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第533話
前にテレビに放映され録画した懐かしい映画を見て過ごし、昼飯を野菜たっぷりラ-麺を食べ、そろそろ時間か?と、ミキに話を切り出した。
「そろそろ2時か~。ミキ、これから出掛けるからな」
「はっ?」
前触れもなく言われ、驚く顔が可愛い~。
「え~と、こんな中途半端な時間から?どこに?外食するんですか?」
「いや、木更津の花火大会行くぞ」
「本当に~?うわぁ~嬉しい♪ 伊織さん、ありがと♪」
「今から準備して行けば余裕だ。ちょっと待ってろ」
「はい♪」
俺は寝室に向かい、何も知らないミキは素直に返事して、嬉しいんだろう?ソファでニコニコ笑顔を見せ待って居る。
寝室のクロ-ゼットから荷物を取り出し、ミキの待ってるリビングに向かう。
「お待たせ。ほい、これ着て行こう」
「えっ?これ?」
ミキの手に渡したのは、女性用の浴衣一式だ。
手渡しされ困惑気味なミキに絶対に断れない様に話し始めた。
「前回の花火大会の時に人混みが凄かっただろ?迷子にもなったし。やはり手を繋いで歩いた方が良いと思ってな。それで、あの後ネットで取り寄せた。ミキに似合うものを探すの苦労した」
「あの~わざわざ買わなくても…。それに手ぐらいなら人混みで解んないし繋げると思うんですけど…」
どうしようか?迷ってるようだな。
あと一押しか?
「展示会とかで使用した浴衣が会社の倉庫にあるとは思ったが、安く譲って貰うにしても色々詮索されるのも面倒だと思ってネットで買った。ま、ミキが話す様に手を繋ぐのは、暗くなったら解んねぇ~しそうかも知れねぇ~けど……俺が周りを気にせずにイチャイチャしたかったんだ!」
「う~ん……でも…女装恥ずかしい~な」
もう少しか?
「ミキはイチャイチャしたく無いのか?俺はミキの浴衣姿も見たい! 俺のお願いは叶えてくれないのか?どうしても無理なら良い。諦める! 嫌がるミキに無理には女装させたく無いしな」
最初は意気込んで話し、最後の方は弱々しくわざと話した。
これでどうだ?
「……俺もイチャイチャしたい…です。暗いし解んないかな?」
良し.良し!
「暗いから解んねぇ~よ。それに花火上がったら皆んなそっちに夢中だし!」
落ちろ.落ちろ!
「……そだよね?俺が余り深く考え過ぎなのかも…昼間の明るい時じゃ無いし……解りました!」
良~し! キタ~!
ミキの頭をポンポンし漆黒の青味掛かった瞳を覗き込み話す。
「ありがと。俺の願いを叶えてくれて」
恥ずかしいのか俯いて
「俺も…イチャイチャしたい…から。着替えて来ます」
そう言って浴衣一式持って、ミキの荷物を置いている客間に消えた。
ふう~、少し手こずったが想い通りに事が運んでニヤッとする。
「さてと、俺も浴衣に着替えるか♪」
俺も寝室に向かいクロ-ゼットから、男物の浴衣を取り出した。
ミキも今頃は着替えてるんだろうな。
余り色っぽくなり過ぎても困るなぁ~。
沙織も居ないしな、浴衣に着替える位か?
髪は男にしては長めだし女にしてはショ-トカットにみたいに見えるし、まあ、大丈夫だろう。
サイドの髪を耳に掛かれば何とかなるだろう。
さて、どんな風になるか?楽しみだ♪
浴衣に着替え終わって、ワクワクしながらリビングのソファで待っていた。
男の着替えは時間掛からないが、女の着替えは時間が掛かるもんだと思いつつ、まだか.まだかと待っていた
30分程で客間のドアが開いた。
おっ、出て来たか?
