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第646話 番外編

山道を登り緑豊かな自然が広がってくる。 時間も丁度良いな。 「着いたぞ」 車を置き『白糸の滝』まで歩く。 「足元、気を付けろよ。滑りやすい」 「は~い♪やっぱ、山の方は寒いですね」 「そうだな」 時間的にも17時になる。 日中の天候の良さで寒い中にも暖かな光があったが、今は太陽も落ち夕暮れ時で、これからどんどん寒くなる。 山道を歩いて行くと水飛沫の音が聞こえ、そこだけ明るい。 あそこだな。 明るさのある場所を目指し歩き広い場所に着くと、やはり観光客が数組居て写真を撮ったり滝を眺めて居た 冬でも浅野山の伏流水の為、氷点下であっても凍らない白糸の滝は高さ3m.幅70mにもなる迫力ある滝を目の前にしてた。 凄いな! やはり『白糸の滝』って言う位だな。 「凄い‼︎ 綺麗だ! 滝をみるだけなのか?と思ってたら……凄いロマンチックで幻想的だ~」 隣で、佐藤が感激し目を輝かせてた。 こいつ案外ロマンチックな奴だからな、絶対に喜ぶと思った。 寒いが連れて来て良かった! 白糸の滝をスクリーンにし、青色でライトアップされ自然の木や光る動物のイルミネ-ションを施し、水.雪.光を調和した幻想的で癒しの世界が広がっていた。 「そうだな」 「うん♪ 凄い、綺麗だ」 暫く2人で眺め、他の観光客と同様に俺達も思い出に写真を撮った。 ずっと見ていたかったが、流石に寒さを感じた。 「寒くなったな。帰るか?」 「うん」 佐藤は最後にもう一度眺めてから、俺の隣に並び歩き始めた。 車に乗りエアコンを点け少し暖まってから出発した。 佐藤は『白糸の滝』に感激し、そればかりを熱心に話す。 俺は佐藤が楽しそうに話すのを、車を運転しながら聞いて暗い夜道を走らせた。 『白糸の滝』から20分程走らせ、車を駐車場に置いた 「湊、ここは?帰るんじゃ」 「まあ、良いから、着いて来いよ」 「???」 俺が車から下りると佐藤も下り、俺が歩き出すと佐藤はキョロキョロ…しながら着いて来た。 1棟の大きなログハウス風建物に入る。 「レストラン?」 小声で言ってたが、気付かない振りして受付カウンターに向かう。 ここは、受付(フロント)と奥にはレストランになってる棟だ。 「予約してた田口ですが」 「はい。少々、お待ち下さい」 物珍しい感じでレストランを覗き見てキョロキョロしてる佐藤には構わず受付を済ませた。 「鍵と19時〜こちらでお食事になりますが20時までにはお越し下さい。その際に、こちらのカ-ドとお車の鍵をご持参下さいませ」 「解りました」 鍵と食事カ-ドを受け取り佐藤を呼ぶ。 「お~い! 行くぞ」 「は~い」 そこを出て車に1度戻り、旧軽井沢銀座通りで買ったパン.ジャム.バターと荷物を持ち、渡された鍵の建物まで歩く。 大小様々なログハウスコテ-ジが5棟程離れて建つ、その奥の方にも何棟か建っているようだ。 俺は佐藤と泊まる為に、ログハウスコテ-ジの2~3人用を予約してた。 俺は比較的近くのログハウスの前で止まり鍵を出し中に入る。 「あのぉ~、湊?」 「へぇ~思ったより広いな」 荷物を置きコ-トを脱ぎ、リビングに行きエアコンを点けた。 「おっ! 電気だけど、暖炉がある♪点けよ~と」 暖炉を点けると直ぐに赤く灯る。 「雰囲気良いな♪」 佐藤に話し掛けると入口で佇んで居た。 「何してんの?こっち来いよ。暖まろうぜ」 キョロキョロと中を見て暖炉の側に来た。 「湊、良く解んないけど……」 「ああ、言って無かったからな。今日はここに泊まる」 俺がそう話すと驚いた顔をし、それから直ぐに破顔した。 「え~何.何~! 聞いて無いよ~。俺、泊まる用意して無いよ~」 「驚かそうと思ってな。下着やら靴下は新品なの持って来たし、飲み物は冷蔵庫にあるのは料金に含まれてるから飲んで良いしアメニティ-は揃ってるしで、手ぶらでOKなんだ」 「そうなんだ、それ聞いて安心した。けど、どうしたの?泊まりなんて、ドライブだけでも嬉しかったけど」 「ああ、クリスマスを遅くなったけど、改めて2人で過ごそうと思ってな。今年のクリスマスは平日だっただろ?俺は当日千葉工場に行かなきゃなんなかったしな。中途半端に過ごすより、週末にクリスマスを過ごす方が良いと思って計画した。2人で過ごす初めてのクリスマスだからな」 今日のドライブから始まったクリスマスデ-トは全て前以て計画立てたと聞き、佐藤は目に涙を浮かべ始めた。 「おい.おい! 何で泣くんだ?ここは喜ぶ所だろ?」 「だってぇ~……俺、諦めてたから。クリスマスの日は湊は何のアクションも無かったし…男同士って、こんな感じなのかなぁ~って。俺だけクリスマスイベント楽しみにしてるのも……と思ってた。だから……凄~く嬉しい‼︎」 涙を手で擦り、最後には泣き笑いで嬉しそうな顔を見せた。 「ごめんな。お前って、イベント事や騒ぐの好きなのは知ってるけど。平日に食事だけしてってのも味気無いと思ってたし……ちょっとだけ、サプライズ的に驚かそうと思った。不安にさせたなら、ごめんな」 頭を横に振り笑顔を見せた。 「俺.俺……イベント事も好きだけど……サプライズも大好き~。湊、ありがとう」 そう言って、俺に抱きついてきた体を俺も抱きしめた 「そうか、良かった」 「うん♪うん♪」 佐藤の嬉しそうな顔を見れて俺もホッとし、運転の疲れと部屋の暖かさで眠くなってきた。 「さっきの棟がレストランだ。夕飯までに、あと1時間位あるから、少し休もう」 俺は佐藤を抱きしめまま横になり、暖炉の前のラグに横たわった。 佐藤も俺の胸に嬉しそうに埋め抱き着く。 そのまま目を閉じた。 これから俺達のクリスマスは始まったばかりだ。 長くなる夜に向けて、佐藤を抱きしめ暫しの休息をとった。

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