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第617話
風が冷たく寒い季節になった。
それもそうだ、後1ヶ月もすればクリスマスだ。
街並もクリスマス仕様に模様替えされている。
去年のクリスマスには、腕時計をプレゼントした。
ミキからは財布を貰いセンスも良く使い勝手も良いその財布は俺のお気に入りでずっと使ってる。
11月に入って ‘今年は何をプレゼントしようか?’ と悩み、パソコンで流行りの物やミキの好きなアクセサリーやらを検索したが色々目移りし迷って居た。
アクセサリーは自分でも製作したり好きなだけあって結構持ってるんだよなぁ。
ネックレスはミキの手作りで2人共ペアで着けてるしブレスレットも前に皮製品に嵌ってやはり色違いで作り貰ったからな。
指輪……か。
う~、渡したいのは山々だが……これは最終的な物だと思ってる。
安易な気持ちでは渡したく無い。
俺の気持ちが重く感じるんじゃないか?
ミキにその覚悟がまだ出来て無い……と思う。
もう少し……先か。
服にしようか?小物にしようか?
色々悩んでた所に、昨日の夜にミキから電話がきた。
「あっ、伊織さん。お疲れ様です。今日、手拭い業者さんから展示会のチケット貰ったので、急ですけど、明日行きませんか?」
「おう! ミキは直帰だったよな、お疲れ様。構わないが何の展示会?」
「えっと…日本文化 和の美って言う展示会です。業者さんが週末行けなくなって ‘もし、良かったら’ って、俺に譲ってくれました。日曜日が最終日なので、明日はどうかな?って」
「へえ~、面白そうだな。それとは違うが、前に似たような展示会に行った事があったが勉強になった。じゃあ、明日、待ち合わせするか?」
「はい! あっ、でも伊織さん、前に行った事があるなら……」
「いや、行った事があるって言っても随分前だからな日本に戻ってからは、まだ1度もそう言う展示会行ってないし、俺が行った時とは、また変わってるかも知れない」
「じゃあ、行きましょう。俺、凄~く楽しみです♪自分の仕事に追われて、こう言う展示会に行く事が無かったから。じゃあ、明日、1時で良いですか?待ち合わせ場所はLineで送りますね」
「待ってる。じゃあ、明日な」
それから直ぐに、チケットの写真と待ち合わせ場所がLineで送られてきた。
俺は出掛けたついでに、展示会の後で街をフラフラして良さそうな店やデパートでも寄って、ミキが興味を示した物や欲しそうにしてる物をリサーチしようと思った。
その上で、最終的に今年のクリスマスプレゼントを考えようと思った。
展示会も面白そうだし、ミキの欲しそうな物も解るし一石二鳥だな。
そして今は待ち合わせの場所でミキを待って居た。
「伊織さ~ん」
少し離れた所から俺を見つけて手を振って歩いて来る
俺も手を上げ応える。
おっ、今日も可愛いな。
人混みの中に居てもスタイルの良さと、服のセンスの良さは遠目でも解る。
段々と近づくミキの姿を見て ‘俺の恋人なんだ‘ と、周りに叫びたくなる様な自慢したくなる様な…でも誰にも見せたくないような複雑だ。
「伊織さん♪ 早いですね?待ちました?」
「いや、俺もさっき着いた所だ。久し振りに待合せだからな。遅れないように早めに来ただけだ。何だかこうやって待合せするのも悪く無いな。待ってる時間もミキの事を考えてドキドキ…もするし、ミキに会えると思うとワクワクするな」
「俺も電車で伊織さんの事を考えてました。もう着いてるかな?とか、直ぐに会えるかな?とか……考えてるのも楽しかったです」
「そうか、同じ事考えてたんだな。それで展示会の場所は解るのか?」
「はい。歩いて15分程の場所です。行きましょう」
「んじゃあ、行こうぜ」
2人並んで展示会場に歩き始めた。
隣で普段通りの顔で話すが、何だか待合せした事も新鮮で良かったが、ミキの姿が綺麗でドキドキ…してる自分が居た。
会社では黒縁眼鏡に目元を隠す位まで下ろし、無造作な髪も今日は長めの前髪もサイドに流し全体的に毛先を遊ばせた栗色の髪は良く似合ってるし、綺麗で整った顔にいつも隠してる目も漆黒の中に青味がかった大きめの目も露わになって良い。
その目で見つめられると、ドキドキ…するんだよなぁ
今日の服装も展示会と言う事もあり、スマ-トカジュアルな感じだ。
黒のテ-ラ-ジャケットに白のニット、黒のスキニ-パンツでやはり黒のチェダーコ-トを合わせモノト-ンカラ-で統一され大人っぽい。
俺はネイビーテ-ラ-ジャケットに白のタ-トルネック.黒のチノパン.黒のスタンダードコ-トを羽織ってる。
俺も似たような感じだが……ミキが着るとお洒落感が出てる気がするから不思議だ。
良く似合ってる。
部屋に居る時には明るい色を好み、大きめのパ-カ-かトレ-ナ-そしてスウェットが多い、俺があげた向日葵のヘアピンかピンクの花が付いたヘアゴムで前髪は上げている姿も可愛いらしい。
どっちのミキも良いなぁ~。
「……てね。ん…伊織さん?聞いてます?」
ヤベぇ~、ミキの姿に見惚れて聞いて無かった。
「ああ、聞いてる.聞いてる。それで?」
「だから、展示会は日本伝統文化の着物や浴衣がメインらしいですけど、それに付属して和の小物.手拭い.風呂敷なども展示してるらしいです。和の美しさを世界へって事らしいです。凄く楽しみですね」
あ~そう言う事か。
「そうだな。仕事柄、勉強にもなるしな」
「はい」
久し振りの外での待合せにドキドキし話しながら歩くと、目的地の展示会場が見えて来た。
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