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第551話

「「「「乾杯」」」」 改めて乾杯し、飲み始めた。 腹は一杯だったが、ジェフ達共なかなか会えないと思うと、もう少しだけ話をしたかった。 それは俺だけじゃなく、ジェフとケニーも同じだったようだ。 その証拠に、忙しい中、夜の予定を空けてくれていた @「イオリの惚気話で、やっと安心した」 @「何が?」 ケニーがジェフの話に問い掛けると、ジェフはケニーの肩に腕を伸ばし手を回した。 @「イオリがケニーを好きなんじゃないかと、ずっと思っていたからな。ケニーも満更じゃなさそうだったし、現に、イオリがアメリカに来ると聞いて、大喜びしてたしな」 @「そ、それは違うよ! イオリは仕事相手でもあるけど、友達でもある。久し振りに会えるのは嬉しいに決まってるだろ?ジェフだって喜んでたじゃないか?」 @「まあ、そうだが……俺達が恋人になるキッカケもイオリのお陰だと思ってるが……」 @「ジェフ! あれは芝居だって話ただろ?ケニーを好きな振りして口説いてたのは。それに、俺は仕事関係には、手を出さない主義なんだ。ケニーが仕事相手って解った時点で論外だ!」 @「どうも、芝居には見えなかったが…。イオリの言う仕事関係には手を出さない主義が、なぜ部下のヨシキを恋人に?」 @「ミキは、その主義を曲げてまでも必ず手に入れたかった相手だ! 恋人にしなかったら後悔すると思って必死だった」 @「でも、イオリの話も解る。俺もケニーとは友人関係が長かったから……自分の気持ちも解ってなかったケニーに恋人が出来ても直ぐに別れるから、今まで気にも止めて無かったが、イオリが現れてケニーの様子が今までとは違うと焦った。初めてケニーを誰かに取られる.失うと危機感を持った、それで自分の気持ちが解ったんだ。イオリのお陰でもある」 @「ジェフ」 @「俺はケニーのジェフへの一途な思いに手を貸しただけだ。ずっと健気に、友人の立場に徹して離れなかったケニーに感謝した方が良い。ま、仲良くやってるなら安心だ」 @「ああ、お陰様でラブラブだ! ケニーがこんなに献身的だとは思っても見なかった」 そう言って、ケニーの頬にキスをした。 ケニーも嬉しそうな顔を見せ、2人は見つめ合う。 はあ?結局惚気かよ~、アホらしい~。 散々、レストランでミキの事を惚気ていた自分を棚に上げ呆れた顔をして見ていた。 俺の耳元に、それまで黙って聞いて居たミキが「良かったですね、誤解が解けて。2人共幸せそうです」と言ってきた。 そうだな、長い付き合いで恋人同士に慣れたんだ、何より2人が幸せなのが1番だ。 @「所で、俺がアメリカ支社に居た時には、ケニーはジェフの秘書を務めたはずだが?」 今日は副社長として紹介されたのが気になった。 @「ああ、イオリが日本に経って暫くして副社長に就任した。秘書だけで終わらせるのは勿体無いからな。ケニーは数字関係に強いし頭が切れる。何より人付き合いも上手い。そこを見込んで副社長にした。秘書の時は終日一緒に居られたが、今は別行動も多い。すれ違いを考え、責めてプライベートは一緒に過ごしたいと、今は一緒に住んでる」 @「へえ~、そこまで進展してたとはな。良かったな、ケニー」 @「僕は秘書のままでも良かったのに。でも、ジェフの仕事をもっとサポートして会社を大きくするのも良いかなって」 @「仕事もプライベートも充実してるな」 @「それはイオリもだろ?こんな美人な恋人をもって」 @「まあな」 自慢したい気持ちもあり、その上場所がアメリカって事とジェフに刺激されたのかも知れない。 日本では絶対に出来ないが、隣のミキを引き寄せこめかみにチュッと1つキスを落とした。 薄暗い店内でも、頬を染め照れてるだろうと俺には解る。 @「ちょっと失礼します」 「トイレか?」 「んもう、ちょっとトイレ行って顔を洗って来ます」 顔をパタパタ…手で仰ぐ。 くっくっくっ… 可愛い~な。 @「こら、日本語の内緒話は禁止って言っただろう」 @「悪い、ミキがお手洗いに行くって話してるだけだ」 @「すみません。ちょっとだけ席外します」 ジェフとケニーに許可を貰い立ち上がり歩き出し、途中でボーイに場所を聞いて向かった後ろ姿を見送った @「本人の前では言えなかったが、仕事の時とは別人か?と思う位に、容姿が違い過ぎる。紹介された時もピンッと来なかった。仕事の時は地味なんだなぁ、せっかくの美人が……勿体無い」 @「僕もそれは思った。絶対、今の方が印象に残るし仕事も上手く回るんじゃない?……それとさっきからジェフ、美人.美人って言い過ぎ~」 ギュッとジェフの手の甲を抓って、可愛い~焼きもちを妬くケニーが恋する人って感じだ。 @「本人はクォ-タ-と言う事で、目立ちたく無い様だ。それに容姿で仕事をする訳じゃ無いと地味にしてる。日本人独特の万人に埋もれる方が良いって事らしい。本来のミキはお洒落が好きな奴だからな。プライベートは凄くセンスも良くお洒落にしてる」 @「へえ~日本的だな。事なかれ主義って言うか、奥床しいって言うのか?」 @「当たってる様な的外れな様な……外国人には解らないだろうな」 @「日本人は繊細だ」 @「ねえ.ねえ。さっきからヨシキの事ミキって呼んでるよね。ニックネ-ム?」 @「漢字が美しい樹と書いて、ヨシキとも読むしミキとも読むんだ。それでミキの家族や親友や本当に親しい人にしかミキとは呼ばせて無い。家族の中でのニックネ-ムだな」 @「へえ~、漢字って本当に難しいね。ミキって可愛い~発音だね」 @「呼ばせないぞ!」 @「ちょっと言ってみただけ~じゃん」 @「イオリ、少し遅く無いか?」 確かに、10分は経ってる。 顔を洗うだけって言ってたが……トイレに入ってるのか?それにしても……。 急に不安が過ぎり迎えに行く為に立ち上がると、ジェフも立ち上がった。 @「格式のあるホテルだが、極稀に酔って変な者が紛れてるかも知れ無い。俺も一緒に行こう。ケニーはここで待ってろ」 @「もしかして戻って来るかも知れないから、ここで待ってる。気を付けて」 @「行こう、イオリ」 ジェフとトイレのある場所に向かった。 何も無ければ良いが……。 ミキを1人でトイレに行かせた事を後悔していた。

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