562 / 858

第563話

月曜日の朝礼に、アメリカ出張でのプレゼンの話をした。 「まあ。概ね、こちらのコンセプトは理解して貰ったと思う。G&Kにとっても悪い話じゃないし、レシピやなんやとお膳立てはしてるからな。あと、香坂と現地料理人で実際に作った見本料理が有ったのも効果があった。やはり映像だけじゃなく、実物見ると匂いや量なんかも解り易かったと思う。感触としては良かったと思うが。G&Kからの回答は今週中には届くと思う。ま、やるだけやった。以上だ」 「良い返事頂けると良いですね」 「ああ、田口と佐藤には留守番させて悪かった。特に問題は無かったか?」 「大丈夫です」 「……何もありません」 「そうか、じゃあ朝礼は終わりだ」 「「「はい」」」 其々の自席に戻り、俺もアメリカ出張で不在中のメ-ル等の連絡事項が無いか?パソコンを開き確かめて居た 「香坂、お疲れだったな」 「いいえ、課長の方が大変だったと思います。あっ、これアメリカ土産です」 免税店で買った定番のマカデミアナッツチョコレ-ト1箱を田口に渡していた。 「おっ、ありがとうな。これ美味いよな」 「佐藤さんも、後で食べて下さい」 「……ありがとう」 久し振りに揃って賑やかな課だったが、俺は佐藤が元気が無い事が気になった。 いつもの佐藤なら ‘アメリカ行っていいなぁ’ ‘どこか観光したか’ とか聞く筈だが……。 1番様子がおかしいと思ったのは、ミキが土産を渡した時だ。 いつもの佐藤なら絶対に ‘マカデミアナッツかよ~’ って言う筈だ。 体の調子でも悪いのか? いつも賑やかな佐藤が大人しいのが気になったが……今日だけだろうと直ぐに頭から消えた。 ミキは上野さんにも「3時のお茶菓子に食べて下さい」とマカデミアナッツチョコレ-トを渡し喜ばれて居た。 その日の午後から佐藤は外回りに行き、俺とミキはアメリカ出張の間に溜まった仕事をし、田口も内勤して居た。 その日から佐藤の様子が変だと思う事が度々あった。 そらから3日後の木曜日に、アメリカ支社から電話があった。 アメリカ支社からの電話を切って、内勤で居たミキと田口に話す。 「田口.香坂。今、アメリカ支社から連絡あってヘルシー食の件、決まったぞ!」 2人共ガタッと立ち上がり 「やりましたね、課長」 「うわあ~、良かった~」 苦労した分、決まった事に喜んで居た。 もちろん、俺も喜び一安心した。 「香坂、悪いが電話番頼む。田口、器の事で打合せ良いか?」 「はい」 「大丈夫です」 俺と田口は打合せブ-スに向かい座ると、直ぐに田口が口を開いた。 「早速ですが課長。器は、どの位発注出せば良いですか?」 「それ何だが…当初5店舗位で考えていんだが、それでヘルシ-食の動向を見ようと思っていた。いずれ全店舗に拡大していこうと思っていた所だったが、G&Kが思ったより乗り気で、たぶん勝算ありと考えてるんだろうな。いきなり全店舗に展開すると連絡してきた」 「凄いですね。強気ですね」 「そうだな。俺的にはオフィス街や高級住宅地の店舗でと思っていたが、嬉しい誤算だ。それでだ、G&Kの方でも、もう少し現地食材を生かしたレシピも考案したいし料理人のトレ-ニングの時間も必要だと言ってきてるらしい。ヘルシー食は11月から全店舗で開始する予定らしい。それまでに店の中での宣伝もし予約制にすると言う話だ」 「じゃあ、時間はありますね」 「そうだな。ただ当初は、モデルケ-スで5店舗予定にしてたからな。窯業者でも良いかと思ってたが……千葉の工場の方でお願いするつもりだ。20店舗で10客分としても何種類もあるし在庫の分も必要だろ?」 「確かに…今回は窯業者にはきついですね。大量生産だと話しときます」 「だが、サンプルで制作して貰ったりと色々して貰ったしなぁ~。……そうだ! 店とは別にヘルシー食の器を客に売ろう。店の一角に飾って貰って、欲しい客には売るんだ、少し店より高級品で」 「それなら窯業者にも話易いです。割と、大きめな窯業者だったんで……無理も聞いて貰ってたんで、実はちょっと言い難いと思ってたんですが、その案だったら良いですね。注文きてから制作して貰えば良いし在庫とか関係ないですから、窯業者の負担にもなりませんし」 「じゃあ、それで窯業者には話してくれ。俺はG&Kに話しをする。後は、千葉工場に一緒に行って話さないとな。来週の火曜辺りどうだ?」 「大丈夫です」 「良し、決まりだ! じゃあ、窯業者に連絡頼む。俺はG&Kと千葉工場の工場長に連絡しておく」 「はい」 本当~に、決まって良かった~と安堵した。 それから俺は部長に決まった事を話しに行き、部長も喜び20分程話しに付き合い、自席に戻ってG&Kに電話を入れ、ジェフかケニーにアポを取った。 ジェフは不在だったが、ケニ-と話す事が出来た。 ケニーにお礼を言い田口と話していたお客様が器を購入したいと言う人が居る場合の為に、ヘルシー食器より若干高級志向品の器を別に売りたいと提案し、店の一角に飾って欲しいと話した。 ケニーも暫く電話口で考えて居たが @「店の飾りにもなるし、一角にサンプル品置きましょう。もちろん個人購入出来ると宣伝しておきますよそれにしても相変わらず商才家ですね」 @「やれる事はやるのが信条だからな。少しでも売上に繋がるならやって損は無い!」 @「頼もしいですね。イオリとの仕事は楽しいです」 @「ありがとう。また連絡する。元気でな」 @「イオリも」 ケニーとの電話を切り、窯業者への面子もこれで保った。 それから千葉工場長にも今回のプロジェクトの件を概ね話し火曜日のアポも取り、これで本当の意味でのプロジェクトが始動した。 やっとここまで漕ぎ着けた。

ともだちにシェアしよう!