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第581話

田口と佐藤との間に、そんな事があったとは知らずに月曜日の朝礼をし、田口から京都出張の報告と今週の予定を確認し朝礼は終わった。 俺の席の前に田口が立ち京都土産の箱を差し出してきた。 「課長、これ京都土産の八ツ橋です」 「ああ、ありがとう。で、どうだった?佐藤と話し合って仲直りしたか?」 「はい。お陰様で」 「そうか」 「ありがとうございました」 そう言って自席に戻って行く田口は何だか嬉しそうだった。 やっとこれで元通りのチ-ムワ-クの良い課に戻るな 「上野さん、これ後でお茶菓子に出して下さい」 田口の京都土産を上野さんに預け仕事に掛かった。 その日は全員内勤で、佐藤も元気を取り戻し課も賑やかに感じた。 やはり元気の無い佐藤は佐藤じゃないと、笑ってる佐藤を見てそう思っていた。 田口も楽しそうに佐藤を揶揄ってるし、ミキが間に入って宥めてるのがいつもの光景だ。 課の雰囲気も戻り仕事をしていた夕方に佐藤のスマホが鳴った。 プライベートの話しなのか?小声で話して俺の方には届かないが、スマホを切った佐藤に田口が睨み「佐藤、ちょっと来い!」と、どこかに連れて行った。 何だ?また、拗れたら困るとミキを俺の席に呼び聞いてみた。 「何か、あったのか?」 「えっと…佐藤さんのスマホに合コンの誘いの電話があって。佐藤さん、始めは断ってたようなんですけど相手がしつこかったのか?断り切れなかったようで、今回だけって返事しちゃったみたいです」 「ま、佐藤らしいな。それで田口がプライベートの電話を仕事中にするなって説教でもしてるのか?」 「たぶん、そうだと思います」 「解った。席に戻って良いぞ」 「はい」 この時は、佐藤が田口に ‘合コン行くなんて、何考えてるんだ?’ ‘浮気か?’ ‘直ぐに断れ。もし行くなら俺も行く! そんでお前の前で他の女とイチャイチャしてやるからな! それでも良いなら合コンに行こう!’と、誰も居無いトイレで責められてるとは思いもしなかった。 2人が戻ってきて、佐藤が相当説教されたのか?肩を落として戻ってきたが、一応俺からも注意だけした。 「佐藤、プライベートの電話は休憩中か仕事終わってからにしろよ。それか手短に済ませ」 「……はい」 田口はニコニコと笑みを見せてるが、佐藤は落ち込んでミキが一生懸命励ましていた。 3人の部下を見て、これはこれで上手くいってんだろうな。 放って置いて、自分の仕事に集中する事にした。 それから、なんやかんや言って田口と佐藤は2人で仲良く帰って行った。 帰り際に挨拶された時に「合コンに行くのか?」と佐藤に聞いたら「行きません」と言って、田口の後を追って行ってしまった。 ま、仲良く帰ったって事は、飯を食いに行くか.飲みにでも行ったんだろう。 ミキも残ってたが、俺はまだ仕事が掛かると先に帰らせた。 10時過ぎに部屋に着いた俺は直ぐにミキに電話した。 ♪♪♪♪~♪♪♪♪~ 「はい。伊織さん、お疲れ様です」 「おう。今、帰ってきた~」 「うわぁ~忙しいですね」 「ああ、仮決算の会議の資料とかな。忙しいのも今週末までだ」 「頑張って~」 「ん、ミキのその言葉だけで頑張れる」 ふふふ…… 「幾らでも言ってあげますよ。そう言えば、田口さんと佐藤さん、仲直りしたみたいで良かったですね」 人の事には疎いミキだと思い、てっきり気が付いて無いと思ってたが…。 「ミキも気が付いてたのか?」 「そりゃ解りますよ。いつも元気で明るい佐藤さんが元気無いんですもん。一緒に居るんですから解りますよ」 「そうか。ま、原因は何か解らんが拗れてたようだが、田口が話し合って元通りになったようだ」 「良かったです。佐藤さんが元気無いと寂しいです。田口さんもいつもは穏やかな人なのにちょっと怖かったです。俺は気付かない振りしてるのが、1番だと思って普段通りにしてました。田口さんが何とかしてくれると信じてたので」 「そうか。1番大人なのは、ミキかも知れないなぁ~」 「それは褒めてくれてるんですか?」 「褒めてる.褒めてる」 「伊織さんに褒められるのって嬉しい~♪」 「可愛い~な」 「あっ、疲れてるのにごめんなさい。ゆっくり休んで下さい」 「ああ、ありがとう。じゃあ、おやすみ」 「おやすみなさい」 あ~癒された~。 佐藤と田口が拗れてたのにミキが気が付いてたとは意外だったが……疎いのは自分の事だけか? ま、田口と佐藤の件も解決したようだし、これでまた1課は元通りだ。 何もして無いが、気になってた事が1つ減り安心した。 田口なら大丈夫だと見込んだからこそ、京都出張を2人で行かせたんだ。 恋人同士になってるとは思わず、何が原因なのか?はっきり解らなかったが、佐藤の扱いは田口が1番解ってると思った。 やはり田口だな、上手くやってくれた。

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