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第639話 番外編

まだ、会社に居るかなぁ~。 居るならキャンセルしてたが、あいつが言ってたステ-キでも食べに行こうかと思い立った。 会社を退社し、近くの喫茶店で待たせてた朱音と1時間程話し宥め励まして、俺は会社に戻って来た。 思いの外、早く終わった。 会った時に泣き出した朱音を見て、長くなるかも…と思い、佐藤との約束をキャンセルしたが、朱音もストレスで体調が良くないと言い散々愚痴や話しをして帰って行った。 俺の会社にまで来る位だし会った時には泣き出した程で、相当参ってるのか?と思ったが、何だったんだ? 「この間も言ったが、彼氏と話し合わないといつまで経ってもストレスなくならないぞ! それに俺には関係無い話しだから俺じゃなく彼氏に話せよ。それとも話し聞いてくれるなら誰でも良いのか?大事な話を彼氏に言わないのは彼氏も可哀想だと思う。もし、彼氏が俺の所に来てるのを知ったら悲しむぞ。もう俺の所に来ない方が良い! 結婚話もどうなるか解んねえ~ぞ。それでも良いのか?」 常識的に俺は間違ってないし、今の俺には佐藤が居る いつまでも元彼女に会ってるのも、あいつも気分は良くないと思って、最後の最後にはっきりと言った。 どう思ったか?は解らないが暫く黙り込んで「ごめんなさい。今日は体調良くないから、もう帰るわ」と言って朱音は帰って行った。 俺が話しが心に響いてくれれば良いが……。 そんな事を考えエレベ-タ-を降り課に戻ると、香坂がまだ仕事をして居たが佐藤の姿が見当たらない。 「あれ?田口さん、帰ったんじゃなかった?」 「ああ、ちょっと知合いとそこの喫茶店で話してて、帰ろうと思ったが忘れ物したのに気が付いてな」 「そうなんですか?」 「課長はまだ部長との打合せ終わってないのか?」 「まだ、戻って来てません」 「そうか。佐藤は?」 さり気なく香坂に聞いてみた。 「佐藤さんなら帰りましたよ。友達から電話合って飲みに行くみたいです」 飲みに?香坂はこう言ってるが……。 「どうせ合コンの誘いだろ?」 鎌をかけてみた、素直な香坂なら嘘は言えないはずだ 「佐藤さん、何度も断ってたみたいですけど、しつこくされて結局断り切れなくって ‘今回だけ‘って言ってました。自分も何度も頼んだ事あるからって、佐藤さんもお人好しの所があるから」 やっぱりな、予感的中だ! 「ふ~ん、大変だな。で、どこに行くって?」 忘れ物を探す振りして引き出しをゴソゴソしながら、飽くまでも世間話をする感じで聞いた。 「えっと…確か。麻布十番の…フォル何とかって言ってましたけど」 「フォルトゥーナ?」 「……あっそうそう! そんな店名だった」 「あそこかぁ~。へぇ~」 確か、イタリア料理の店で半個室もある洒落た店だった。 「田口さん、行った事あるんですか?」 「ああ、前に1度な。だいぶ前だが、佐藤に誘われて合コンのメンツ足りないって言われてな」 「そうなんですか?俺の時は洋風居酒屋とかでしたよ相手の女の子で場所変えるんですかね?マメですよね前は合コン大好きでしたからね。そう言えば、最近は合コン.合コンって言わなくなりましたよね?」 「そうだな。少しは大人になったんじゃねぇ~」 香坂と話しながらデスクの引き出しをゴソゴソ…探す振りをした。 「あった.あった。香坂、まだ仕事?」 探し物が見つかった振りをし、鞄に仕舞う振りをした 「もう少しだけします」 「そうか。程々にな。じゃあ、お先に」 「はい、お疲れ様でした」 香坂に挨拶してエレベーターに向かうと、課長とばったり会った。 「お疲れ様です」 「おう! 田口、帰りか?お疲れさん」 「お先に、失礼します」 エレベーターに乗り会社を出た。 その足で麻布十番へ向かった。 電車の車窓から外を眺め、あのヤロ-! 俺の目を盗んで! ちょっと目を離すとこれだ!ったく! 佐藤の性格からして、しつこくされて断り切れなかったのも解るが、そこは頑として断って欲しかった。 それでも ‘何度も断ってました’ ’今回だけ' と言ってたと、香坂が話してた事にまだ救われた。 断る気持ちはあったって事だな。 取り敢えず、とっ捕まえねぇ~と! 会社出た時より電車の中で少しは冷静になれた。 1度来た事もあり、何となくは場所が解ってたが、一応、店名をスマホで検索して店に辿り着いた。 ここだな、よし! 「いらっしゃいませ。何名様ですか?」 「先に、連れが来てるはずだが、探しても良い?」 「はい、どうぞ」 店内のテ-ブル席にはカップルや友達同士.仲間と来てる人が見えた。 奥の半個室が何部屋かあったはず、そこだよな。 奥には通路の両脇に4部屋程の半個室が並び、その内の1部屋からひときわ賑やかな声がする部屋に向かい少し離れて所から様子を伺うと、男女8人で入り乱れ座ってた。 やはり、居た! 佐藤の両隣に綺麗系と派手系の女が座って、派手な女が体を寄せ佐藤に顔を近づけ耳元で囁いてた。 あのヤロ~! デレデレ…してんじゃねぇ~よ‼︎ 俺はその場を去り、さっきの店員を呼び「実は、あそこで飲んでるグループの奴と会社が一緒なんだ。書類を渡しに来たが……楽しそうな所を水を差すのも悪いんで、あそこに居る佐藤って言うんだが、上手く言って呼び出してくれないか?」 適当に誤魔化し、最もらしく店員に言い佐藤を呼び出して貰う。 「そう言う事でしたら、少々お待ち下さい」 店員は俺の話を信じ、佐藤達の居る半個室に行き食べ終えた食器を片付ける振りをし、佐藤に小声で話し掛けた。 佐藤が怪訝な顔をして半個室から出て来た。 辺りを見回し、俺の顔を見て目をまん丸くし驚いた顔をした。 こんな時だが、その顔も可愛い~なと思いながらも、俺はわざと佐藤を覚めた目で見た。

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