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第587話

ディズニーシ-に行くと決まってから暫くの間は、ミキも「仮装するの嫌だな~」「どんな仮装か不安」「楽しめないかも~」と嘆き不安を口にしていたが、日にちが近づくに連れ気持ちも変化していった。 ミキの良い所の1つでもある開き直り潔くなり「仮装なんだもん、自分じゃない別の人になりきれば良いってマコと話した」「折角のシ-だから楽しまなきゃ損!」と話す。 「そうだな。皆んなで遊びに行く事もなかなか都合つかないしな。楽しもうな」 ミキに話し2人でポジティブに考えるようになった。 当日の朝に祐一と真琴君が迎えに来てくれ、祐一の車で沙織の家に向かった。 沙織の家に着いてチャイムを押す。 インターフォンに出たのは沙織で「今、開けるわ」そう言って玄関を開けて出て来た沙織は既に仮装していた。 「おはよ♪ 優希さん達はまだよ。入って.入って♪」 朝から機嫌良く話すが……。 「お.お前、何だ~その格好!」 「沙織さん、可愛い~♪」 「もしかして…ジャスミン?凄~く似合ってる♪」 「確かに、似合ってる」 沙織の格好を見て俺.ミキ.真琴君.祐一とそれぞれ感想を漏らした。 「あら、そう?似合うかしら♪」 玄関先で一回りし、ご機嫌だ。 「ジャスミン?お前ならマレフィセント(魔女)が1番お似合いだと思うが」 「い.伊織さん!」 「良いのよ♪ 今日は何言われても許しちゃう♪」 そう言いながら俺の腕をギュッと抓った。 「いってぇ~」 顔はニコニコ笑ってるが……怖い。 もう、余計な事は言うまい。 「さあ、上がって.上がって」 ぞろぞろと玄関に入り靴を脱ぎ、沙織を先頭に応接間まで歩いてると、俺の背後でミキと真琴君はこそこそと小声で話してたのが聞こえた。 「マコ、やっぱり……女装かな?」 「あの機嫌の良さは……着ぐるみじゃないと思う」 「嫌だな~。沙織さん、本格的なんだもん」 「だよね~。拘りが強いからね」 「ここまで来たら、諦めるしか無いね」 「今の沙織さんに逆らえないよ~」 ここに来るまで覚悟を決めてたとしても、やはり実際見ると思う所があるらしい。 可哀想に諦めム-ドが背後から漂ってるが、俺はミキの女装は心の中では楽しみだ。 客間を開けると、ソファに矢島君が座ってパンを食べて居た。 「おはようございます」 「や.矢島君! 何だ、その格好?」 「うわぁ~矢島さんはアラジン!」 「似合う.似合う! もしかして、沙織さんがジャスミンで矢島さんがアラジンって事なんだ」 ふふふ…… 「そうよ! ジャスミンとアラジンの衣装は通販で購入したの。安かったわ。どう似合う?」 そう言って沙織は照れる矢島君を呼び並んで見せた。 「うわぁ~、お似合~い♪」 「写メ撮って良い?」 「良いわよ♪ 後で、私のLineに送ってね♪」 撮影会が始まったのを少し離れた所で眺めていた。 あれがジャスミン?ベリ-ダンスの衣装みたいだが沙織には似合ってた。 頭にタ-コイズブル-のヘア-バンドに髪は緩く一纏めで三つ編みにしサイドで結び、衣装は同じターコイズブル-のベリ-ダンス衣装に同じ色のサテンズボン 臍が軽く出てるがエキゾチックで似合ってた。 矢島君は髪は自然な感じで小さな帽子を被り、ベストは赤茶で白のシャツに生成りのサテンズボンだ。 俺はディズニーキャラクターは良く解らないが、何となく雰囲気はあると思って見ていた。 横で見ていた祐一が俺だけに聞こえるように話す。 「なあ?確か、仮装はス-ツに毛が生えた感じって言って無かったか?割と本格的じゃねえ?」 「あれが本格的かどうかは、俺はディズニーキャラクターの事をそこまで良く知らない。でも、矢島君が俺達の事に関してはそう言ってたんだが……」 「俺、あんなの着ると思うと恥ずかしい!」 「俺もだ!」 撮影会を見ながら、祐一と2人で先が思いやられるとげんなりしてた所にチャイムが鳴った。 龍臣達か? インターフォンに出た沙織が「優希さん達よ」そう言って玄関まで迎えに行った。 沙織が部屋から出て行き撮影会は中断し、皆んなでソファに座り矢島君の勧めもありテ-ブルに並んでたパンやサンドウィッチ.クッキーやらを摘んで居た。 廊下の方から声が聞こえた。 「龍臣! 仮装の事を知ってたの?! 」 「優希~、俺は伊織からはシ-に行くからデカい車出してくれって言われただけだ! 仮装なんて知らなかった! 信じてくれ~」 「知らない訳ないじゃ無い! あんた達はいつも悪巧みしてんだから!」 「信じてくれって」 優希さんが怒り、龍臣が宥める声がどんどん近くに聞こえた。 あのヤロ-! 俺の所為にしやがって~! 隣に座ってた祐一がニヤっと笑ってた。 「罪は1人で被ってくれよな」 このヤロ-! 勢い良く部屋のドアが開いた。 「成宮! 桐生!」 「「はい」」 高校の時に怒られた事を思い出し、条件反射で立ち上がり俺と祐一は直立不動した。 俺と祐一の前にツカツカ…近寄り、目の前で指を刺され腰に手を当て怒る姿は高校の担任そのものだった。 「龍が仮装の事を知らなかったって言い張るけど?」 どうなの?龍臣を庇うの?そう言う目をしてた。 目が怖い! 背後に居る龍臣をチラッと見ると両手で拝んでた。 仕方ねぇ~な。 「もしかして仮装の事は龍臣に言って無かったかも……すみません!」 俺が勢い良く頭を下げると祐一も「すみません!」と同じように頭を下げたが、祐一の顔は納得して無いようだ。 なぜ?俺も?って顔をしてたが、お前も同罪なんだよ~っと腹の中では笑ってた。 「本当なのね?何で言わなかったのよ!」 「………忘れてた」 顔を上げずに話す。 ミキの前で情けねぇ~な。 友情の為だ。 俺と祐一と龍臣は高校の時から何度も見た光景だったが、ミキ達は初めて優希さんの大声を出す姿に唖然としてたようだ。 シ~ンとする部屋。 優希さんでも怒るんだ~。 ハッとし、俺もソファから立ち上がり、その場で優希さんに向かって頭を下げた。 「優希さん! 伊織さんが仮装の事を忘れて言わなかった事すみませんでした!」 俺が謝るとマコも立ち上がり同じように頭を下げた。 「優希さん、ごめんなさい。祐さん達の事を許してあげて」 再びシ~ンとなり、伊織さんと祐さんが顔を上げ俺とマコを見た。 「ミキ」 「マコ」 そんな雰囲気を打破したのも優希さんだった。 俺とマコの前に来て2人の頭を撫でニコニコと話す姿はいつもの優しい優希さんだった。 「仕方無いね。美樹君と真琴君に謝られたら、許さない訳にはいかないじゃないの。……今回だけね! そうね~文化祭だと思えば……やれない事も無いか?」 「ありがとうございます。文化祭の仮装パ-ティ-って事で、開き直って楽しみましょう」 「皆んな一緒だしね、優希さん」 そう言って、ミキと真琴君のお陰で何となく和やかな雰囲気になった。 そんな事も束の間で、この後は沙織の独壇場となり、何を文句言っても聞かない沙織のリアルお人形さんごっこに付き合わされた。

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