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第572話 番外編

「今日はありがとうございました。とても勉強になりました。今後共、宜しくお願いします」 「こちらこそ、宜しく頼みます」 「また、京都来た時には連絡下さい。今後共、宜しくお願いします」 サンダル業社と竹業社の社長達が挨拶し終わると、最後に工場長が名残惜しそうに挨拶した。 「本当に、次に行かんのか?なかなか、こう言う機会も無いのに残念だ」 「すみません。明日、東京戻る前に1件回ろうと思ってますから。工場長、今後共、宜しくお願いします」 「ま、そう言う事なら仕方ないか。じゃあ、今度来た時には付き合ってくれよ。成宮課長と香坂君にも宜しく言ってくれ。じゃあ、また」 「はい、伝えて置きます」 「ありがとうございました」 佐藤も挨拶し、2次会に豪遊する3人を店の前で見送った。 3人は近くのスナックにでも行く話しをしながら、遠ざかって行った。 タクシーを店の人に呼んで貰い来るまでの数分、店の前で2人で立っていた。 あれからサンダル業社の社長も合流し、工場長の音頭で乾杯し、そこから工場長が成宮課長が赴任してからの俺達1課が目覚ましい発展をし頑張ってる事を褒められ少しばかり仕事の話しになり、それからは社長達や工場長の苦労話と武勇伝を散々聞かされたが、何とか2時間で解放された。 俺は相槌を打ち適当に流してたが、佐藤は楽しそうにニコニコと聞いていた。 そう言う所が可愛いがられるんだなっと改めて思った 社長達や工場長に対して愛想良くしてた佐藤が、今2人っきりだと大人しく黙ったままだ。 沈黙に居た堪れなくなり、タクシーが来るまで俺から話し掛けた。 「佐藤」 ビクっと肩を揺らすのが、見なくっても解る。 イラッとしたが、平常心を心掛け優しく話した。 「酒は余り飲んで無いな?」 「……はい。ビ-ル3杯位です」 「そうか。なら、殆ど素面だな」 「……ま、はい」 俺も似たような酒量だ。 俺も佐藤も強い方だし3杯位なら酔わない。 そう考えてるとタクシーが見えて来た。 目の前に止まったタクシーに乗り込みホテルに向かった。 車中は重苦しい空気だったが、俺はこれからの事を考えていた。 どう切り出すか? 何から聞くか? 色々聞きたい事も言いたい事もあるし、佐藤の考えも知りたい。 取り敢えず、このままじゃあダメだ。 車窓からの風景を流し見なから、物思いに耽っていた ホテルに着き、部屋までのエレベーターには何人か乗って居たからお互い沈黙だった。 エレベーターを降り、俺は部屋のドアを開けた時、背後に着いて来てると思って居た佐藤が自分の部屋の前に居て、部屋のドアに鍵を差し込んで開けようとして居た。 おい.おい、話しするって言ったよなぁ~? 何で、自分の部屋に入ろうとしてんだ? 俺の話しを聞いて無かったのか? 「佐藤、何してる?話しするって言ったよなぁ?」 「……はい。1度部屋に入ってからって思って」 少し落ち着きたかったのかも知れないが、今更逃げないとは思うが……念の為、逃げられない様にした。 「時間空けても一緒だ。直ぐに、俺の部屋で話しする。良いから、来い!」 鍵穴に差し込んだ鍵を抜き取り重い足取りで、俺の部屋の前に来た。 ドアを開け、佐藤の腕を掴んで部屋に入れた。 カチャッと内鍵を締めた。 これでゆっくり話しが出来る。 たが、これからが大事だ。 まだドアの前で突っ立ってる佐藤の腕を掴んで1人掛けのソファに座らせ、俺は冷蔵庫からお茶のペットボトルを2本持って来て1本を佐藤に渡し、正面の1人掛けのソファに座り、ペットボトルのキャップを開けゴクゴクゴク…一気に半分程飲んだ。 気付かなかったが、緊張して喉が乾いていたらしい。 佐藤を前にして緊張してるのか? 変な緊張感が部屋に漂っていた。 佐藤は貰ったお茶を両手で握り締めていた。

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