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第576話 番外編
俯いたまま、暫く経って口を開いた。
「美奈さんが言ってた……部屋間違えた人って、田口さんだったんだ……美奈さんは彼女じゃないです。俺…彼女居ません!」
‘彼女居ません! ’と、そこは顔を上げはっきり話すが、じゃあ、あの女は何なんだ?
「彼女じゃないのにセックスするのか?口紅は落ち掛けて黒のスリップ姿で出てきたが……どう考えても、終わった後って感じだった」
俺が見たままを話すと青褪(あおざ)め、またコ-ヒ-カップの1点を見つめてた。
「美奈さんは彼女じゃないですけど……お互い時間が合う時に……月に1回か2回会う仲です。あの時は……たまたまLineがあって ‘落ち込んでる’って返したら ‘慰めてあげる’って部屋に来たんです。……友達です」
はあ! 何、言ってんだ~。
それって……セックスフレンドか?
俺には考えられない予想外の話に、頭が痛くなってきたとこめかみを押さえた。
「それは……セックスフレンドって事か?」
「……まあ、そうですね。お互い納得済みで」
まさか!とは思うが、一応この際だ聞いておく事にした
「1人だけか?」
1点を見つめていた佐藤の目が泳ぎ顔が強張った。
俺は佐藤から目を逸らさず、佐藤の表情のどんな変化も見逃さなかった。
1人だけじゃ無いって事か。
「……あと2人居ます。真梨ちゃんと千佳さんです」
「名前聞いてんじゃね~よ! ったく!」
つい腹が立って声を荒げてしまった。
‘冷静に.冷静になれ’と心で唱えた。
「す、すみません!」
いつもの条件反射で謝る佐藤だ。
「佐藤! スマホ出せ!」
俺に強い口調で言われ渋々鞄を漁っていた。
だからか、‘彼女が欲しい’ 何て言ってるが、飲みに行ったり合コンしてもガツガツしてないのは……。
本人も ‘楽しく過ごせれば良い’ とは言ってたが…
セックスフレンドが居るなら、ガツガツする必要無いって事なんだろうな。
他の男共とは違ってガツガツしないし一緒に居て楽しいからな、おまけにアイドル顔だしモテるんだろうな
「……はい」
自分の考えに没頭して佐藤の声にハッとし、スマホが置かれたテ-ブルを見た。
「佐藤! セックスフレンドにはLineで連絡してるのか?」
「はあ……電話もありますけどLineが多いかな」
「解った! セックスフレンド全員にもう会わないとLineしろ!」
怪訝な顔をする佐藤だが、俺は譲らないと解ると渋々スマホを手に取り打ち込み始めた。
「送る前に見せろ!」
「………はい、どうぞ」
♪*ごめん、暫く会えない😭また、こっちから連絡するね🥺♪*
「お前なぁ~、何だよ~このLINE! 俺を舐めてんのかぁ~。暫く会えないじゃ無い、今後2度と会わないってLineしろ! 連絡も取るな! 良いな! やり直し!」
「えぇ~………」
カチャカチャ……打ち込み始め、溜息をついて俺に見せて来た。
♪*ごめんなさい🙇♂️ 好きな人出来たから、もう会えない。色々…ありがとう🙏*♪
不満はまだ残るが、佐藤の性格からはこれで精一杯なんだろうと思い勘弁してやる事にした。
「ま、それで良いから後の2人にも同じLine送れ! 終わったら、連絡取れない様に削除しろよ! 解ったな!」
諦めた顔をしてカチャカチャ…打ち込み残りの2人にもLineしていた。
「終わりました。連絡取れない様に削除もしました。これで良いですか?」
「あと他には居ないな?」
「居ません! 」
「そうか」
「あの……どうして…ここまでしなきゃいけないんですか?」
恐る恐る俺に聞くが、何にも解って無い佐藤に腹が立つ。
「お前なぁ~。自分の恋人が、他の奴とセックスしてんの誰が許すんだ! 俺はそういうのは許さない! 今後一切させない!」
また、声を荒げて力説すると、佐藤はポカンッとした顔をして俺を見ていた。
「あの…誰と誰が恋人なんですか?」
「はあ?俺と佐藤に決まってんだろうが!」
何言ってんだ、こいつ!
「えっと……俺が田口さんの事好きって言って…昨日の夜に、田口さんからも好きだって言われたけど……」
コ-ヒ-をガブガブ飲み落ち着こうとした。
「ふう~。そうだ昨日、お互いの気持ちを確認しあったし、好き同士なら恋人だろ?違うのか?」
泣きそうな顔で口を開いた佐藤から意外な答えが返ってきた。
「俺…俺…田口さんから好きだって言ってくれて…それだけで充分だって思って……一時(いっとき)でも、そう言って貰えて…だから恋人とか考えて無かった」
泣きそうな佐藤の頭を撫でてやり
「俺の恋人になりたく無いのか?好きだって確認しあったら、それで良いのか?俺は嫌だ! 好きなら恋人になるのは当たり前だ」
「……充分だって思い込もうと……良いの?俺で?」
「佐藤が良いんだ! 俺の隣でバカ言って笑ってる佐藤が良いんだ!」
俺がそう話すと、涙が溢れて頬を伝うのを指先で拭い話す。
「佐藤が作ってくれたキッカケだったが……佐藤! ……俺と付き合ってくれ! 恋人になってくれ!」
佐藤には、はっきりと言った方が良いと判断し、付き合いを俺から申し込んだ。
「ヒッ…ヒック…うう…嬉しい!……俺こそ恋人にして下さい!…うぅ…」
涙を流す佐藤を引き寄せ抱きしめた。
「これから宜しくな。これだけは言っておくぞ。俺は浮気は許さないからな。佐藤も知ってる通り、俺は付き合ってる相手には一途だから、お前もそこん所良~く考えて行動しろよ」
俺の胸で、頭を縦に振り ‘うん.うん’ と篭った声で返事が返ってきた。
これで晴れて恋人同士になった。
佐藤との酔った勢いでの一夜から散々悩んで、最終的には俺は自分の素直な気持ちに従った。
それが俺が出した結論だった。
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