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第585話

「来週の日曜日に、皆んなでディズニーシ-行きましょう」 全然思ってもみなかった沙織からの話で、俺は豆鉄砲を喰らった気分だったが、ミキと真琴君は大喜びだ。 「行きた~い♪」 「やった~♪」 「「わ~い♪」」 大喜びで2人でハイタッチまでする始末だ。 俺はまた人混みの多さを思い出しげんなりした。 マジかよ~。 ミキと真琴君の喜びように、行きたくないとは言えない雰囲気だ。 「そんなに喜んでくれて嬉しいわ♪」 「だって、初めてのシ-だよ。ね、マコ」 「うん。ずっと、行きたかったんだ♪」 「来週の日曜日なら、桐生さんも大丈夫でしょ?」 「うん。日曜日なら、祐さんもお休みだから大丈夫だと思う」 「ディズニーに行くとは言わなかったけど。この間、優希さんにLineでさり気なく確認したら、海堂さんも大丈夫そうだから、皆んなで行きましょう♪」 根回し済みかよ~。 「おい、沙織。俺の予定は聞かれて無いが?」 「あら、伊織は忙しい時期は終わったんでしょ?それに、伊織は行くわよ♪」 「………」 勝手に行くって決めやがって~。 文句言うと倍で返ってくるから止めておこう。 喜んでるミキと真琴君の表情が凍りつく事を、沙織はさらりと笑顔で話す。 「良かった~♪ 10月だから、少しは混むとは思うけど……月末になればもっと混むからね」 「何か、あるんですか?」 「あら~、マコちゃん。10月って言ったらハロウィンよ! 仮装パーティ-でしょ!」 「「えぇ~、仮装!!」」 驚く2人に笑顔の沙織と気の毒そうな顔で見守る矢島君と納得した俺と皆んなそれぞれだった。 成る程な。 だから沙織の奴、嬉しそうにウキウキしてたのか~。 仮装か~。 ミキはやはり女装か? 今度は、どんな感じなんだろう? 1回めは大人の女性って感じだったし、2回めは小悪魔ギャルって感じだったが……楽しみだなぁ♪ いや、待てよ! もしかして今度は俺達も仮装するのか? 物凄~く嫌な予感がする! 沙織に聞いてみようと口を開き掛けた時に、先にミキと真琴君が話し出した。 「沙織さ~ん。別に、仮装しなくっても……」 「そうですよ~。動き難いじゃないですか?」 「あら~、仮装は決定よ! 何の為に10月にシ-に行くと思ってるの?それに前に皆んなでバ-べキュ-した時に約束したわよね?忘れた?その時にシ-行けるならとかミキがするならとかマコがするならって言って仮装する事は決定済よ! もう10月まで待ち遠しいったら」 そう言えば、そんな事もあったような……? 随分前ですっかり忘れてた……沙織のリアル着せ替え人形の執念には誰も逆えない感じだ。 だが、一応ここはミキ達の援護射撃した方が良さそうだ。 「沙織、無理に仮装しなくっても……。大変だろ?」 「あら、全然大変じゃないわ。それより楽しみで仕方ないくらいよ♪」 「つかぬ事を聞くが……もしかして俺達も仮装するのか?」 「もちろんよ! 桐谷さんも海堂さんもよ、全員よ」 ……やはりな。 何言っても無駄だろうな。 俺ががっくりと肩を落とした。 「そんなに酷い事には、ならないわよ」 そう言って ‘あんた達はどうでも良いのよ。ヨシ君達の仮装(女装)みたく無いの?余計な事言わないで’ と目が語ってた。 「沙織さ~ん。伊織さん達も仮装するの?だったら伊織さんはミッキ-?俺はドナルドが良いなぁ~、プ-さんでも良い。良く寝巻き代わりに着てるルームウエア-とか着ぐるみタイプのパシャマとか色々調べたらあるから、そんな感じで良い?」 「沙織さん、見て.見て。結構あるんだよ~。スティッチとかモンスターズインクサリ-とかチェシャ猫とか……まだ探せばあると思うし」 「へえ~、色々あるのね」 ミキと真琴君は必死で無難な物にしようと、スマホ画面を見せてる。 黙って成り行きを見てた矢島君に声を掛け、カウンターに移り話しを聞く事にした。 「矢島君、沙織は楽しそうだな?」 「はい。もう先月から ‘早く10月にならないかしら’ とカレンダーと睨めっこしてましたから」 「マジか~。それで沙織の状況は、どんな感じ?もう仮装プランとか出来てるのか?」 気の毒そうな顔を一瞬見せたが、俺の質問には応えてくれた。 「俺からは内容とかは言えません。怒られます! でも、先月末から友達やら友達の伝手を頼って貸衣装やレンタル業者を紹介して貰ったりネットでも調べてました沙織さんの中では、もうどう言う感じにするか?は、決まってるようです」 「そうだろうな。あの喜びようは、楽しみで仕方ないって感じだし、色々言っても無駄だろ?」 「はい。さっきからヨシ君やマコちゃんがどうにか大人しめにしようと色々言ってますが……無駄な努力ですね。何だか気の毒で……」 背後で沙織に一生懸命に話すミキと真琴君の声が虚しく聞こえる……可哀想だが、俺は楽しみでもある。 あの沙織が仮装するなら徹底してする筈だ。 こんなチャンスは、またいつあるか解らないからな。 「矢島君、もう一度確認するが俺達も仮装するのか?どんな感じだ?」 「詳しくは言えませんが……ス-ツに毛が生えたくらいだと思います。沙織さんの気合の入れる方はヨシ君やマコちゃんと優希さん達ですから」 「それを聞いて少し安心した」 まだ、背後ではミキと真琴君は沙織を説得してるようだ。 どうなるやら……。

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