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第602話
「ちょ.ちょっと待て~、伊織さん」
急に、ミキが立ち止まったのに合わせて俺も足を止めた。
「どうした?」
「靴が……」
裸足の片足が見え、爪先だけ地面につけて居た。
1m位後方に、青いヒ-ルが落ちていた。
「急ぎ過ぎたか?悪い。ちょっと、そのまま待ってろ」
その場にミキを置いて青いヒ-ルを取りに行き、ミキの元に戻り片膝を着き、裸足のミキの足を手に取り青いヒ-ルを履かせた。
「い.伊織さん……ありがと。本物の王子様みたい」
履かせた足を元に戻し、俺は片膝を着いたままの体勢で、ミキの手の甲にキスし顔を上げ見つめた。
「言っただろ?ミキだけの王子様だって」
ふんわりと微笑み天使の笑顔を見せた。
「うん。素敵な王子様♪」
俺は立ち上がり、ミキの頬に手を当て
「さて、次はどこに行く?」
「センター・オブ・ジア-スへ」
「お供します。お手をどうぞ…お姫様」
素直に出した手を俺の腕に絡ませて、今度はゆっくりと歩き出した。
その光景を何人もの人達が遠目に見て「うわぁ~素敵~♪」「本物の王子様とお姫様様みたい」「絵になる~♪」と、ヒソヒソ言われてたのは、俺達は自分達の世界に入り気付かずに居た。
そして沙織と矢島君がたまたま見て居た事も知らずに夕暮れ時のパークのイルミネーション風景や照明と色鮮やかに輝く昼とは違ったアトラクションを見ながら歩いて居た。
センター・オブ・ジア-スに着いたが、ここでも行列になって居た。
ファストパスを使い入り、ここでも待ち時間を飽きさせない為に色々と工夫され楽しむ事ができた。
ネモ船長の研究室や実験室.地下へのエレベーターと見どころがあった。
6人乗りの地底走行車に乗り、室内を結構なスピードで駆け抜けスリル満点だ。
暗い神秘的な中に光る水晶玉や多数の未知の生物や巨大キノコが出現したりとSF感満載だ。
隣のミキはスピードがあっても、色々出現する未知の生物に大喜びだ。
地底を駆け巡り噴火と共に地上へ吹き上げられる。
その際に一瞬見えるパーク内の風景は圧巻だ。
「絶対に目を瞑らないで見よう♪」とミキから言われてたのもあり見逃さないようにした。
日没直前で地平線を真っ赤に染まり、パーク内のイルミネーションが輝き絵に描いた様に美しかった。
「キャ~~綺麗!」
隣でミキは一瞬見えた光景を口にしながら落下して行く。
地底では結構なスピードで駆け巡り、最後だけ一気に上昇し一気に急降下した。
何だか解らない内に落ちたって感じだった。
でも、あの一瞬見えた景色は、また乗りたくなると思わせた。
「さて、ミキが行きたいと思った所は終わったぞ。後はどうする?沙織達との待ち合わせもあるしな。アトラクションは直ぐに乗れる物しかダメだな~」
「ん~、悩む! 取り敢えずショップみたい!」
「よし! ショップに寄って、あと1個か2個乗れる物に乗るか?」
「はい! 」
直ぐ近くに、海底2マイルのアトラクションがあった。
見てみるか?
並んでないか?確かめたら、さほど並んでる様子は無さそうだ。
「ミキ、これ乗るか?また、船だが」
「乗りた~い♪ シ-だもん、船系が多いよね」
「そうだな。じゃあ、決まり!」
少しの待ち時間だったが、さっき乗ったジア-スと少ながらず関係性があった。
説明もネモ船長絡みだった。
さっきは地底を探検し、今度は潜水艦で海底を冒険するアトラクションだった。
潜水艦に乗り込むと、どんどん潜水し気が付くと、ゴボゴボッ…と水の音が聞こえ窓の外を見ると、本当に海の中に沈んでる様なリアルな不思議な体験だった。
窓の部分にはサ-チライトが付いて船内のレバーを自由に操作する事ができ、ミキはあっちこっちと操作して楽しんでた。
お姫様の格好して…子供みたいだな。
海底の底の美しさと神秘的でゆったりと見てられた。
ゆったりとした冒険の中に巨大イカが攻撃してきた時には少し映画っぽいと思ったが、それはそれで楽しませて貰った。
スリルやスピード感は無かったが、ゆっくりと過ごし2人でイチャイチャ出来た。
それからショップに寄り店の中を見て歩くと、周りが俺達を見てザワザワ…して居たが、ミキは縫いぐるみやキャラクターグッズに夢中で気付いて無い。
「どうする?何か買うか?」
ダッフィ-の縫いぐるみでも買うのか?
「ん~記念に、何か買いたいけど……」
「悩んでるのか?」
「どうしても欲しいって物無いからなぁ~。無理して買わなくても良いかなって」
「そうか」
それからも少し店の中をフラフラして「可愛い♪」「ミッキ-だ♪」とか言ってたが、結局買わずに見るだけで終わった。
ミキが話すには店の装飾なんかも楽しいらしい。
ショップを出て夜のパークはイルミネ-ションやネオンで鮮やかな色合いで幻想的な雰囲気がある。
最後に、丁度時間的に始まったマジックランプシアターに入った。
ショ-前の数分のコミカルなキャストとゲストの遣り取りも面白かった。
ショ-が始まると、シアタースクリーンにはジニ-が映し出され、スクリーン前ではキャストが実際にパフォーマンスを披露する。
3D映像による迫力と臨場感あるショ-が堪能でき、映画と生ライブを1度に観賞した様な面白い融合が楽しめた。
面白い見せ方だと感心した。
ジニ-によるスクリーンマジックの他にステ-ジ上では、定番マジックからコミカルなマジックまで驚きと笑い声が館内には絶えずあった。
俺とミキも他の人と同じように笑い.驚き、種明かしを考えたりと楽しい時間を過ごせた。
ぞろぞろと人混みに紛れ館内を出た。
「面白かった~~♪」
「マジックも思ったより、本格的な物もあったしな。期待して無かったけど、笑えて面白かった」
「美樹君!」
「伊織!」
外で立ち話しをしてた俺達の名前を呼ぶ声に振り向くと、龍臣と優希さんが歩いて来る。
「おう。龍臣達もこれ見てたのか?」
「ああ、案外面白かった」
「残念。一緒に入れれば良かったね」
「人数多くって解りませんでした」
「おっと、立ち話しも良いが、そろそろ待ち合わせの場所に移動しようぜ」
「そうだな。そろそろ時間だな」
「美樹君、行こう」
「はい」
ミキと優希さんが少し前を歩き、その後ろを俺と龍臣は並んで歩く。
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