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第634話 番外編

佐藤を玄関で見送り部屋に戻った。 「佐藤さん、帰ったの?何か、悪かったかしら」 「佐藤は空気読む奴だからな、自分が居たら朱音が話し辛いんじゃないかって言って帰った。あれで、結構気を使うタイプなんだ」 あいつのそう言う優しい所が好きだ……が、それは俺以外にも発揮される。 特に女の子には…な。 良い所でもあるが、付き合ってる身としては不満もある。 要は、八方美人なんだよなぁ。 話しは面白いし空気読むし、顔もアイドル顔でスタイルも良いしちょっとバカな所があるが、そこが可愛らしいと思わせる。 モテる要素だらけなんだよな。 チャラチャラして軽い感じだから半減してるが…な。 ったく、今日も朱音に気を使ったんだろうと直ぐに解った。 本当に女の子には優しい、困った奴だ。 「湊.湊ったら~、聞いてるの?」 佐藤の事を考えて、朱音の話しを聞いて無かった。 「何?」 「んもう、だから、結婚決まったのよ!」 「ああ、その事か。高木に聞いた。おめでとう。で、わざわざ報告しに来たのか?」 「え~高木さんったら、お喋りなんだから。報告しに来たわけじゃないわよ。ちょっと…愚痴って言うか話し聞いて欲しかったの」 「はあ?何で、俺が話し聞かなきゃなんねぇ~んだよ。何の話しか解んねぇ~けど、結婚決まったんだし、彼氏に聞いて貰えば良いだろ?」 今更、何だ~と思った。 「それが……結婚決まって嬉しかったんだけど……何か、式場とか案内状の話しやら誰を呼ぶとか思い描いてた結婚とは違って、現実は大変だと思って……それに、まだ何も決まってないのに、彼のお母さんが口を挟んできたりとかね。彼には言えないし、そう言うのがストレスで体調が良くないのよ」 「彼氏にちゃんと言えよ。愚痴は俺じゃなく友達か.会社の子にでも言えば良いだろ~が」 マリッジブルーか? 夢見てた結婚が思ってたのと違ってとか言ってるけど要は自分の思い通りにならないからだろ。 そんなの彼氏と話し合えば済む事だ。 「会社の子はダメ。だって、彼氏も同じ会社だもん。友達には愚痴りたくないし……湊なら、聞いてくれるしアドバイスもくれると思って」 「そもそも朱音は結婚に夢を見過ぎなんだよ。ま、これを機に現実を知る事だな。アドバイスは彼氏と話し合え! お母さんの事は彼氏からさり気なく言って貰えよ。ストレスに感じるならな」 「でも…彼からお母さんに言って貰ったとして…機嫌悪くならないかしら……後々、嫁姑問題になると嫌だし…」 「そんなのは、お前の態度次第だろ! 上手く立ち回れよ!」 「え~…どうやって?」 「そんなの知るか! 俺の母親じゃないし彼氏に聞け!」 「湊~、冷た~い。付き合ってる時は優しかったのに、別れると冷たくなるのね」 はあ! 何言ってんだ! 「当たり前だろ! 俺は付き合ってる相手には浮気もしないし優しくする。他の奴と同等にするわけないだろうが、特別なの! だから、別れたら他の奴と一緒の扱い」 「湊と付き合ってる時には、特別扱いされてると思わなかった。それが当たり前だと思ってた。こうなると解るわ。どんなに優しく誠実だったか」 今更、何言ってるんだ? 相当ストレス溜まってるのか? 「そんな事、今更言ってもどうしようもねぇ~だろ」 「そうね。今更ね。……私…湊と結婚するんだと思ってた……でも湊…全然その気配ないし不安になってたの」 そんな事、今更言われても困る。 「俺は結婚はまだしたくなかった。仕事が今凄ぇ~遣り甲斐感じてるし。俺と結婚するつもりだったのに、今の彼氏と結婚しようと決めたのは朱音だろ。結婚しても良いと思ったからだろ。これから先も一緒に居られると思ったから決めたんだろ」 「そうね。湊がその気無いのが薄々解って、私は結婚したかったし前々からアプローチはされてたのよ。でも、付き合ってる人が居るって断ってた。それでも彼はめげずに積極的にアプローチしてきて、そのうち私もデ-ト位ならって…優しいし積極的で何回かデ-トして徐々に、この人なら結婚しても良いかなって思い始めて…湊に ‘前々から結婚前提で付き合って欲しいって言われてる人が居る’ って言ったのは……最後の掛けだったの。湊が止めてくれて、結婚に前向きになってくれたらって。私の優柔不断な所が……ふらふらしてる私の事解ってた?」 別れた時、そう言う気持ちだったのは初めて聞いた。 「朱音には悪いが……正直に話すと朱音が結婚したがってたのは解ってた。けど俺は家庭を気にして仕事に集中出来ないと思ってたし…朱音が段々と結婚したいアピールで煩く言ったり、俺の事を構うのも正直ウザく感じてた。このまま結婚したら、仕事早く終わらせて帰って来て~とか言いそうだと思った。そう言う風に感じ始めたら段々と、気持ちが離れていってた。だから……結婚したい人が出来たなら、そっちの方が良いんじゃないかって」 あの時の気持ちを正直に話した。 「そう。そうだったんだ。湊の世話を焼く事が、湊も楽になって結婚を意識してくれると思ってたのが裏目に出ちゃったのね。今日、話せて良かったわ。何だかスッキリした」 話しが変わってしまったが、朱音がスッキリしたなら良い。 「なら、今の彼氏と結婚の事良く話し合えよ。ストレスで弱って、俺の事思い出したのかも知れないが、俺は何も言えない」 「そうね。ごめんね。湊なら聞いてくれるって甘えが出ちゃった。ごめん。帰るね」 「遅くなったから、駅まで送る」 「ありがとう。そう言う所優しいよね」 「まあな」 朱音が帰る用意をして、俺も上着と鍵を持って部屋を出た。 駅まではさっきまでの雰囲気はなく、朱音も明るく振る舞ってた。 俺もそれに合わせ話しをしてた。 もう、朱音とも会う事は無いと思ってた。 だから、最後位は明るく別れたかった。

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