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第662話
祐さんが伊織さんを誘って大浴場に行って、少しウトウト…してた頃だった。
コンッコンッ…。
ん…伊織さん?
時計を見ると部屋を出て行ってから、まだ20分程しか経ってない。
混んでたのかな?
そう思ってドアを開けたら、部屋の前にはマコが浴衣を着て立って居た。
「あれ、マコ。寝てたんじゃないの?」
目を擦りながら子供みたいな仕草で、起きたばっかりだと解る。
「今、起きたら祐さんが居ないから、こっちかな?って」
「祐さんなら伊織さんと大浴場に行ったよ。まだ帰らないと思うから部屋に入ってよ」
「うん♪」
玄関から部屋に入ると、マコも部屋の中をキョロキョロ…見て「同じ間取りだね」と、祐さんと同じ事を話すから「祐さんも同じ事を言ってたよ」って話すと、嬉しそうな顔をした。
「ミキ、露天風呂入った?」
「ううん、まだ」
「じゃあ、入ろうよ! どうせ、大浴場はだめって言われてるし祐さん達だけ狡い! 僕達も露天風呂に入っても文句言わないよ」
何度も「入ろう♪.入ろう♪」と言うマコの言葉を聞きながらも ‘伊織さんが入る前に入っちゃって良いのかなぁ~’ と、少しだけ考えたけど、マコの残念そうな顔を見るのも……伊織さん達も大浴場行ってるし……。
「……そうだね。長風呂しなきゃ良いしね」
「うん♪ そうしよう♪」
俺がそう話すと喜んでくれた。
「行こう.行こう♪ 浴衣持って行きなよ~」
俺はまだ服を着たままだったから、浴衣を持って露天風呂に向かった。
先に浴衣を脱いで待ってたマコの隣で服を脱ぎ始めた
「久し振りだね。ミキと温泉なんて。早くぅ、入ろう♪」
「本当だね」
マコは待ち切れないって顔で世間話をして待ってる。
俺が全裸になると、さっきまで話しが止まらなかったマコが急に黙り、それから「ミ.ミキ! ……僕、先に入ってる」俺から目を逸らすようにし、スタスタ…歩き数m先の露天風呂にザボンっと入った。
「マコ、お行儀悪いよ」
俺も掛け湯をしてから露天風呂に入り、マコの隣で佇む。
「気持ち良い~ね♪」
「う.うん」
肩や腕にお湯を掛けながら、さっきまで元気だったマコが大人しくなったのが気になった。
「どうしたの?」
「……あのね、ちょっと恥ずかしくなって」
「何で?マコとは大学の時から旅行に行った時に、温泉一緒に入ってるじゃない?何で今更?」
チャポチャポ…お湯で遊びながら照れて話す。
「……だってぇ~、キスマ-クが……凄いよ」
「う.嘘~~! ……見た?」
すっかり忘れてた‼︎って言うか、消えそうになると直ぐに伊織さんが新しいキスマ-クを付けるから……いつも消える事がない。
俺はもうそれが普通になって麻痺して居た。
昨日はしつこくされたし……。
「忘れて‼︎ 見なかった事にして‼︎ お願い‼︎」
マコの前で手を合わせてお願いした。
マコは頭を縦に振り笑顔を見せた。
「うん、解った。誰にも言わないから。でも……成宮さんって、情熱的って言うか.独占欲強いって言うか、凄いね。ちょっと羨ましい…かな。それにミキの白い肌に赤紫のキスマ-クが散らばって…何だか綺麗だったよ」
そんな風にマコに言われ照れてしまう。
「羨ましいって……マコ、気付いてないの?マコの腰骨の所と裏腿の付根の所にキスマ-クあるよ」
さっき、マコが先にスタスタ…露天風呂に入りに歩いた後ろ姿を見た時に見えた。
マコは俺の話を聞いて驚いた顔をし「嘘.嘘だよ~。祐さんがそんな事する訳ないもん」と言うマコを湯船の中で立たせキスマ-クの箇所を指差して教えた。
マコからは見えないギリギリの所に、キスマ-クが付いてる。
「こことここ。あっ、ここにも」
指摘すると、マコはザブンッと湯船に入り水飛沫が飛ぶ。
恥ずかしそうにし、首まで浸かってた。
「……祐さん、そんな事しないと思ってたから……ミキの前で恥ずかしいけど…嬉しい‼︎」
可愛い~な。
「マコ。祐さんは伊織さんみたいに解り易い愛情表現しないけど…ちゃんと独占欲剥き出しで自己主張してるよ。口数少ないから解り難いけどね。でも、マコはそんな祐さんの愛情表現は解ってるんでしょ?逆に、俺は伊織さんみたいに口でも態度でも示してくれる愛情表現じゃないと解らないから、伊織さんの解り易い愛情の方が俺には合ってるし、それに救われてる部分も多いんだ」
「そうだね。僕、祐さんのそんな所が好きなんだ。口数少ないけど、僕の前では結構話すし優しいし…でもミキ達のラブラブ振りもちょっと羨ましかった。だから、こう言うちょっとした事でも凄く嬉しい♪ 控えめで解り難い所に付けるのも祐さんらしいよ」
「本当だね。マコの事を考えて、解り易い所には付けないけど、ちゃんと独占欲丸出しの所が祐さんらしいって言うか.祐さんの自己満足でしょ?」
「そう言う所も祐さんらしい♪」
お互い顔を見合わせて笑った。
同棲生活の話しや面白かった話しをしながら、20分程露天風呂を楽しんだ。
部屋で寛ぎながら久し振りのマコとの旅行で、学生の時の話しとかで盛り上がった。
マコも楽しそうに良く話す。
「ねぇ、2人遅くない?」
「そうだね。でも、そろそろ戻って来るんじゃない?」
「大浴場で羽伸ばしてんのかなぁ?良いよね~」
「仕方ないよ」
「大浴場に、ミキと一緒に入りたかった!」
「確かに、大きなお風呂は気持ち良さそう。でも、露天風呂に一緒に入ったんだし……ね! マコ」
「そうだね。たくさんお喋りもしたし! 久し振りに2人っきりで話せたしね」
「うん。俺も楽しかった」
「僕も」
「本当に、そろそろ伊織さん達戻って来るかもね。ビ-ルでも飲むかもしれないから、何か売店でおつまみ買ってくるね。マコ、待ってて」
「うん、解った」
財布を持って「じゃあ、行ってくるね」「行ってらっしゃ~い♪」マコの返事を聞いて、部屋を出て本館の売店へ向かった。
部屋に戻って来た時に、マコのちょっとした悪戯で、ちょっとした騒動になるとは思わずにいた。
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