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第597話

目的のアトラクションは小さなジェットコ-スタ-だった。 グルグル回る魚の形をしたコ-スターに乗り、そんなに時速も無さそうだなと思った。 「ここです。並んでましょう」 最後尾に並び、小さなジェットコ-スターの割には人気がある。 「こんなジェットコ-スターなのに、並んでるなぁ~」 「だな。子供ばっかりだと思ったが、結構カップルとか多いな」 「これなら写真の方が早いかもな」 俺達4人は並びながら、今後の事を話した。 「なあ、ずっと8人で行動するのか?」 俺が最初に口火を切った。 「どうだろうな。マコ達は皆んなでって思ってるんだろうな」 「マジかよ~。8人で、ぞろぞろ歩くと仮装が本格的過ぎて目立って仕方ねぇ~よ」 龍臣の意見に俺もそう思ってたし、第一にミキと2人っきりになりたかった。 「それな。皆んなで歩く度にジロジロ見られて、ミキが通ると騒つくしな。やっぱ8人で居るから目立って仕方ねぇ~。分散しね~か?ここ終わったら昼飯時だろ?その時に、昼食後はカップルで行動しよって言おうぜ」 「良いね~♪ 俺もマコと2人になりたかった。ミキが居るとマコはミキと行動したがるからなぁ~」 「だよなぁ~。俺も祐一と同じ事思ってた。龍臣は?」 「俺も折角来たのに、ずっと皆んなと一緒か~と思ってた。優希の女装姿は、今日しか見られないかも知れ無え~から堪能したい」 イチャイチャしたいだけだろ-が。 ま、俺もだけどな。 やはり皆んなの前だと、どうしても遠慮がある。 「じゃあ、決まりな。俺が切り出すから、祐一も龍臣も矢島君も援護射撃してくれよ。俺1人じゃあ、沙織に太刀打ち出来ない。頼んだぞ」 「解った」 「OK」 「……俺、沙織さんに言えるかな~。沙織さん、楽しみにしてるし……」 沙織の事を思って小声で話す矢島君。 「矢島君が頼りだ。沙織に2人っきりで回りたい!って話すんだ。矢島君が言えば、沙織も折れるって」 「そうだよ。矢島君の頼みなら聞くさ」 「頼むよ」 「……でも…」 煮え切らない矢島君に痺れを切らした俺達は声を揃えて話す。 「「「言え!」」」 「はい!」 条件反射で矢島君は大きな返事をした。 「良し、これで矢島君の協力も得た」 俄然、楽しみになって来た。 並びながら輪になって話し込んでると、わりと時間は経つのが早かった。 20分程並んでた所で矢島君のスマホが鳴った。 ♪♪♪♪~♪♪♪♪~…… 「沙織さん。あっそうですか。まだ、大丈夫ですけど早めに来てください。待ってます」 電話を切り 「写真の方は終わったらしいです。こっちに向かうって言ってました」 「そうか。何とか間に合いそうだな」 俺は龍臣と矢島君の背後に居る女の子2人組に声を掛けた。 「すみません。あと4人今から来ます。申し訳無いですけど、割込みさせて貰います。すみません」 断れない様に、ニッコリと微笑み愛想良く話す。 「………あっ、はい。良いですよ。どうぞ」 俺の笑顔に少し遅れて快く了承してくれたのを確認し前に向き直った。 背後からこそこそと「凄~く、カッコ良かったね♪」「ねえ、あれって王子様の格好でしょ?本物の王子様みた~い♪」と聞こえ、祐一から揶揄うように肘で突っつかれたが無視だ。 俺と祐一の背後に居た龍臣と矢島君にも聞こえてたと思う。 「流石、成宮さんですね。気配りを忘れない」と矢島君が龍臣に話してた。 「ただの格好つけだろ」と、龍臣が話すのも聞こえたが無視だ。 後から来るミキ達が背後に居る女の子から文句言われない為にした事だ。 別に、女の子に話し掛けたかったわけじゃない。 全て、ミキが嫌な思いをしない為だ。 背後でキャッキャッ…騒いでた女の子達が自分達の前に居る龍臣と矢島君に話し掛けて来た。 「あのぉ~、もしかして一緒のグループなんですか?」 「はい。すみません、ご迷惑掛けます」 律儀に対応する矢島君は元来の人の良さと爽やかな青年で話し掛け易いんだろうな。 「やっぱり~。仮装が、皆んな本格的だからそうなのかなぁ~って話してたんです♪」 「その格好ってアラジン?こっちの人は誰だろう?」 「はい。俺はアラジンで、こちらは美女と野獣の……」 野獣と言えずに言い淀む矢島君。 「わぁ~、凄~い♪ 野獣でしょう?ワイルドで凄~く似合ってますぅ♪ ね!」 「うん.うん♪ 格好良い~♪ 2人共、爽やかな感じとワイルドな感じでとても似合ってます。前の人は王子様?」 「ありがとう。前の2人は王子様だ」 俺達の話しになったので一応、祐一と頭だけペコっと下げ前に向き直った。 「うわぁ~あの2人もカッコいい~♪」 「本当に、お似合いで本格的ですね?どこでやって貰ったんですか?美容院?」 「俺の彼女がこう言うの好きで……」 「じゃあ、彼女さんも仮装してるんですか?」 「はい」 「皆さん、カップルで仮装してるんですか?」 「ああ、そうだ」 質問攻めに合い、矢島君の人の良さと龍臣も仕事柄キャバ嬢やクラブの女性を相手にしてるだけあり卒なく対応してるが、龍臣は元々女ったらしだったからな。 俺と祐一はゲイだから女に興味無いし、前回4人でランドに行った時の事もあり、女共に関わるのは避けてた 「おい、良いのか?龍臣達。もう少しでマコ達来るんだろ?ヤバく無いか?」 「放っておけよ。関わるな」 まだ背後で話してる4人は周りから見たら、カップルに見えるんだろうな。 そう思ってると、ミキ達の姿が遠くに見えて来た。 龍臣達は女の子達の方を向いて居て気付いて無いらしい。 「マジで、ヤバいって」 「かもな」 俺達はこそこそと小声で話してると、どんどん近付き龍臣と矢島君の姿を見た沙織と優希さんが足早に駆け寄って来た。 ミキと真琴君は気付かずに、2人でスマホを見ながら歩いてる。 「大ちゃん!」 「龍!」 2人の声に龍臣と矢島君は振り返った。 「沙織さん……」 「優希」 さて、どうするか? 見ものだ。 心配してた祐一もニタニタ笑い俺と目が合った。 本当に、祐一は性格が悪い。 くっくっくっくっ……。

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