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第530話
上に歩いて行くと、観光施設が見え入口まで行ってみる。
「秘宝館?」
「へぇ~。まだ、こんな観光施設あったんだ。俺、聞いた事はあるが初めて見た」
「秘宝って?昔の宝とか……例えば、黄金の置物とか~.秘宝の刀とか?国宝まではいかないけど、それに近い宝を展示してるのかな?」
「違うな」
「伊織さん、何の秘宝か知ってるんですか?……この入口の所に鎮座してる人魚姫…なぜ、胸出してるのかな?これもア-ト?……解った! 美術品とかア-ト品を展示してるんだぁ~。ちょっと卑猥な感じしますけど…美術品の中で、ミケランジェロの彫刻とかも大事な部分も表現されてますよね。ア-トなんでしょうけど…ちょっと直視は出来ないって言うか…」
卑猥な人魚姫の展示品を前に、そんな真面(まとも)な発想をするかなぁ~。
「まあ~、ある意味ア-ト何だろうな」
本当の事を知ったらどんな反応するか?楽しみだ~。
ニヤニヤが止まらない。
「知ってるなら、勿体ぶらないで教えて下さい」
「この観光施設は、江戸~昭和のエロス.卑猥な品が展示してあるんだ。俺も噂ではそんな施設があるって聞いた事があるが、今の時代に残ってるなんてな~。実際に見たのは初めてだ」
「ええ~! どうして?そんな卑猥な施設が……」
「解らん。昔からの温泉地とかにあるって事は知ってたが、今は殆ど残って無いらしい。俺が思うに…昔は、新婚旅行に熱海とか温泉地に行ってたらしいから新婚さんの為に…興奮させてムラムラして、夜の子作りに励ませる為なんじゃねぇ~。子供はまさに宝って事?後は、会社の社員旅行が温泉地が多かった時代に娯楽施設が無いから、男性社員の為に作られた施設かもな。ストリップ小屋とかもそうなんだろうし。今じゃ、どっちも余り見ないけどな」
俺の持論を述べると、ミキも納得って顔をしていた。
「成る程ね~。今と違って娯楽施設が無かった時の名残りなんですね。それもある意味貴重ですね」
「興味あるのか?滅多に、お目に掛かれないぞって言うか、こんな機会もなきゃ2度と見れないぞ。中に入るか?」
俺は何となく中の様子が解るが、ミキには刺激が強いかも知れないが……それこそ2度と見れないかも…と思うと、見て見たいが……見終わった後に興奮してミキをトイレに連れ込む可能性大だ。
ここは、ミキに任せよう。
「う~ん…見たい気もするけど…見たくないような」
「思ってるより、大した事ねぇ~んじゃ無ぇ~」
少しだけ誘導してみた。
「伊織さんの、その言い方って……」
しくじったか?
スマホを取り出し検索し始めた。
おい.おい、そこまでするか?
スクロ-ルしてミキの目が見開き、ほんの少し頬が赤く染まりスマホを仕舞った。
「伊織さん! 全然、大した事無いって嘘じゃないですか?中の写真が掲載されてましたけど…モザイク画が多かったですよ! それって、見せられ無い程に卑猥って事ですよね?」
ヤバッ。
ここは毅然とした態度でいこう。
「そうなのか?俺は中に入った事も無いし、ミキみたいに検索した事も無いからなぁ~。話しを聞いた事があるってだけで、本当の所は解らん」
強気に出て話すと、疑ったのが申し訳無いって顔をした。
「ごめんなさい。そうですよね?伊織さん、初めっから話を聞いた事があるだけって言ってたのに…ごめんね?」
済まなそうに手を合わせ、上目遣いで謝る姿が可愛い過ぎだ~。
この天然小悪魔が~……何でも許せる!
頭をポンポンし「気にするな」と言ってやるとふんわりと笑う。
あ~、好きだなぁ~。
「で、どうする?解った上で見てみるか?」
「ん~止めときます」
残念に思いながらも無理強いはしない。
「そっか」
「うん♪ 熱海城にいこう♪」
「そうするか」
秘宝館を後にし、熱海城に歩き出した。
チラっと秘宝館を盗み見て後ろ髪が惹かれるが……諦めた。
歩いても結構近くに熱海城があった。
城内は地下1階から6階まであり、階毎に内容が違う。
「地下1階は子供とか家族用か、輪投げや卓球とかある。1階は~日本刀.鎧とかか~。おっ、ジェット足湯があるぞ、行ってみるか?」
「うん♪ 2階は日本城郭資料館だって、3.4.5階は江戸の浮世絵や騙し絵.遊び絵だって~面白そう♪ 6階は展望台だ~。さっきより、また高い所から見渡せるんですね」
「展望台だけかと思ったら見学する所あるな。さて、どれから行く?」
「う~ん…足湯を最後にしたいから、上から順番に下りて来ましょう」
「そうするか」
取り敢えず6階の展望台からにした。
6階の天守閣展望台から熱海市街地.湯河原.初島.大島と青い海が一望出来た。
「うわぁ~、さっきよりもっと遠くも見える~♪」
「箱根連山も微かに見えるな」
「凄~い♪」
「だな」
景色を眺めて、俺はさっきも見たし~と早々に飽きたが、ミキは暫く堪能していた。
俺には無い、こう言う純粋な素直さが俺は好きな所だと、ミキの横顔を見て思っていた。
「ん~気持ち良い~♪ そろそろ下行きます?」
「そうだな」
5.4.3階と騙し絵に驚き.浮世絵に感動し.遊び絵に笑いと、昔の人達の遊び心は凄いと思った。
2人で、あ~でも無いこ~でも無いと、見たり謎解きをし言い合い楽しい。
2階は写真展だった、日本中の城が写真展示されていたが、余り俺は興味無く流し見た。
ミキもそんな感じだった。
1階の刀や鎧が数点ある展示品を軽く見て、目当てのジェット足湯に向かった。
1階のバルコニーから、景色を眺めてジェット足湯を楽しむ。
潮風が吹き心地良い風と、足元はポカポカでずっと入ってられる。
「気持ち良い~♪」
「だな」
「眺めも良いし。今日は散々景色を眺めました。暫く、この景色も見れないんですね」
「熱海は近いし、また来れば良いさ」
「また、来ましょ~ねぇ♪」
「ん、次は美術館だったか?」
「はい。日本絵巻物.屏風が展示されて絵皿なんかもあるみたい」
「俺達の仕事にも役立ちそうだな」
「はい、勉強にもなります」
「余り仕事モ-ドには、なってくれるなよ?」
「大丈夫です。でも、日本絵巻物とか本格的なの見るの初めてで嬉しい~♪」
「東京にもあっちこっち美術館あるから、今度見に行くか?」
「うん♪」
静かな美術館を2人で、こそこそ感想言い合うのも楽しそうだ。
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