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第531話

「凄い綺麗な美術館ですね?」 「ああ」 白を基調とし、大きなガラス窓で光がたくさん入り、外の景色も見れる造りだった。 「有名な建築家が設計し、リニューアルオープンしたらしい。コンプセントは日本伝統素材を生かした現代的な建築なんだと。扉とか、あっちこっちにアクセントとして漆(うるし)を用いてるようだ」 パンフレットからの情報を話す。 「へえ~、素敵ですね。清潔感あるし落ち着きますね」 「カフェやレストラン.ショップもあるが時間がないな。おっ、能楽堂と黄金茶屋がある。行ってみよう」 「はい♪」 能楽堂は定期的に演能会を開催してると言うだけあって、日本伝統の造りで幻想的味わい深い雰囲気だ。 外国人が来たら喜ぶだろうな。 日本文化を生かした舞台の美しい建築.それを囲うように観客席がある。 「綺麗な舞台ですね。スポットライト当たって幻想的です」 「そうだな。ちょっと能楽とか堅苦しいが、この舞台は建築物としても見る価値あるな」 静寂な中に、厳かな雰囲気が良い。 「次は黄金茶屋見るか?秀吉の茶屋をリアルに復元したものらしい」 「秀吉の?うわぁ~凄そう」 能楽堂を出て、正面に黄金茶屋の復元があった。 「凄いですね。茶室だけじゃなく、茶道具も全て復元してるんですね」 「これが桃山時代に造られていたんだからな」 「その時代は当たり前ですけど、全部'金’ですよね。金を溶かして茶屋を作るなんて、当時の技術は凄いです」 「そうだな。秀吉は農民の出だから、見栄で此れ見よがしに造ったんじゃねぇ~のか」 「農民から出世するなんて凄いですよ」 「そうだな。日本で1番出世した人かもな。次、行こう」 「はい」 展示展に向かった。 色絵藤花文茶壺.皿.仏像.書.江戸時代の巻絵.屏風と、なかなか見応えがあった。 仕事にも関わりがある展示なんかは、じっくりと見てしまうのは職業病か? 「これ、外国人に受けそう」 「好きそうだな」 ついつい仕事モ-ドで話してしまう事もあった。 美術館の中も、階段の窓には和紙が貼られて穏やかな光が差し込むように設計されてたり、屋久杉の古木を使っていたり、床材に瓦焼.石焼が敷き詰めて良い色合いで調和されていた。 展示品だけじゃなく、美術館の建物自体も芸術的だった。 それから庭に出で一休みした。 ここも緑と海の景色を巧く計算された設計だった。 「ここからの景色も最高です」 「そうだな。今日は景色を色んな所から眺めたな」 「そう言えば、そうですね」 「やっぱり、海が近いと良いな。解放的になる」 「都会にいると、尚更感じますね」 「年経ったら、海の近くに住むか?」 「良いですね~。朝、起きて海を2人で散歩して1日が始まる生活。う~、良いかも~。あっ、だったら犬も飼いたいなぁ~♪」 「犬か~」 「だめ?猫でも良いけど、散歩出来無いじゃないですか?」 「そう言う事じゃ無くて……動物に構って、俺との時間が減る。やっぱ却下!」 「ええ~、そんな~。動物にヤキモチ?動物も可愛い~けど……動物に妬く伊織さんが1番可愛い~ですよ♪」 「こんな大男のどこがだよ~。可愛い~のはミキだろ~が」 「……目は、大丈夫?」 「ミキに関しては2.0だ!」 「なにそれ~、俺限定?」 「そうだ!」 クスクスクス…… くっくっくっ…… お互い顔を見合わせて笑った。 未来の話を普通に話せる。 お互いの先の人生に、お互いが存在して話す。 自然な流れに、俺達の未来が見えたような気になった それから美術館を出て、夕飯に海鮮丼を食べ港まで行き海を眺めて熱海を出た。 帰りはミキも運転すると言うので、交代で運転した。 途中でSAに寄り、お土産を買うと言うので休憩がてら見て回り、俺のマンションに着いたのは23時頃だった 部屋に着いてホッとしたのか?ドッと疲れが出た。 あ~、楽しかったが疲れたなぁ~。 ミキも疲れただろうとミキの姿を見ると、荷物に手を掛け片付けようとしていた。 「明日で良い、今日はもう寝よう」  「えっ、でも……あっ、伊織さん」 寝室に連れて行き横になると直ぐに眠気に襲われた。 楽しかった初島.熱海の旅行は、こうやって終わった。 まだ、数日ある夏休みに、俺はもう1つサプライズを用意していた。 今から、楽しみにしていた。 ミキは喜んでくれるだろうか? ある意味では喜んでくれるとは思うが……ミキなら俺の希望は叶えてくれる筈だ。 いや、必ずそうするように仕向ける! 今日も俺の隣で、スヤスヤと綺麗な寝顔で寝てるミキを抱きしめて眠りに就いた。

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