりたかったのか? ちょっと照れ臭いが見られたとしても、もう会う事も無い人達だ。 それより、こんなミキの嬉しそうな顔を見れる方が大切だ。 コ-ヒ-2つと絵馬を買って、テラス席で飲みながら願い事を書く事にした。 「伊織さん、あそこに鍵のモニュメントが有りますよ何で、さっき気が付か無かったのかなぁ~」 「景色に夢中だったからな」 「そうかも。可愛い~モニュメント♪ 後ろの柵にたくさんの絵馬がある~。皆んな願い事してるんだね♪」 「何って書く?」 「俺は決めてます」 「何?」 「内緒です♪」 内緒って……1つの絵馬に2人で書くんだ。 今、隠しても直ぐに解るんだが…。 楽しみを残す意味で、俺は絵馬に書いた所をスマホで隠してミキに渡した。 「俺は書いたぞ。半分空けてあるから、そこに書けよ。俺のは見るなよ、後の楽しみだ」 「うん♪ その方が楽しそう♪」 俺は景色を眺め、ミキが書くのは見ない事にした。 「はい、書きました♪」 「ひっくり返して置いて、コ-ヒ-飲んだら柵に付けに行こう」 「はい♪」 こんな恋人同士がする様な事が、自然と出来るようになった。 さて、何と書いたのか?楽しみだ♪。 モニュメントは鍵の形をしていた。 「ここって ‘あいじょう岬’ って言われてるんだな。愛鍵と愛情を掛けてんのか?」 「そうかも~。この鍵のモニュメントの所で、写メ撮りません?」 「おっ、良いな。記念になる」 頬がくっ付く程に顔を近づけ自撮りした。 1.2.3枚と撮り、ミキだけで撮ったりした。 「絵馬、付けよう」 「はい」 柵の所には、たくさんの絵馬が鍵で付けられていた。 読んじゃいけないんだろうが……やはり皆んな同じ様な事を書いていた。 まあ、俺も変わんねえ~か。 「はい、見ますよぉ~。じゃ~ん♪」 ミキの手に有る絵馬を見て2人で笑った。 クスクスクス…… くっくっくっ…… 「じゃあ、付けるか」 「はい♪ 落ちない様に、しっかり付けて下さいね」 「ああ、雁字搦めにしてやる」 クスクスクス…… 「良し、出来た。これで良い」 カチッカチッ。 鍵を掛け、飾った絵馬を記念に写メした。 「どうする?鍵は、お互い記念で持ってるか?」 「ちょっと渡して下さい」 1つ鍵を渡すとジッと見て、首からぶら下げていた赤色のシ-グラスのネックレスを取りチェ-ンに通し、また首に戻した。 赤色のシ-グラス.俺のイニシャルのI.鍵の3つがミキの首元にぶら下がっていた。 「ね、こうすれば無くさないし、今日の事忘れないでしょ?」 「成る程な」 「伊織さんのも貸して」 俺のネックレスにも同じ様にし、首元に戻ってきた。 青色のシ-グラス.ミキのイニシャルのY.そして鍵がぶら下がっているチャ-ムを触りながら 「また、1つ思い出深いネックレスになった。ありがと」 「伊織さんが着けるとカッコいい~♪」 「そうか、ミキも同じネックレス着けてるだろ?ミキも良く似合ってる」 ふふふ…嬉しそうに笑う。 「同じ?お揃いですね♪」 「だな♪」 顔を見合わせ微笑む。 また、思い出深い場所が1つ出来た。 このネックレスの鍵を見る度に、今日の事を思い出すだろうな。 「そろそろ行くか?確か、熱海城が上にある筈だよな?」 「近いから、歩いて行ける筈です」 「じゃあ、行こう」 熱海城を目指し歩き始めた。 柵の目立つ所に飾った願い事の絵馬が揺れていた。 I🔒ーーーーーーーーーーーーーーー🔒 I ミキは俺の者だ! ずっと一緒だ! I I 伊織 I I 2人でこれかもずっと一緒に居ます。 I I 離れません! 美樹 I I 大好き💕 I ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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