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第631話 番外編

「今日は、何鍋?」 「ん~と、白菜とネギと豚肉の鍋っす。味はポン酢でいいっすか?」 「良いな。さっぱりして、早く部屋で食べたい」 俺がそう言うと、嬉しそうに笑う。 仕事帰りの平日だったが、飯を一緒に食べようと昨日の夜にLineして約束してた。 仕事先から直帰の佐藤はス-パーに立ち寄り、俺のマンションの最寄り駅で待ち合わせてた。 付き合って3ヶ月が経とうとしてるが、会社での賑やかな佐藤と違う面が発見される度に驚き、また好きになる一方だ。 最近の佐藤は料理に目覚めたらしく、簡単な手料理を作ってくれたりする。 付き合いたての頃は、本人も言ってた通りって言うか.想像通り、本当に料理は全然出来なかった。 だから、外食や弁当が多かったが流石に金も掛かるしと思い、俺が簡単な料理を作って食べたりした。 まあ、野菜炒めとか焼きそばとかカレーや肉焼いたりだが。 男の料理なんて、そんなもんだろう。 最初はTV見たり雑誌みたりゲ-ムして待ってた佐藤も徐々に悪いと思ったのか?「手伝う」と言って包丁を持たせたが、おっかなびっくりで切るのも遅いし指を切ったりで捗らないし、怖くて包丁を持たせるのを止めた。 ある日また「手伝う」って言うから、皮位なら剥けるだろうとピュラ-でじゃが芋の皮を剥かせたら、器用なのか?不器用なのか?ピュラ-で指から血が滲んでた。 何をしたら、そうなるのか? 俺は佐藤の不器用さに呆れて、料理をさせる事は諦めた程だった。 傷だらけで絆創膏だらけの指が可哀想だったのもある 男同士だし、出来る方がやれば良いと俺は思ってたし気にもして無かったが、佐藤の方が気にしてたらしい 1ヵ月程経ち、佐藤から「今日は俺に夕飯作らせて!」と言われた時には「別に無理するな。簡単なものなら俺が作れるし、出来る方がすれば良いんだから」と思ってた事を話したが、佐藤は頑として「作る!」と言って聞かなかった。 「気が散るから近くで見てないで、TVでも見てて下さい!」 言われてソファでTV見る振りしながら、キッチンの方もチラチラ…見てた。 2時間も掛かった料理はカレーだった。 不揃いで不格好な野菜がゴロゴロ…でも、美味しかった。 佐藤が一生懸命に頑張って作ったのが解るカレーだ。 「ん~美味いな」 心配そうに見てた佐藤に話すとホッとしたように胸を撫で下ろし、にっこり笑った顔が可愛いかった。 「俺もやれば出来る子なんです!」 威張ってたのは笑えた。 褒めると直ぐに調子に乗る。 困った奴だと思いながらも、そんな佐藤が可愛かった 佐藤の努力が見えた料理だった。 それからはカレー以外にも挑戦するようになるが、失敗しながら時間も掛かったりもするが、徐々に食べられるまでになった。 まだ、男料理って感じだが、佐藤の密かな努力は俺も知ってる。 この3ヵ月で成長したな。 隣で笑って話す佐藤を見てそう思った。 「そうだ、なあ?この間のあれは断ったんだろ~な」 「はい?」 忘れてんのか? 「3日前に、合コン誘われてただろ?その場では断り切れなくて濁してたじゃね~か?断ったんだよな?」 「ああ、あれですか?断りました。その日は会議でいつ終わるか解んないって」 そうか。一応、断ったんだな。 一先ず良し!とするか。 「断るのは当たり前だ! ったく!そんな奴ら切れって言ってんだろ~が」 「……友達なんで」 「また、合コンの誘い来たら絶対に断れよ! 解ってるよな?」 「……はい。すみません」 「解れば良い! どうしてもって言うなら、また俺も行くからな」 「それは……勘弁です」 「まあ、友達思いなのは良い事だ。佐藤は優しいからな」 シュンとしてる佐藤の頭を撫で慰めた。 この顔に弱いんだよなぁ~。 普段は場を明るくし賑やかな佐藤がシュンとしてると……ギャップだな。 まあ、前に2回程どうしても断り切れずに、俺も合コンに行ったからな。 その時に佐藤の行動を逐一観察してたから本人も楽しめ無かっただろうし、2回めの時は俺も頭にきて、佐藤の前で女の子とイチャついてやったし……佐藤は相当落ち込んでたからな。 「もう合コンは行かない‼︎」って宣言してたし……大丈夫だろう。 でもなぁ~こいつ友達思いだし女の子には優しいし……強引に誘われると優柔不断だからなぁ~。 やっぱ目が離せない! そう思ってると佐藤は俯いてた顔を上げ 「良く言われます! 俺の魅力の1つなんですかねぇ?」 直ぐに調子乗る、困った奴だ。 「調子乗るな!」 「すみません」 俺も冗談で怒り、顔を見合わせ笑った。 やっぱ、こいつと居ると楽しい♪ そろそろ俺のマンションが見えて来た。 部屋に入ったらイチャイチャ出来るな♪ こいつイチャイチャも好きだし甘えるし、ベタにロマンチックなのが好きなんだよなぁ~。 俺はどっちかっつ~と、今までは恋人でも程良い距離感が良かったが、今は佐藤のペ-スにすっかり慣れ2人っきりなら、俺もイチャイチャが好きになった。 こいつイチャイチャすると、更に可愛くなるんだよなぁ~。 「あれ?田口さんのマンションの前に誰か居ますよ?こっち見てますけど?田口さんの元彼女(元カノ)だったりして~~」 そんなバカな冗談を言ってる佐藤の言葉に直ぐ近くのマンションを見た。 「………」 近づく俺達にあっちから声を掛けてきた。 「湊!」 その声を聞いて佐藤が驚き、俺の顔を見たのが解った。

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