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第645話 番外編
佐藤の部屋を出発して高速に乗ってSAに寄り、かれこれ3時間程で目的地の表示版が出てきた。
「高速、下りるぞ」
「あっ、はい! 軽井沢?軽井沢、行くんですか♪」
表示版を見て目的地が解ったらしい。
「ああ、そうだ。夏の軽井沢は行った事があるが、冬の軽井沢も1度行ってみたかったんだ」
「俺も大学生の頃はサークルとか友達とかで何度か来た事あるけど、冬は初めてだ」
「翔は何のサークル入ってたんだ?」
「テニスサークルです。遊びがメインですけどね」
「翔らしいな」
「湊は?」
「俺?俺は大学生の時はサークル入らずにバイトばっか」
「何のバイト?」
「居酒屋でしてた。繁忙期には引越し屋もやったりしたなぁ~」
「お金貯めて何に使ったの?」
「親の仕送りはアパート代や公共料金代は出してくれたけど、生活費とか遊び代とか足りない分とかバイトで補った。冬とかはスキ-とかスノボ-に行ったり旅行代の為に貯めてたなぁ~」
「湊もスノボ-するんだ~。今まで聞いた事無かったから知らなかった」
「ここ数年は行ってないからなぁ~」
「じゃあ今度、近場のスキ-場に行ってスノボ-しようよ」
「そうするか?翔、怪我するなよ?」
「しません‼︎ 俺、結構運動神経は良い方だし~」
「俺の方が心配だな。何年もやってないからな」
「俺が教えますよ。ビシバシ…とね」
「……日頃の恨みが篭ってんじゃ……やっぱ止めた~」
「え~~! 嘘.嘘です~。優し~く教えますから~行きましょうよ~」
「考えておく」
「え~~」
残念そうな顔をする佐藤を見て、1月末か2月中には1度行こうと思ったが言わなかった。
日にちが経つと諦めて忘れてた頃に誘ってやれば……こいつ、すっげぇ~大喜びするだろうし、その姿見るのも嬉しいからな。
こいつには飴とムチの使い分けしないと、直ぐに調子に乗るからなぁ~。
軽井沢で定番スポットである旧軽井沢銀座通りに寄る事にした。
駐車場に車を置き歩いて見て回る。
老舗の店からTVでも紹介された人気の店が並び、食べ歩きにも良さそうだった。
俺達は美味しそうな揚げ物を1つずつ買い食べ歩きをし、お土産屋を見たりした。
やはり軽井沢に来たらパンとジャムを買おうと言う事になり、人気店に入りパンを物色した。
どれも美味そうで目移りする。
「湊、これ美味しいそう。あっ、やっぱこっち?あ~迷う~」
「俺は石窯パンとフランスパンだな。ジャムとかバターに合うし、パン本来の美味しさが解る」
「そうだね! うん、そうしよう。じゃあ、バターとこの苺がゴロゴロ入った苺ジャムとハニ-ミルクジャムが良い♪」
「解った。そうしよう」
石窯パン1つ.フランスパン1つ、牧場バター.苺ジャム.ハニ-ミルクジャムを買い店を出た。
「軽く、飯でも食べるか?」
「良いねぇ~♪」
洋食屋.カフェ.イタリアン.中華と色々見たが、俺達は蕎麦屋で軽く食べた。
佐藤は後でパンを食べるつもりだと思ってるようで「少し、お腹空かせておくぅ~」と言って蕎麦を啜ってた。
蕎麦屋を出てまた見て歩き旧軽井沢商店街を抜けて直ぐの場所に『軽井沢ショ-記念礼拝堂』が見えた。
近くまで行き森の中に静かに佇む教会。
軽井沢で初めて建てられた教会だけあって、古さと趣きが感じられた。
「静かですね」
「ああ、さっきまでの商店街とは違うな。中にも入れるみたいだ」
何だか神聖な場所って感じで、俺達も静かに入った。
外観からも想像がつくが中も小さなホ-ルだった。
長椅子に座り、少し一休みする事にした。
外は天気が良いがやはり寒く、ここに居ると窓から暖かな木漏れ日が入って明るさと暖かさを感じた。
「小さいけど静かで森の中にあるのが、ロマンチックですね」
「そうだな。外の世界とは違うな」
佐藤の手を握り、2人で何をするでもなく暖かな光を浴び暫しの休息を取った。
それから俺達は純西洋風ホテルで国の重要文化財にも指定されてる旧三笠ホテルまで足を延ばした。
エレガントな西洋建築美と今は雪が少しある木々とのコントラストで、ホテル一体が優雅な雰囲気に包まれてた。
俺達は外観だけ見て歩きレトロだけど斬新な建物に感心した。
「レトロだけど古さは感じさせませんね。逆に、良い雰囲気♪」
「そうだな。ここは『軽井沢の鹿鳴館』って呼ばれてるらしい。多くの著名人にも愛されてたらしい。明治時代には、ここで男女が着飾ってダンスパーティ-とかしてたのかもな」
「出会いの場でもあったのか~」
「お前が言うと軽い! 何か、優雅さと品が建物からも感じるとか言えないわけ?」
「そんなの俺に求めても無理っす!」
「……そうだった。お前に、そんなの求めた俺がバカだった」
「そこまで言いますぅ~?」
佐藤の事は放っとき、夏は新緑の木々で秋は紅葉の季節も、また良いんだろうな~と思って見てた。
それから俺達は旧軽井沢銀座通りに戻り、駐車場に行き車に乗った。
「あ~楽しかった~♪」
「夏程じゃあないだろうけど割と人居たよな。おっと、パンとジャムとか後ろ置いとくな」
「はい。で、これからどうします?」
「山の方に行って『白糸の滝』を見に行こうと思ってる」
「マイナスイオン♪」
「そうだな。都会の穢れた心を浄化されろ!」
「え~~! 一緒に心を浄化しようって言うんじゃなく、俺だけ~~って事⁇」
「そっ! お前、雑念多いからな!」
「酷いよぉ~」
はははは…
「さて、出発するぞ」
「へ~い」
佐藤は拗ねて返事をしてた。
こいつと居ると楽しくて可愛い~から、ついつい揶揄ってしまう。
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