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第552話
ミキの元にジェフと向かうと、トイレの入口付近で白人男性に腕を掴まれてるミキの姿があった。
@「止めてください!」
@「何も取って食おうってんじゃない。少しだけ一緒に酒を飲まないか?って言ってるんだ。良いだろ、酒ぐらい」
@「連れが居ますから」
ミキの出口を塞ぐ様に立ちはだかり、腕を掴まれ身動き出来ない様だ。
カッとなり、白人男性の肩を掴んだ。
@「俺の連れに、何してんだ!」
@「イオリ、ボーイ呼んで来る」
ジェフは店の人を呼びに行った。
@「連れ?へえ~。別に、何もしてない! 少しだけ飲もうと誘っただけだ! そのくらいは良いだろう?」
言ってる事ははっきりしてるが、目が虚ろでネクタイをだらし無く緩め、かなり酔ってる様だ。
@「はあ?誰がてめぇ~なんかと、飲まなきゃ何ねぇ~んだ」
掴んだ肩を乱暴に押し、ミキと白人男性の間に入り、ミキの腕を掴んでいた手を乱暴に払う。
@「何済んだ~、このヤロ~」
俺に掴み掛かろうとした所に、ジェフが支配人とボーイ2人を連れて来た。
@「イオリ、止めろ!」
直ぐに、俺と白人男性は引き剥がされ、酔っていた白人男性はボーイ2人に腕を取られ、その場から立ち去った。
支配人は丁寧に詫びを入れてくれ、一応、俺も事を大きくするのは止めた。
@「ミキ、大丈夫か?何か、されたか?」
少し震えた声で話し、俺の腕にしがみつく。
@「大丈夫です。何もされてません。ちょっとしつこく誘われただけ……でも…怖かったです」
@「済まない! 1人で行かせた事を後悔してる」
俺の腕を掴んでる手を握りしめガバッと抱きしめた。
少し震えてるか?
@「イオリ、とりあえずケニーも心配して待ってる。戻ろう」
ジェフに言われ、ミキを抱き抱える様にしケニーの待つ席に戻った。
@「ジェフ! イオリ!」
@「1人にさせて悪かった。ちょっと酔っ払いに揶揄われてた。ボーイが連れ出したから大丈夫だ」
ジェフもケニーに安心させようと、微笑み頬にキスした。
@「そう、良かった~。大事に至らなくって」
俺はミキの肩に手を回し、ミキも俺の腕を掴んで詫びた。
@「すみません。お騒がせしました」
@「ミキが謝る必要は無い! あの酔っ払いが悪いんだ、いや1人で行かせた俺が悪い! 怖い思いをさせた、悪かった」
@「伊織さんの所為では、ありません」
そこに支配人が登場し、詫びを入れてきた。
@「失礼します。先程は申し訳ございませんでした。こちらは当店からのお詫びの記しです。あの者はボーイが連れ出しましたので、ご心配無く」
@「支配人! 格式あるホテルのバーでなんたる事だ! 折角、日本からの友人と再会の場に選んで、素晴らしい時間を過ごしていたのに。残念でならない!」
@「申し訳ございません。以後、注意致します」
@「解れば良い!」
ジェフに叱咤され、支配人は頭を下げ気を引き締めて戻って行った。
@「ヨシキ、怖い思いさせて悪かった」
@「そんな…ジェフさんまで」
@「折角の支配人からの詫びの品だ、飲もう」
暗い雰囲気を変える様に、シャンパンを開け皆んなに注ぎ気遣いをするジェフ。
@「さっ、折角の再会だ。嫌な思い出で終わらせたく無い。楽しい時間を過ごそう。ヨシキ、良いかな?」
@「はい。俺は大丈夫です、伊織さんが居てくれますから」
俺の顔を見て微笑む。
本当は、まだ怖いのかも知れないが、ジェフやケニーと過ごす時間を大切にしようと思ったんだろう。
そんな健気なミキに愛しさを感じた。
「大丈夫だな」
「うん」
頭のてっぺんに1つキスした。
@「イオリ、見せつけるな」
@「もう、ヨシキにメロメロね~」
@「ああ、俺はミキに骨の髄まで惚れてる。ミキ無しでは生きていけない!」
@「ケニー、今の聞いたか?イオリの口からこんな惚気が出るとはな。これで安心した」
ジェフの中での一抹の不安も払拭された様だ。
それから仕事面ではしっかり者のケニーのプライベートのおっちょこちょいな話しを面白可笑しく話して聞かせ、俺もミキの天然な所を話し笑い雰囲気も明るくなった。
1時間程してバーを出て、ホテルのロビーで別れの挨拶をした。
@「再会出来て良かった。またアメリカに来た時には連絡くれ」
@「イオリ、絶対だよ。楽しかった♪」
ジェフとケニーに握手を求められ手を握り
@「ああ、2人共ありがと。俺も楽しかった」
@「ヨシキ、会えて嬉しかった。イオリの恋人が、こんなに可愛いらしく良い子で良かった」
握手をするのかと思ったら、ミキとはハグをした。
何で、俺には握手でミキにハグするんだよ~。
そう思って、ジェフに文句を言おうとしたら間を空けずにケニーが口を開いた。
@「ヨシキ、僕も会えて良かった。イオリには、お世話になったからね。そのイオリに、こんな可愛い恋人出来て安心した。イオリを宜しくね」
ケニーもミキにハグし親愛の情を示した。
お前もかよ~。
これ幸いと、馴れ馴れしく触る2人に苦々しく思った。
@「俺も、お2人に会えて嬉しかったです。お2人も素敵なカップルです。日本に来た時には、是非連絡下さいね」
ミキも挨拶し俺も@「日本に来た時には、連絡くれよ。仲良くな」挨拶しロビーで別れ、俺達は先にタクシーに乗ってホテルに帰る事にした。
タクシーの中でやはり緊張してたのか?ホッと一息つき、俺の肩に頭を乗せ凭れてきた。
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