さて.さて楽しみ~♪
「……お待たせしました」
俺の前に浴衣を着たミキが佇んでいる。
余りの美しさに声も出なかった。
ワクワクしてた気持ちがドキドキ…に変わった。
ヤベェ~、予想以上だ。
何も返事しない俺に不安を感じたのか?眉を下げ小さな声で聞いてきた。
「どこか変ですか?やっぱり……」
見惚れてた俺は慌てて口を開いた。
「すまん。良く似合ってる。絶対に似合うとは思ってたが予想以上で驚いていた。綺麗だ!」
「本当に?お世辞でも嬉しいです。ありがと」
本当に良く似合ってた。
俺が購入した浴衣はレトロモダンなデザインで生成に太さ異なる黒のストライプのシンプルな浴衣にした、生成色の部分にも薄く白で模様がある。
帯は黒だが、後ろ姿からは作り帯(リボン)は白と黒が交互に折り重なって凄くお洒落だ。
大人の雰囲気で、これならミキの白い肌も映えるだろうし、ミキも許容範囲かな?と思ったが……
すげえ~似合う!
「ちゃんと着れてるな」
「はい、今は帯も作り帯で形出来てますしワンタッチですから」
「そうか。ん…ミキ、化粧したのか?」
髪も前髪は斜めに下げ、サイドの片方の髪は耳の辺りで髪飾りを付け上げているし、薄化粧と赤い口紅を塗ってる。
「えっと…沙織さんに頂いたんです。使う時は無いと思ってたんですけど……素顔だと恥ずかしいから。少しだけ化粧して別人になろうかと……でも、ファンデ-ションと口紅だけです」
「綺麗だ。変に塗りたくるより良い! 髪型も似合ってる!」
「この髪飾りも、沙織さんに…」
「そうか、沙織も使ってくれて喜んでるだろう。すっげぇ~綺麗だ! イチャイチャするつもりだったけど……ヤベェ~、誰にも見せたく無い!」
「え~、花火大会行きたいです~」
「解ってる。ちょっと本音言ってみただけだ」
ヤベェ~、マジで誰にも見せたくねぇ~。
絶対に手は離さない!
こりゃ~花火どころじゃねぇ~な。
牽制しまくらねぇ~と。
美しく色香が漂うミキにドキドキ…が止まらねぇ~。
ふふふ……
「伊織さんも凄~く似合ってますよ。カッコいい~!」
「俺のは2~3年前に買ったものだ」
「藍染ですか?細かいストライプが目立たないけど入っていて、とてもお洒落で似合ってます」
「そうか、ありがとうな」
ミキの姿を前後左右どこから見ても美しく大人の色気が醸し出している。
「そうだ、出掛ける前に部屋で写メ撮らないか?記念に」
「……はい」
窓ガラスを背に顔を近づけ写メを撮り、スマホを置いて位置を合わせ2人の全体像も撮り、スマホを持ちミキだけを撮影する事にした。
また、俺のスマホにはミキの写真が増えていくな。
俺はこっそり2人で見るのとは別にミキ専用アルバムを作っていた。
「ちょっと斜め45度で、そこでストップ」
カシャッ。
「次は、後ろ姿な」
カシャッ。
「次は、そのまま振り向いて」
カシャッ。
「上から撮るから、カメラに上目遣いでお強請りする感じで」
カシャッ。
「今度は、半開きの口で」
カシャッ。
「少しだけ舌出すか?」
写メしようとするとプイっと後ろを向いた。
「どうした?」
「……だってぇ~、伊織さん……どんどん要求が…」
「あっ、悪い.悪い。つい夢中になった。色んなミキを引き出したくなった。すまん」
「……もう、カメラマンごっこは終わり~」
カメラマンごっこ?そんなつもりは無かったが……艶妖なミキを撮ろうと我を忘れてた。
名残惜しいが気を取り直し
「じゃあ、出掛けるか?」
「はい!」
玄関に用意した花柄の鼻緒の下駄に白い足を入れ、俺は雪駄だ。
「忘れ物は、無いか?」
浴衣籠巾着の中身を確認してるミキの顎を持ち、軽くチュッと口付けた。
「忘れもんだ。ほら行くぞ」
少しボ-ッとしてハッと我に返り、俺の浴衣の袖を引っ張りチュッとお返しの軽いキス。
俺の唇を指で拭き照れて
「行きますよ」
先に玄関ドアを出たミキを追うと、ちゃんと玄関横で待っていた。
ったく、出掛ける時に……参った!
よ~し、イチャイチャしまくってやる~。
今年、最後の花火大会に出掛けた。
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