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第637話 番外編

聞きたく無いけど、聞かないといけないと思った。 今、聞かないと……ずっと気になる。 「朱音さん……田口さんの事……まだ、好きなんですか?」 「ん~どうかな?嫌いで別れたわけじゃないから……自分でも解らないわ……結婚式とか披露宴の話が進むに連れて、彼のお母さんが口を出してきて……それがストレスになって…私は何も言えないし、彼にお母さんにそれとなく言って欲しかったの。そんな時に湊なら ‘2人の事だから2人で決めるから’ って、言ってくれるんじゃないかなぁ~とか思っちゃって」 ……未練? 「彼に、不満でも?」 「彼は優しく行動力のある人で良い人よ。でも……お母さんに甘いって言うのかなぁ~決してマザコンではないんだけど」 「男は皆んな母親には甘いですよ。彼だけじゃないと思います。彼と良く話し合った方が……俺が言うのもおかしいですけど」 「湊にも言われたわ。‘俺に話しても何も言えない。彼氏と良く話し合え’って。そうした方が良いとは思ってるの。彼からお母さんにそれとなく言って貰うようにした方が良いって……でも、それでお母さんのご機嫌が悪くなったらって考えると……」 田口さんから電話で聞いてた話しが朱音さんからも出て、田口さんが正直に話してくれた事が解った。 結婚って、大変だな。 田口さんも言ってたけど2人だけの問題じゃないんだな。 「そんなに大変なら……結婚やめるって言う事は考えないの?」 返事を聞くのをドキドキ…して待ってた。 「周りの友達にも言ってるし同じ会社だから結婚の事は知ってる人も多いの……今更、出来ない。それに彼自体は好きなの」 彼が好きって聞いてホッとした。 「それなら良く話し合った方が良いですよ」 「そうね。ごめんね、ご飯だけのつもりが話し聞いて貰う事になっちゃって」 「別に、話し聞くだけなら大した事無いです」 「佐藤さんって思ったよりちゃんとしてるのね」 「思ったよりって?どう言う事?」 戯けて明るく話すと朱音さんも笑いながら 「見た目が軽そうって言うか……ごめんね。でも、優しいし明るいから湊が可愛がるのも解るわ」 「会社ではバカにされてますけどね」 「可愛い~から構いたくなるのよ~。湊って素直じゃないから」 チクッ! 田口さんの事を良く解ってるような言い方だった。 仕方無いよな、元彼女だもんな。 俺と朱音さんの共通の話題は田口さんだから、自然と田口さんの話しをする事になった。 俺は会社での田口さんの事を話し、朱音さんは付き合ってた時の田口さんの話しをした。 朱音さんが懐かしむように思い出話しを楽しそうに話すのを胸を痛めながら聞いていた。 ファミレスには2時間近く居た。 それから駅まで一緒に向かい、そこで別れた。 帰り道の電車の中で、何で朱音さんと飯食べなきゃならなかったのか?と疑問が浮かんだ。 田口さんの事を会社前で待ってた朱音さん。 飯に誘われて断ったら……田口さんのマンションに行くんじゃないか?って、そんな事を瞬時に思った。 会わせたく無かった。 ヤベ~な。 俺、独占力向き出しだったかも……。 はあ~、疲れた。 朱音さんの話しの中では……田口さんへの気持ちが良く解らなかった。 未練がありそうな感じもあるし……でも、最後には彼の事が好きだってはっきり聞いた。 ちょっとホッとしたな。 俺も彼と良く話し合った方が良いって言ったし、田口さんからも言われてたようだから、もう会う事もないよな。 そうして欲しいのが本音だ。 2人には会って欲しく無い。 俺達の間に波風を立てて欲しく無い。 あ~疲れた。 家に帰ったらサッサと風呂に入って寝よう。 今日、朱音さんと会った事は田口さんには言わないでおこう。 もう会う事もないんだから。

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