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第636話 番外編

朱音さんと会ってから1週間程過ぎた。 俺も田口さんも朱音さんの事はあれで終わった感じになってた。 だから、その事については蒸し返す事も無かった。 いつもの俺達に戻り、会社では先輩x後輩と言う関係で馬鹿な事を話す俺を揶揄い説教するって言うお決まりのパタ-ンで、プライベートでは田口さんの部屋ではイチャイチャし恋人の時間を過ごしてた。 その日は、田口さんは午後から外回りで直帰する予定で、俺は夕方に会社に戻りデスクワ-クをして過ごし帰り際に香坂と少し話しをしてから会社を先に出た。 会社から少し歩いた所で「佐藤さん?」俺の名前を呼ぶ声にキョロキョロ辺りを見回した。 少し離れた歩道で、こっちを見てる朱音さんの姿があった。 えっ! 何で、ここに? 突然の事で驚いたが、朱音さんの側に歩いて行った。 会社帰りなのか? 可愛いらしいファ-付きのベージュのコ-トに黒のフレア-スカ-トが良く似合ってた。 可愛い~な。 女の子らしいと思った。 「どうしたんですか?」 「この間はありがと。楽しかったわ。この時間なら湊も帰るかなって。1時間待っても出て来なかったら帰ろうと思ってたの」 「田口さんは出先が遠い所ですから、そのまま直帰ですよ。何か、用があったんですか?」 「ううん。用って言うわけじゃないけど……ご飯誘おうと思って。湊ったら、スマホから私の連絡先を削除しちゃったから連絡出来なくって。ここで待ってたのそっか~、湊、直帰か~。じゃあ、ここに居ても仕方無いわね」 「まあ、そうですね」 俺の事をチラッと見て口を開いた。 「折角来たから、佐藤君、一緒にご飯食べて帰らない?お願い、付き合って」 何で、俺? 手を合わせて可愛くお願いされ断り辛かった。 「近くのファミレスでも良いですか?」 人がたくさん居て明るい所が良いと思って店を決めた 「ファミレスで良いわ。良かった~、ここまで来て1人で帰るの寂しいと思ったから。じゃあ、行きましょう」 朱音さんが俺の隣を歩いてるのが不思議だった。 ファミレスで注文の際に、余り体調が良く無いと言う朱音さんはリゾット、そして俺はバンバ-グセットにし、2人共ドリンクバーを頼み食事していた。 「この間はごめんね。気を遣わせちゃって」 「良いんです。気にしないで下さい」 「佐藤さんと湊って仲が良いのね。鍋とか2人でする位なんだもん」 男2人で鍋って変かなぁ~。 別に、変じゃないよな。 「俺と田口さんが帰る方向が一緒なんで、帰りが一緒の時とか夕飯食べて帰ったりするんですよ。あの時は寒くなったから鍋も良いなって話しになって。1人だと鍋ってなかなか出来ないから。仲が良いか?は、どう何だろう?会社では、いつもバカにされて揶揄われてます。でも、面倒見が良くって頼りになる先輩です」 嘘は言って無い。 「そうなの。やっぱ独身だと食事面がね。湊って口では冷たく言ったりするけど、きちんと話しは聞いてくれるし頼りになるのよね」 朱音さんに言われなくっても解ってる。 ハンバ-グを口に入れて誤魔化した。 オレンジジュースを飲み一息ついて朱音さんが口を開いた。 「佐藤さんに聞くけど……湊って、本当に彼女出来たの?」 「なぜ、そう思うんですか?この間、田口さんが付き合ってる人が居るって言ってたと思うけど」 「……だって、部屋も私と付き合ってる時と余り変わって無かったし、冷蔵庫も余り食材入って無かったから……。本当は居ないのかな?って……もしかして付き合いたてで部屋には呼んで無いのかしら。佐藤さん何か聞いてる?」 何で、田口さんの事ばっかり聞くんだ? 結婚決まってるんじゃ…。 「付き合ってる人は居るとは聞いてます。余り詳しくは聞いてません。男同士だと恋愛の事って、そんなに話しませんから。たぶん付き合ってそんなに経って無いと思いますよ」 「やっぱりね。そうだと思ったわ」 納得した顔をして、リゾットをゆっくり口にした。 「あのぉ~、朱音さんは結婚決まったって聞きましたけど……何で、田口さんの事聞くんですか?あのぉ~気になるとか?」 どうしても聞きたかった。 「ん~、自分でも解らないの。私、結婚願望強い方で早く子供も欲しいし……正直に言うと、ずっと湊と結婚するんだと思ってたの。でも、湊は全然そんな感じじゃないし…友達はどんどん結婚してくし…ちょっと焦ってたのね。年齢も適齢期で、このまま湊が結婚するって言うまで待てなかった。実はこの間……ちょっと結婚の事で色々あってストレスになって、誰にも話せなかったから湊に愚痴聞いて貰ったんだ。その時に……なぜ、湊の事待てなかったのかなぁ~って、ちょっと後悔しちゃって。後1~2年待てば、湊と結婚してたのかなぁ~って。今更だけどね、ちょっとだけ考えちゃった~」 朱音さんは ‘今更だけどね'って言ったけど…この間会って、田口さんの良さを再認識したんじゃないのか? まだ、結婚が決まったばかりで実際には結婚してるわけじゃない。 まだ破棄もできる。 ……どう言うつもり?

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