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第532話

「ん…んん」 目を瞑ったまま、いつもなら俺を抱きしめている人の気配が感じられず、手だけで隣のシ-ツを軽く叩き確認するけど……。 まだ、覚醒しない頭で、隣に居る筈の人が居ない? 「ん…伊織さん?」 眠い目を擦りベットを出て寝室を出ると、リビングのソファ-に座って新聞を読んでる姿が見え、安心して頬が緩んだ。 「居た~」 眠いのか?目を擦り、そう言って俺の顔を見てふわりと笑うミキの姿に、俺も思わず頬が緩む。 トコトコ…歩き、座ってる俺の膝を跨ぎ首に手を回し俺の肩や首筋に顔を埋めてきた。 寝ぼけてんのか?可愛い~♪ おいおい、朝から可愛い~事するなよ。 「おはよ。起きたか?」 「ん…まだ眠い~」 「なら、まだ寝てれば良かっただろ?」 「んっ…隣に居なかった…から。ん…ボディシャンプ-の匂い?」 クンクン…首筋の匂いを嗅ぐからこそばゆい。 「ああ、少し旅行で食べ過ぎたからな、マンションのジムに行って軽く走って来た。汗掻いたからな。で、シャワー浴びたんだ」 「そうだったんだ~。安心したら…ねむっ…ふぁ~…もう少しだけ寝ていい?」 「ああ」 頭と背中を撫でてやると「気持ち良い~、ねむっ」と、そのままの体勢で俺に体を預けてス-ス-…寝息を立てた。 「寝たか。可愛い~奴だ」 デレデレが止まらない。 俺が隣に寝てないと解ると探して、俺を見つけた時にホッとしてふわりと微笑む顔が愛しい。 隣に居るのが当然だと、ミキの中で認識してるんだろう。 それで、この体勢だ。 可愛い過ぎだろ。 でも、ミキが起きるまでどうするかな? 新聞も見れないし……考えて、テレビを点けた。 そう言えば、旅行中は全然テレビを見る暇も無かったな。 テレビを見てると「ん…ん」眠そうな目を擦り起きたのは、あれから30分程経ってからだった。 「あれ~、伊織さん?」 「おはよ。今度こそ起きたか?」 「おはよ。……あれ、何で?」 俺に跨ってる自分はどうしてこうなってるのか?今の状況が解ってないようだ。 「隣に俺が居ないと解って、寝室から出て来て俺を見つけて甘えてきた」 「う、嘘~。ごめんなさい。重かったでしょ?直ぐに退きますね」 「いや、ミキの1人や2人何とも無い。それより昨日、風呂入ってなかっただろ?シャワー浴びてくるか?その間に、簡単に朝食作っておく」 「わぁ~い♪ 良いんですか?じゃあ、洗濯機回して、その間にシャワー浴びて来ますね」 立ち上がり、旅行鞄から洗濯物を取り出し浴室に向かった。 良い奥さんだ。 「さてと、俺は卵でも焼くか」 キッチンに向かい簡単な朝食を作り始めた。 シャワーを浴びたミキがまた濡れたままの髪でリビングに来た。 「そこに座って待ってろ」 ドライヤーを取りに行き、ミキの髪を乾かしていく。 「夏だから、大丈夫ですよ~」 「だめだ。それに、俺の楽しみでもあるんだ」 クスクスクス…… 「じゃあ、お願いします」 「解った」 もう何度も乾かしてるから手際も良くなり、アッと言う間にふわふわの髪になっていく。 「乾いたぞ。朝食出来てる」 頭の天辺にチュッとキスをして離れた。 俺の作った簡単な朝食を美味しそうに食べてる。 「今日は、ゆっくりするか?」 「はい、旅行の荷物の片付けをしてゆっくりします。あっ、冷蔵庫何にも無いかも~」 「卵が数個あった。午後からス-パ-に散歩がてら買い物行くか?久しぶりに、ミキの手料理食べたい」 「良いですよ♪」 それから、ミキはゆっくりすると言いながらも、旅行の荷物を片付け、洗濯.掃除と休む暇も無く動く。 一応、俺も風呂掃除はしたが、後はやる事も無くソファで新聞やテレビを見て過ごす。 良く動く奥さんだ。 やっと、俺の側に来たのは2時間後だった。 コ-ヒ-を2人分入れて、テ-ブルに置き隣に座った。 「はい、伊織さん」 「おっ、ありがと。お疲れ様、もうゆっくりしろ」 「はい、終わりました」 「疲れただろ?」 「大した事無いですよ」 「ありがと~な。俺は良い奥さん貰った」 「俺は頼り甲斐のある旦那様を貰いました」 クスクスクス…… あ~、やっぱり癒される。 それから、夕方に散歩がてらス-パ-に行き、手際良く食材を籠に入れ会計を済ませた。 流石だなっと感心し、帰りは公園を通って部屋に戻り、ミキはエプロンを着け夕飯の支度を始めた。 トントントン…トントン… 包丁のリズミカルな音を聞き、穏やかな日常に幸せだなぁ~と感じた。 暫くすると「出来ましたよぉ~」と呼ばれ、ダイニングテ-ブルにはサイコロステ-キ.マカロニサラダ.冷奴.ご飯が並んでいた。 「おっ、旨そう。ずっと、海鮮ばっかだったからな。肉旨そう♪」 「お肉食べたいかなって思って。ま、お肉は塩胡椒で焼いただけですけど」 「充分だ。いただきます」 「はい、いただきま~す」 早速、肉から手をつけた。 「うまっ、塩加減が絶妙! 肉柔らけぇ~♪」 「良かった~。うん、美味しい~♪」 「旅先の料理も旨いが、やっぱミキの料理が1番だな」 「ありがとうございます」 クスクスクス…… 可愛く笑うなぁ~。 夕飯は美味しく食べ、片付けを終えたミキとリビングで旅行の時の写メを見て、あ~でも無いこ~でもないと2人で楽しく語り、和やかなひと時を過ごした。 こんな何でも無い日常も、2人で居るだけで幸せだ。

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