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第571話 番外編

♪♪~…♪♪~♪ ~… セットしてたタイマーで起きた。 隣で、まだ惰眠を取ってる佐藤を揺り動かし起こす。 「佐藤、もうそろそろ着くぞ」 「ふぁ~、早いっすね」 「よく寝てたな」 「新幹線の揺れで……」 まだ覚醒して無かったのか?普段通りの佐藤との受け答えだったが、ハッとし口籠ってしまった。 その様子にムッとしたのは仕方ないと思う。 「降りる準備しろよ」 「……はい」 昼前に京都に着いて直ぐにホテルにチェックインした 隣合わせの部屋に各自荷物を置いて10分後にロビーに待合せた。 ビジネスホテルの部屋に入り、やっと気が抜けた。 「仕事する前に疲れた~」 椅子に腰掛け息を吐く。 それでも今から仕事だ! と気合いを入れ、鞄と手土産を持ちロビーに向かった。 少し遅れて来た佐藤と、ホテルを出て軽く昼食を取った。 昼食の時には受け答えはするが、話しも弾まず沈黙が多く気不味いまま過ごし工場に向かった。 13時には工場に着き、工場長はニコニコと愛想良く待っていた。 「お無沙汰です。籠バックでは大変お世話になりました。これ皆さんで召し上がって下さい」 東京駅で購入したお菓子を手土産に渡し、挨拶した。 工場長も挨拶し、初めて会う佐藤も自己紹介と挨拶をした。 早速、工場内を視察見学をお願いし工場長自ら案内し説明し、俺も佐藤も質問をすると的確に答えてくれ有意義な時間だった。 佐藤は働くパ-トさんにも気さくに声を掛け、和やかに話したりして居た。 籠バック生産ラインも、目の前で出来上がるまでの工程を見せて貰った。 他の生産ラインも見学し、1時間程工場内を視察見学し応接間で工場長と事務長と4人で顔を突き合わせ、籠バック.工場内見学の感想.苦労話と時間が経つに連れ話しがずれ始め、最後の方は工場長の独壇場で長~い世間話を聞く羽目になった。 やっぱ、こうなるよなぁ~。 電話口でも長い話しを聞いて居たのもあり予想はついていたが、顔には出さ無いが心の中ではうんざりしていた。 隣に座ってる佐藤はニコニコと話しを聞いてる。 長話しも1時程でやっと終わり、次は畳サンダル業社に工場長と3人で訪問する予定になっていた。 「さて、畳さんとこに行かないとな。事務長、悪いが今日は畳さん所と竹屋さんの所に2人を案内しないといけないから、そのまま直帰します。後は、宜しく頼みます」 畳サンダル.竹業社共に工場長の口利きだ。 工場長が一緒の方が何かと助かるとは思ってるが……直帰か~、接待されるんだろうな。 工場内の人達に挨拶し、工場長と共にタクシーで畳サンダル業社に向かった。 電話では話して居たが、初めて面会し挨拶した。 「電話では何度も話してましたが、ご挨拶が遅くなりました。畳サンダルの事では、大変お世話になりました。お陰様で、売上も徐々に上がってきてます。今後共宜しくお願いします。これ皆さんで食べて下さい」 「すみませんねぇ。こちらもお陰様で忙しくなって大喜びだよ。今後共宜しく頼みます」 気の良さそう社長だった。 社員の方に工房内を見学させて貰い作業工程も説明を受けた。 社長と工場長は顔見知りと言う事もあり、2人で話し込んでいた。 ある意味助かった。 佐藤も俺と一緒に見学し、工房の人に質問し話していた。 サンダル業社も1時間程で挨拶し、また工場長と共に竹業社の工房に向かった。 タクシーの中でも工場長の話しは尽きない。 竹業社では佐藤が担当だった為、佐藤がメインで挨拶し、籠バックでお世話になったお礼と今後共協力をお願いし手土産を渡した。 ここでも工房内を見学し、佐藤は自分の担当と言う事で細かな所まで見て回り質問にも力が入っていた。 3施設一緒だったが、新人だった時には外回りを一緒に行った事もあったが、一人立ちしてからは一緒に回る事も無かったが、チャラい事を言ったり軽そうな話しをするから、ちゃんと業者とやっていけてるのか?と思って居たが、結構真面目に仕事してるんだと感心した。 元来の人懐っこい性格もあり人見知りせずにどんどん話し掛け、解らない事は質問し真面目に聞く姿に……仕事は不器用だったり遅かったりするが、これは仕事先でも可愛いがられるな。 最後に挨拶していると、工場長が割り込んできた。 「田口君.佐藤君、お疲れ様。いやぁ~折角、京都まで来たんだ。これから美味しい京料理を食べにさせたいと予約してるだよ。畳さんも後から来るし竹屋さんも一緒に行くから。こんな機会なかなか無いからな」 予想はついていたが、こっちの予定も聞かずに既に予約してると聞き断る事は出来ないし、身内の工場関係ならともかく、世話になったサンダル業社と竹業社も一緒だ。 「ありがとうございます。そうですね、こういう機会も無ければ、なかなか面と向かって話しもゆっくり出来ませんから、ご一緒します」 佐藤は何も言わずに、俺に従う姿を見せていた。 「そうか.そうか。もう時間も時間だ。竹屋さん、一緒に行きましょう」 嬉しそうに竹業社の社長を誘っていた。 4人でタクシーに乗り、工場長が予約してくれた店に着いた。 タクシーを降り工場長と竹業社が先に歩き、その直ぐ後ろを佐藤と2人で歩き、店に入る寸前に佐藤だけに聞こえるように小声で話した。 「2次会には行かない! 1次会でホテルに帰るからな! ホテルで話しがある。飲み過ぎるな! 解ったな?」 いきなり近付いた俺にギョッとし驚き、直ぐに下を向いて俺の話しを耳だけ傾けて聞く。 「…………」 その態度と返事が無いのにイラつく。 「解ったな?」 しつこく聞くと、小さな声で返事が返ってきた。 「……はい」 先に、店の入口付近に居た工場長が声を掛けて来た。 「お~い、何してるんだ?店に入るぞ~」 「はい。今、行きます」 工場長に返事を返し、俺が歩き始めると佐藤も黙って着いてきた。

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