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第661話

結構、大きめな旅館を祐一は予約していた。 ロビーも広く本館と離れが数部屋あり、俺達はもちろん離れを予約しフロントで受付を済ました祐一が鍵を2つ手に持ち、ロビーのソファで待ってた俺達の元に来た。 「渡り廊下で離れに行けるらしい。こっちだな」 館内マップを見ながら話す。 「仲居さんは?」 「面倒だから、断った。旅館なんて、どこも一緒だしマップ見れば大体は解るだろ」 「そうだな。早くゆっくりしてぇ~しな」 「マコ、ミキ。行くぞ」 「「は~い」」 ロビーの大きな窓から周りの景色を見てソファでキャッキャッ…楽しそうに話してた2人も祐一の言葉で動き出した。 祐一を先頭にぞろぞろと歩き、小さな絵画や花が飾ってる渡り廊下を歩き離れに着いた。 「伊織達の部屋の鍵だ。少し、ゆっくりしようぜ」 「そうだな。じゃあ、後でな」 「マコ~、後でね」 「うん」 独立した建物だが、祐一達とは隣同士だった。 まだ奥にも建物があるから何部屋か?ありそうだ。 鍵を開けガチャッと部屋に入り、小さな玄関で靴を脱ぎトイレと内風呂を確認し部屋に入った。 襖を開けると、8畳程の和室と6畳程の洋室にはベットが2つ、俗に言う和洋室だ。 8畳の和室からは露天風呂が見えた。 「ここから露天風呂に行けるんだな。後で、入ろうな」 「はい。気持ち良さそうですね」 「ああ。疲れただろ、少し休むか」 少し見ただけだが、囲いが高く開放感もありそうだと密かに確認した。 和室でお茶を飲み、観光してきた場所の話をしながら写真を見て寛ぐ。  30分程経つとミキがうとうとし始め、話し掛けても返事が危うい。 「少し寝ろよ。まだ夕飯には時間あるし、祐一達もゆっくりしてるだろうし」 「ん…でも…眠いような眠く無いような…」 そう言いながら欠伸が出ていた。 はしゃぎ過ぎて体は疲れてるんだろうが、気持ちは昂ってるって感じ…か。 そんな所にコンコン…とドアがノックされ、襖を開け玄関に行きドアを開けると、祐一が浴衣姿で立ってた 部屋に入れると、グルっと見回して 「俺達と作りは一緒だな」 「だろうな。で、何しに来た?」 「祐さん、マコは?」 「ああ、マコな。寝てる。で、暇だし、伊織、本館の大浴場行かねぇ~」 「良いのか?真琴君は?起きた時に祐一居なかったら」 「はしゃぎ過ぎて疲れが出たんだろ。直ぐには起きないって」 ミキもうとうと…してたしな。 「解った。ミキも少し寝てろ。俺は祐一と風呂に入って来るから」 羨ましいって顔をするミキだったが、素知らぬ振りして服を脱ぎ浴衣に着替えた。 「じゃあ、行って来るな。鍵、閉めてろよ」 「はい、行ってらっしゃ~い」 玄関で見送るミキの頭をポンポンし、祐一と部屋を出た。 渡り廊下から本館に行き、施設を少しだけ見て周る事にした。 売店.カラオケ.漫画室.マージャン室.ゲ-ム.卓球室とあった。 卓球室に行くと5台程の卓球台があり、2組程卓球してた。 「やっぱ、温泉には卓球だよな」 「風呂入る前にひと汗掻くか?」 「やろうぜ! 勝負だ!」 「明日の昼飯賭けようぜ!」 それから俺達は卓球で熱くなり、お互い負けたくない!と勝負は白熱した。 「おりゃ~~‼︎」 「へなちょこボ-ルが‼︎」 コンッ.コン.ッコンッ……ラリーが続く。 運動神経は程々良い祐一だが、それを発揮するにはやる気を出せばの話しだ。 今日は俺に対抗してやる気を出してる。 俺も負けじと元々良い運動神経を発揮した。 カツっ‼︎ 「へへ~! 俺の勝ちだな」 「今のは、この角に掠ったからノ-カウントな‼︎」 「それでも入ってるのに変わりねぇ~」 「こんな終わり方は男として、どうなんだ‼︎」 「解ったよ! 泣きの1回な‼︎ 素直に、お願いしますって言えねぇ~のか?ん、祐一」 「はい.はい‼︎ お願いしますよ」 ったく! 素直じゃねぇ~し意地っ張りなんだよなぁ~。 3回戦やって1勝ずつして、今は10対8で俺がマッチポイントだ、いやさっきのが決まってるから本来は俺の勝ちで2勝してるはずだ。 最後まで勝負を投げ出さないその姿勢は評価してやるが……最後は文句も言えないように綺麗に決めてやる‼︎ 「いくぞ!」 「おら! こい‼︎」 コンッ.コンッ.コンッ.コンッ……ラリーは続き、少し浮いた球をスマッシュした。 カツンッ‼︎ 「よっしゃ~~‼︎」 「くそぉ~、あと少しだったのに~~」 悔しがる祐一に俺は大喜びだ。 「じゃあ、明日の昼飯は宜しく‼︎」 「解ったよ‼︎」 「ヤベッ‼︎ 白熱し過ぎた~~‼︎」 「本当だ‼︎ 風呂行こうぜ‼︎」 卓球室を出てエレベーターで下り、大浴場に向かった 大浴場の内風呂は湯煙で温かく、大きな湯船は手足を思いっきり伸ばし疲れが取れるようだ。 祐一と一緒に温泉に浸かり話し始めた。 「卓球なんて何年振りだろうな。楽しかったな」 「そうだな。勝ち負けはともかく、やると白熱するな風呂の前に、気持ち良い汗掻いた」 「俺も。普段は運動不足だからな」 「お前は不規則な生活だからな。俺は週に3日位はマンションのジムで走ったりしてる。あとは、部屋で筋トレとかな」 「マンションのジムって、そんな時間あるのか?」 「朝早く起きた時とか、夜早めに帰ってきたときとかな」 「今も?ミキと同棲してもか?」 「ああ、週末にミキが家事してるときとかもな。今まで1人でお互い生活してたし、それぞれの生活スタイルが出来てるからな。お互い無理しないでいこうって話してる」 「それが1番だな。無理したり気を使ってると、その内疲れてくるからな。まあ、上手くやれよ」 「ああ」 それから体と髪を洗い露店風呂に行き、ゆっくり景色を見て湯に浸かりゆっくりしてしまった。 結局、卓球と大浴場で1時間30分も経っていた。 髪を乾かし着替え、部屋に戻る事にした。 「真琴君、起きてるんじゃないのか?」 「どうだろうな。あの熟睡振りだと、丁度良い頃かもな」 「そうか。夕飯って19時からか?」 あと1時間程だ。 卓球もしたし温泉にも入って腹が空いたし丁度良い時間だ。 「ああ、その頃部屋に誘いに行く」 「おう」 この後に、とんでもない事が待ってるとは思わず、少し俺も浮かれて居たかも知れない。

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