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第604話

「ここ辺りで良いんじゃない?ほら、段差もあるから見易いと思うわ」 ショ-の開催となる海を前に立見で、沙織.優希さん.ミキ.真琴君が横並びになり、その背後に矢島君.龍臣.俺.祐一とそれぞれカップルで前後になりショ-を見る事にした。 俺達の前では4人がソワソワ…ワクワク…とし、お喋りに花が咲いてた。 ぞろぞろとショ-を見に集まる人や既に良い場所を陣取ってる人と、メインショ-だけあって人の数も凄い 前列のミキ達とは別に、俺達4人も密かにワクワク…してた。 水上ショ-だろ? ランドのパレードとは違って、余り動きがねえ~んじゃねぇ~のか? どんな風に演出するんだろうな。 俺がそう考えてると龍臣からもそんな事を話してきた 同じ事を考えてたらしい。 暫くするとショ-の公演のアナウンスがあった。 俺も水上ショ-には興味があった。 いよいよか~♪ 暗闇の海の上に船とも違う乗り物でミッキ-が現れた 『わぁ~~♪』『ミッキ-♪』 辺りからは歓声が上がり手を振ってる。 ミッキ-が出現しただけで、この盛り上がりだ。 密かに ‘凄え~な’ と思ってた。 「ミッキ-だ♪」 「始まるね♪ 楽しみ~♪」 こっちでもミキと真琴君は顔を見合わせ手を叩き喜ぶ ショ-が始まって直ぐは2人共興奮して囁くように話し嬉しさを表してたが、そのうち誰もがショ-の演出に見入って無言で見始めた。 今がチャンスだ!! 俺は背後から抱きしめ首元に手を回し肩に顎を乗せミキの耳元で囁いた。 「凄ぇ~な」 バックハグした事に少し驚いた様子だったが、直ぐに「うん♪」と微笑み返事した。 俺はそのままバックハグしたままの格好でショ-を見た。 俺達にしてみればバックハグはいつもの事だ! 最後ぐらい、思いっきりイチャイチャしたい! 隣の祐一達を見ると、既に真琴君を背後から抱きしめてる祐一と目が合ったが、直ぐに真琴君の耳元に囁き真琴君も嬉しそうに応えて居た。 こいつ~、ランドのパレードの時には俺の真似してた癖に~。 学習してんな~。 そう思ってた時に俺の足をツンツン…と、隣の龍臣がしてきた。 何だ~? 龍臣は ‘良くやるなぁ~’ と、声を出さず口パクしてた ‘隣を見ろ’ と、俺は目で合図する。 祐一達のバックハグを見た龍臣は驚いてた。 俺は目で ‘お前もやれよ’ と唆すと、少し考え照れ臭そうに恐る恐る優希さんを背後から抱きしめた。 驚いた優希さんは周りをキョロキョロ…し、俺達と祐一達を見て納得し、照れながらも龍臣が回した腕に手を重ねた。 龍臣は優希さんの許可が得たと嬉しそうな顔をしてた チラッと沙織達を見ると、矢島君はスマホでショ-を撮影してた。 沙織に言われたんだろうな。 矢島君は尻に敷かれっぱなしだなぁ~。 ま、年下だしな。 だが、沙織の肩に手を回し2人でスマホを片手ずつ持ち撮影してる姿は、やはり好き同士だと解る。 周りはショ-に夢中だし、イチャイチャしてても誰も気にする者は居ない。 テンポの良いミッキ-の愉快なショ-でほのぼのと見ていたが、中盤からは悪役が登場しそれまでと雰囲気が変わった。 ランドのキャラクターのパレードとは違いスト-リ-設定に基づき演出され、音楽や映像.特殊効果の凄さでショ-に見入って居た。 水上に浮かぶ巨大スクリ-ンは迫力が満点だ。 圧巻だったのはショ-の後半に鏡の中から炎を吐く巨大なドラゴンに変身したマレフィセントと勇敢に戦うミッキ-との対決は見どころだった。 花火.映像.噴水.ウォタ-スクリーン.球体スクリーンなど特殊効果を使いショ-を次々と楽しませてくれた。 レ-ザ-ビ-ムもショ-の見どころの1つだった。 「凄いな」 背後から真剣にショ-に見入ってるミキの耳元に囁くと、俺の腕を触り「うん♪」と短く返事をした。 ミッキ-がマレフィセントとの戦いに勝利し、ラストには各キャラクター達が船に乗って登場し、豪華なフィナーレだ。 あっという間の20分だった。 ショ-が終了しても曲が流れ余韻に浸っているミキに話し掛けた。 「終わったな」 「うん。凄かった~~」 「このショ-をミキと見れただけで、シイ-に来た価値があるな」 「俺もです。でも……やっぱり艶やかで幻想的な世界が終わると……寂しいですね」 花火大会の時もそうだったが、楽しかったり賑やかな事が終わった後は、ちょっとセンチメンタルになるらしい。 そんなミキをギュッと抱きしめた。 「そうだな。その位あのショ-の世界に引き込まれてたんだろうな。でも、寂しがるな、ミキの側には俺がずっと居る」 「うん♪ 約束だよ?」 「ああ、約束する!」 背後から抱きしめミキと2人の世界で会話してると、「おい! いつまでやってんだ!」横から祐一の声が聞こえ夢の世界から一気に覚めた。 「ったく! 良いだろ-が、好きにさせろ!」 「はん!じゃあ、勝手にしてろ。その代わり皆んなに見られてるぞ」 周りを見ると祐一と龍臣はバックハグを止め、真琴君や優希さん.沙織と矢島君は俺達2人をニコニコと笑顔で見てるし、目の前を歩いてる他人までチラチラ…見て居た。 「……伊織さん」 頬を染めるミキが可愛いらしくバックハグから変えて胸に抱きしめた。 「見るな! 可愛い~~ミキの姿を見るんじゃねぇ~~!」 「アホらしい~。勝手にやってろ! バカはほっといて、そろそろ帰る?」 「そうね。帰りがてら園内を見ましょう」 「沙織さん、お土産買いたいんだけど…」 「いいわよ。帰りに寄りましょう」 珍しい~優希さんがお土産って話すのもと思った。 「尊にか?」 「あっ、うん。私達だけ楽しんでるからね。お土産位は買わないと」 「そうか。ありがと-な」 優希さんの優しさと気遣いが伺えた。 龍臣も頭が上がらないわけだ。 「さあ、行きましょう」 「ミキ~~、行こう♪」 「うん♪」 俺の腕から抜け出し、真琴君と手を繋いで歩いて行った。 ミキが居なくなった俺の腕の中は、ぽっかり穴が空いたような寂しさが残った。 さっきまでの幸せな気分が……。  「ほら、何をセンチに浸ってんだ?行くぞ!」 バンッ! 背中を祐一に叩かれ、俺も祐一と並んで歩き出した。 結局、隣は祐一かよ~~!

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