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第590話
2階への階段を歩きながら、マコとこそこそ話しをしてた。
「さっきの伊織さん達、カッコ良かったね♪」
「うん♪ 凄~く似合ってた」
「俺なんか伊織さんが入ってきた時に、見惚れちゃって~言葉が出なかったもん」
「解る.解る♪ 僕も祐さん見た時に、そうだったから」
「ねぇ~マコ、俺達の衣装って……やっぱ女装?」
「だろうね。だって、祐さん達が王子様なら……姫? あ~嫌な予感しかしないよ~」
「だね。あ~どうか、プ-さんの着ぐるみであります様に」
こそこそ話してると2階の部屋に着いた。
「はい、入って♪」
部屋に入って化粧台には、ティアラやリボン.化粧品がやたらと並んであり、カ-ルするドライヤーやらウイックも置いてあった。
それをマコと見て ‘やっぱり‘ とげんなりした。
優希さんはこの光景を初めて見て驚いていた。
「時間無いから、ヨシ君と優希さんはそっちに掛けてる衣装に着替えて♪ 水色はヨシ君で黄色は優希さんよ♪ マコちゃんは先に化粧台に来て~♪」
楽しそうに蔓延の笑顔で話す沙織さんは張り切ってるのが解る。
優希さんと2人で衝立の後ろに掛けてあった衣装を見た。
やっぱり! 女装だ~!
俺は予想通りで驚きもしなかったが、優希さんは目を丸くし「ええ~! これ着るの?」珍しく大きな声を出してた。
衣装の前に行き、良く見ると胸の所が膨らんでた。
驚き衣装をじっくり見てる優希さん。
衝立の方から沙織さんに話し掛けた。
「沙織さん、このドレス、胸の所が膨らんでるけど……」
今までの女装歴からブラジャーはしなくて良いのか?遠回しに聞いてみた。
こっちに来た沙織さんはニコニコしながら
「全部、通販で買ったのよ~♪ 今はレンタルより通販の方がたくさん種類あって選べるし安いのよね~♪ リメイクも出来るから、お友達に頼んで胸の部分は2重にしてもらって、タオル詰めておいたのよ♪ あとね♪ 刺繍や飾りも付けて色々楽しかったわ♪ レンタルなら、こうはいかないから通販で買って良かったわ♪」
沙織さんが楽しそうに話すから何も言えない。
ともかく、ブラジャーはしなくって良いと解り、ホッとしたけど……もう1つ気になる。
「あの~、下の方は?」
俺と沙織さんの話しを黙って聞いてた優希さんの顔が強張った。
「もちろん! パンティ-用意してるから安心して♪」
やっぱりと思ってがっかり肩を落とした俺と「やだぁ~」「絶対に履かない!」と、大声で拒絶を見せる優希さん。
気持ちは凄~く解る!
俺も初めて女装した時はそうだったから。
結局、優希さんは沙織さんに説得され渋々了承した。
沙織さんはマコの髪やら化粧する為に戻り、俺と優希さんはドレスを手に取り着替え始めた。
着替えながら沙織さんに聞こえないように、2人で愚痴り合い慰めあった。
「龍の奴、絶対知ってた!」
「優希さん、俺も今までの経験上、こうなるのは予想してました。すみません」
「本当に素直な子ね。さっきも龍臣を庇って、成宮も1人で悪者になろうとしてるし……2人とも、やっぱりお似合いだよ」
「解ってたんですか?」
「うん♪ 伊達に、あの3人の担任してた訳じゃないからね。あ~言う事になると、3人は協力的になるんだよね~。まあ、今回は美樹君や真琴君と成宮.桐生の顔を立てて、龍臣を追求する事は止めたけどね。でも、女装とかパンティ-までは……ちょっと恥ずかしいなぁ~。精々、文化祭のノリだと思ってたからね。こんなに本格的だとは……」
「沙織さんは徹底してますから……俺、女装するの、今日で3回目なんです。マコは2回目で」
「先輩なんだ~。もう、こうなったら成る様にしか成らないと、諦めて楽しんじゃう?」
「はい! 俺も女装の時は、いつもの自分とは別人と開き直って楽しむ様にしてます」
「だね! 」
お互いのドレスの後ろのジッパーを上げ、何とかドレスは着た。
黄色のドレスは、優希さんに良く似合ってた。
「ねえ。やっぱ、これ履くよね?」
「……用意されてますから。履かなきゃ、沙織さんに怒られます」
「はあ~、こんな小さなパンティ-に納まるのかなぁ~。私のそれなりに大きいけどね」
優希さんが性的な事を話すのも珍しい。
ちょっと恥ずかしくなった。
「俺も初めて履いた時はそう思いました。沙織さんに言われて女装の度に履きますけど、何とか納まりますよ。でも……興奮して大きくすると、先が出ちゃうから気を付けて下さい」
今までの経験から話すと、優希さんが今度は頬を染めた。
可愛いらしい~♪
「そ、そうなんだ」
「ガ-タ-ベルトとかストッキングが無いだけ、今日はマシな方です」
「何か、美樹君。……女装に慣れちゃってるね」
「慣れたくなくても慣れざる得ないって事です」
そんな事を話しながら、小さなパンティ-を履いた。
「うわぁ~、思ったより面積無い~。冷えそう」
「本当に、女の子ってこんなの良く履きますよね?」
「本当だね。改めて、女性の凄さが解るって言うか体験してるよ」
俺達が着替えながらこそこそ話してると沙織さんの声がした。
「マコちゃん終わったから、次は優希さん来て~♪」
楽しそうな声で呼ばれ、優希さんは「はあ~」と溜息を吐いて衝立から出て行った。
代わりに俺の元に来たのは、化粧と髪をセットしたマコだった。
「わぁ~♪ マコ~可愛い~♪」
「………そう?……褒められても嬉しくない……けど」
折角、優希さんが開き直ったのに、マコがこれじゃ~台無しになっちゃう。
「絶対! 祐さん、喜ぶよ~。いつものマコも可愛い~けど、また違う魅力があって」
祐さんの事を持ち出すと、頬を染めるマコがまたまた可愛いらしかった。
「祐さんが喜んでくれるなら良いか?」
「そうだよ。皆んなで折角シイ-に行くんだもん。楽しまなきゃ~。マコが楽しそうじゃなきゃ、祐さんだって楽しめ無いよ?俺も女装は抵抗あるけど……伊織さんと一緒なら良いかなって。ハロウィンだし、皆んな仮装してるから大丈夫だよ」
「うん♪ そうだね。皆んな一緒だしね」
「そう.そう」
「ミキも、そのドレス凄く似合ってるよ~」
「確かに……マコが言う通り褒められても嬉しくは無いね~。でも、ありがとう」
クスクスクス……
2人で顔を見合わせ笑った。
「これが僕の衣装だよね?」
「そうだね。早く着て見せて~」
「……これって白雪姫?」
「たぶんね」
「はあ~……これも祐さんと楽しむ為だ! 良し、着る!」
衣装を手に取り気合を入れ、着替え始めた。
マコも覚悟してここまで来たけど、実際に化粧や髪をセットされ少しテンションが低くなったようだけど、祐さんの為に気持ちを切り替えてくれた。
何とか1日楽しく過ごせそうだ。
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