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第664話

「……さ…ん」 背後で、蚊の鳴くような声で振り絞るような真琴君の声でハッと我に返り、頭に血が昇りカァ~となり俺はドタドタ…と畳に上り「何、してんだ‼︎ このヤロ-‼︎」と叫び、ミキに跨ってた祐一の肩を掴んで引き剥がした ドサッ‼︎ 祐一が床に倒れた所を今度は俺が馬乗りになり、浴衣の襟元を掴んで拳を振り上げると、ミキが慌てて俺の振り上げた腕にしがみついて止めた。 「伊織さん‼︎」 「止めるな、ミキ‼︎ このヤロ-、ミキに何した‼︎」 「はあ! マッサージしてただけだけど?」 「えっ!」 祐一の返事に一瞬間が抜けた俺の顔を見て ‘してやったり’ と、ニヤっと笑う祐一の顔を見て振り上げた拳を下ろした。 このヤロ-‼︎ 仕返ししやがったな‼︎ 「お前に責められる事は無いと思うけどな。殴りてぇ~のは、こっちの方だ!」 祐一の言葉に俺はその場で頭を下げて謝った。 「悪かった。さっきのは誤解なんだ。でも、俺が逆の立場ならやっぱ俺も腹が立つ。済まなかった」 部屋の入口でハラハラ…オロオロ…してた真琴君も俺の隣に座り頭を下げて「祐さん、ミキ、ごめんなさい! 僕の悪戯でこんな事になって、本当にごめん!」そう言って、こうなった経緯を説明した。 真琴君の涙目で必死に説明する姿に、祐一は取り敢えず納得したようだ。 「まあ、そんな事だろうと思ったけどな。でも、俺も腹が立って腹の虫が治らなかった。俺の気持ちが解ったか?伊織?」 たぶん俺の予想だと、俺達を見てショックで頭が回ってないミキに言葉巧みにマッサ-ジしてやると言って俺達が絶対に来ると解って仕返ししたんだろうな。 長い付き合いの祐一のやりそうな事だ。 こいつはそう言う所が昔からある。 でも、今回はこいつの言う通りだ。 祐一の気持ちが良く解った、ここは素直に謝る事にした。 「良く解った。本当に済まなかった。俺が真琴君をミキと思い込んだのも一因だ! 真琴君にも怖い思いさせた。ごめんな、真琴君」 「ううん。元々は僕の悪戯が原因なんだもん。僕が悪戯しようと思わなきゃこんな事にならなかったんだ。ごめんなさい」 真琴君はとうとう泣き出した。 そんな真琴君を祐一は引き寄せて胸に抱いた。 真琴を抱きしめ俺達に手でシッシッ…手を振り ’帰れ‘ と、目と手振りで表す。 俺はボー然となりゆきを見てたミキの肩を抱いて、祐一達の部屋を出た。 これから祐一達は仲直りするんだろう、俺達も仲直りしないとな。 部屋に戻った俺達は向かい合わせに座り、暫くどちらからも口を開かず沈黙だった。 俺は何から話せば良いか考えてた。  こうなった説明はさっきしたし、謝ったし……どうすれば良いんだ? ミキは俺と目を合わせようとしないし……困った。 怒ってるか? 頭の中で色々考えて結局謝る事にした。 「ミキ、悪かった‼︎ 真琴君の悪戯に気付かずにミキだと思い込んだ、本当に済まなかった」 ミキの顔色を見ながら話すと、ピクッと頬が引きつった。 「…………」 黙りか~。 怒ってるなと確信した。 こうなるとミキは長くなる。 はあ~どうするかな~! 取り敢えず謝り倒して、口を効いて貰うしかねぇ~な。 「怒ってるよな?俺の軽率な行動だった。本当に、済まなかった」 「…………」 伏し目がちにし目も合わせず口も効かないし……困った。 どうすりゃ~良いんだ?  「ミキ、何でも良いから口を効いて欲しい。俺を罵倒しても良いし文句を言っても良い」 必死な想いが伝わったのか?やっとミキがチラッと一瞬だけ俺を見た。 「………どうして…俺とマコを……間違えたの?」 「それは部屋が真っ暗で姿が見えなかったし、この部屋は俺とミキの部屋だろ?だから、居るならミキだと思い込んだ」 俺の話を聞いて、まだ納得して無いようだ。 「……部屋が暗いから誰か解らないのは…理解出来ます……けど…その後……マコを抱きしめた時……解りませんでしたか?……俺とマコでは背丈は全然違うし声だって…」 今ならミキの言う事も解るが、あの時は……思い込んでたから無理だった。 旅行って事で浮かれてたのかも……知らないな。 「ミキの言う通りだが……あの時は本当に解らなかった」 「俺は……マコだから…ううん.違う…知ってる人だから尚更嫌なんです。これが全然知らない人なら、まだ気持ちも整理出来ます。だって、これから何かある度に、伊織さんとマコの事を疑ってしまいそうで……」 「俺と真琴君がこの先何かある訳ないだろ‼︎ 真琴君は祐一の恋人だぞ‼︎ それに俺のタイプではない‼︎ 俺はミキ以外は目に入らない‼︎ 変な誤解はするな‼︎」 少し語気を荒げて話す。 心外だった‼︎ まさかこんな事で俺と真琴君を疑うなんて‼︎ 祐一にも失礼じゃないのか? いや、ミキも頭では俺の話した事は解ってるはずだ、でも、心の方が……。 何を言っても、今は疑心暗鬼になってるようだ。 困り果ててると、部屋のノックが聞こえた。 時計を見ると19時近かった。 祐一達か。 仲直りしたのか? 俺達の方はまだ蟠りが残ってるが、気分を変えるのも1つの方法かと思い食事に行く事にした。 「祐一達だな。夕飯に行くぞ」 「……はい」 祐一達の前では無言で居る訳にもいかないだろうし、美味しい物を食べればミキも機嫌が良くなるかもしれない。 そんな願いも込めて祐一達と夕飯を食べに微妙な雰囲気のまま部屋を出た。

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