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第543話

俺とマコの態度に諦め、仕方無いって顔でサワ-を一口飲んでから話し始めた。 「まず、余りそういう事する人は居ないって言っておくね。まあ、人の趣味までは解んないからね。それと…彼奴らの事だけど…ん~、美樹君も真琴君も彼奴らが男子校だったのは知ってるよね?」 俺とマコはうん.うんと首を縦に振った。 「半分以上は寮生で、自宅から通ってる子もいたけど……まあ、閉鎖的な所なんだよね。寮も月2回位は外泊届を出す感じだったし。男ばっかりで精力旺盛な年頃だからね。男子校の風習みたいな……成宮や桐生みたいに男が性の対象の人も居れば、何となく流されてって人も居るし、龍臣みたいに女の人が性の対象だった人も面倒で手近で済ませる様になる人も居るし、そういうのを嫌悪する人も居た。まあ、様々よ。学校側は同性不純行為があっても男だから妊娠する訳でも無いし、大きな揉め事が無ければ目を瞑って知らない振りよ!」 俺達に諭す様に話す口振りは、教師のようでもあった 俺とマコは神妙な心持ちで聞いていた。 優希さん、先生に戻ったみたいだ。 「ま、そう言う事で寮生は寮の中で…自宅から通う子達は屋上や空き教室とか体育館倉庫とか…死角を探して性欲解消してたみたい。寮は基本的に寮生以外は出入り禁止だからね。それでも、夜に忍みこんで酒盛りしてたりそう言う事してたり、揉め事にならなきゃ暗黙の了解的な。自宅の子達は家には家族が居るとか、まだ学生で男同士でホテル行くお金も勇気も無かっただろうから、必然的に公園とか学校になるのかねぇ?」 「あっ、伊織さん、自宅組みだって前に話してた」 「……祐さんもだよ」 それまで黙って聞いていた沙織さんがあちゃ~って顔をしていた。 「自宅組みは成宮や桐生だけじゃ無いし、それに……最後までは抵抗があるって言って、お互い抜きあったりとかも多かったようだよ」 最後の方は声を潜めて話す優希さんだけど、伊織さんも祐さんも初めから男の人が性の対象だし、最後までシテたんだと言うのは解る。 伊織さんも話してくれた。 優希さんが俺とマコに気を使って話してるのが解った 優しいなぁ~、良い先生だったんだろうな。 「私も生徒のそう言う場面を何度か見た事あるし。成宮や桐生のは知らないけど…まあ、3人の中では断トツに、龍臣が酷かったのは間違い無いよ」 マコはその話しを聞いてホッとした顔をしていた。 「優希さん、龍臣さんの現場とか見た事あるんですか?」 「ん~何度かね。龍臣は見られてるの知らないようだけど……用意周到でも、そこは若いからね」 「そうなんだ」 「……祐さんとかは?」 「真琴君。さっきも話したけど、成宮や桐生の事は私は解らないよ。生徒全員の性の事までは把握してないし。それなりにあったとは思うけどね。真琴君も美樹君も彼奴らの学生時代の事は昔だよ。今更、とやかく言ったって仕方無いじゃない?」 「……そうですね」 「……知らない方が良い事もある…かな。でも、……僕が知らない祐さんを知りたい気持ちもある」 マコの頭を撫で優希さんが話す。 「素直だね。ま、どうしても知りたいなら、桐生に聞いてごらん。自分の知らない所で、真琴君の耳に入るのも嫌だろうし。これだけは言っておくね、1番酷かったのは龍臣だから」 「……はい」 「……ごめん。俺が変な事言ったから」 「大丈夫だよ。気になるんだったら、本人に聞くべきだし。さて、これでこの話は終わりで良い?」 黙って優希さんの話を聞いていた沙織さんが「賛成! せっかく集まったんだから楽しい話しよう。私、今回ね、大ちゃんと両家に挨拶がてら遊びに行ったんだけどね。家のパパが前より大ちゃんの事を信頼してる感じが見てとれたんだ~。お付き合いは許して貰ってるけど、そろそろ結婚の話しもできるかも~。大ちゃんのお家の方はいつでも結婚して良いって言ってくれてるし…今年中にはパパのお許し貰うつもり。大ちゃんとそう話してるのよ」 「いよいよなんだ~」 「2人なら、大丈夫ですよ」 「専務、沙織さんの事を本当に可愛いがってるから寂しいのかも。矢島さんに取られちゃうみたいな?」 「本当~子離れ出来ないから困っちゃう」 「幾ら年取っても娘は娘だからね」 「……何気に優希さん酷いこと言って無い?」 「やだ~冗談.冗談!」 ふふふふ… 優希さんが珍しく冗談を話すけど……笑えない冗談に俺とマコは固まったけど、優希さんが朗らかに笑うから俺達も釣られて笑った。 クスクスクス… キャハハハ…… 「んもう、笑えない冗談に笑う事無いじゃないの~」 沙織さんの明るい話題に雰囲気が良くなった。 それからは楽しく食べ飲んで笑って過ごした。 俺の知らない所で俺が何気に言った一言で、伊織さんに迷惑掛ける事になるなんて思いもしなかった。

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