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第554話
出掛ける準備を終え、エレベーターの中でミキが俺に問い掛けてきた。
「伊織さん。何かあるんですか?」
「ん、まあな。下りれば解る」
ミキは何なのか?解らずに困惑してるが、俺は敢えて黙っていた。
エレベーターを降りてロビーに向かうと、俺を見つけて笑顔になり小走りで抱き着く体を受け止めた。
「伊織~、遅い~。僕、待ちきれなかった~」
抱き着く体を離し、頭を撫でてやる。
「悪かった。こんなに早く来るとは思わなかったからな。済まん、波瑠」
「波瑠斗さん?」
まさか波瑠が来てると思わず、驚いた顔をして声を掛けるミキに俺は事の真相を話した。
「アメリカ出張が決まって、波瑠に連絡したんだ。ミキと一緒にアメリカ出張になったって」
「そうなんですか~。全然、話してくれないから知らなかった。波瑠斗さん、お久振りです」
「ヨシキ。……あの時は、ごめんね。どうしても、直接謝りたかったから…本当にごめん。僕、自分の事しか考えてなかった。ヨシキに嫌な思いさせた」
そう言って、ミキの前でガバっと頭を下げた。
ミキはニコニコしながら、波瑠の頭を撫で頭を上げる様に話す。
「波瑠斗さん、もう何とも思ってません。電話でも謝って貰いましたし……俺…その時の、波瑠斗さんの僕とも家族になってって言葉が凄く嬉しかった。もう、俺達は家族ですよ。そう何度も謝らないで下さい」
波瑠はミキに抱き着き
「ありがと~、ヨシキ。家族なら僕の事を波瑠って呼んで」
ミキも波瑠の背中を撫でて話す。
「うん。波瑠?」
「嬉しい~ミキ」
どさくさに紛れて抱き着き、その上俺の許可無しに「ミキ」だと~。
ハグしてる2人を引き剥がし、波瑠に一言苦言を言ってやる。
「ハグは挨拶の時に1回ならまだしも~2回も。それと俺の許可無しで、ミキ呼びはダメだ。今まで通りヨシキだ。いいか、解ったな!」
「ふん! 伊織のケチ~。アンディ~」
黙って成り行きを見守ってたアンディが波瑠の頭を撫で俺達に挨拶した。
@「久し振りです、イオリ.ヨシキ。勘弁してあげて下さい。ハルはイオリ達がアメリカ来るって大喜びで、ずっと待ってたんですから。それに直接、ヨシキに謝って仲良くなりたいって、ずっと言ってました」
「そうか。ありがと波瑠」
「もう良いよ。それより仕事は?」
「ああ、昨日終わった。明日発つ前に、波瑠達と会おうと思ってな。まさか、こんな朝から来るとは思わなかった」
@「昨日から、待ちきれないって煩かったんですよ。早く会いたいって」
「ねえ、仕事だけでどこも行って無いんでしょう?ヨシキ、USJ JAPAN行った事ある?」
「無いです.無いです。友達と1度行きたいって言ってるんですが大阪だと遠くって。だから、ついディズニーに行っちゃいます」
「折角、ロスに居るんだし、USJ Hollywood行かない?一緒に行こうと思って、もうチケットも買ってるんだぁ~、ほら」
4枚のチケットを見せられ、ミキはパアッと目をキラキラ輝かせ、俺は人混みにうんざりとした顔を見せた。
@「イオリ、我慢ですよ。ハルはヨシキと行くんだって楽しみして、チケットも自分で購入したんですから早く仲良くなりたいって事なんでしょ?」
アンディの話で、ハルの気持ちも解りチケットも有るし、断る理由が見つからず行く事にした。
ミキと波瑠は仲良くUSJ で、何に乗るか?何を見るか?盛り上がりを見せていた。
「早く行こう。10時オ-プンだからもう開園してるぅ~」
「解った。タクシーで行こう」
タクシーを呼び、4人で乗込みUSJに向かう。
車内では、ミキと波瑠が園内をどこに行こうか?話が弾んでいた。
あんな事があったのに……俺が知らなかった事とは言え……ミキの優しさに感謝だな。
俺がキャッキャッ…と騒ぐ2人を微笑み見守ってると、アンディも温かい目で見守っていた。
アンディも気になっていたんだろうな。
波瑠の嬉しそうな顔に、アンディも微笑んでいる。
人混みは勘弁だが……たまには良いか。
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