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第677話
「この間、会った時に教えてくれても良かったのに~」
真琴君がそう話すと
「ごめんね。話したかったんだけど、やっぱり皆んなの前で話したかったの。もう、話したくって.話したくってウズウズしてたのよ~」
ミキ達とは、2週間に1度か週1の割合で会ってたから真琴君の言う事も解るが、沙織なりに矢島君も交えて揃って言いたかったのかもしれない。
「すみません。俺も皆んなの前で話したかったから」
沙織を庇うように透かさず話す矢島君は年下だがしっかりしてる。
「それで、よくあの専務が許したな。1人娘で目に入れても痛くない程に激愛してるのに」
「激愛って程でもないけどね。お付き合いが許されてから、結構、辛抱強く大ちゃんも家の両親に会うようにしてたからね。大ちゃんの人柄や仕事を頑張ってる所とか解ってくれたみたいで、少しずつ打ち解けてくれたの。全て、大ちゃんのお陰ね」
頑張ったな矢島君。
沙織の話を皆んな感心して聞いてた。
「大切な娘さんとお付き合いさせて貰ってるんです、当たり前ですよ。それに、俺には沙織さんしか居ませんから。何年掛かっても許して貰えるまで頑張るつもりでした」
「大ちゃん、ありがとう」
皆んなは2人の話しを聞いて感動して微笑ましく見守ってた。
俺も同じ気持ちではあったが、徐々にイチャイチャしてるようにも見えて仕方なく思えてきた。
「本当に、良かったね。2人の結婚祝して乾杯しよう」
優希さんに言われ、皆んなビールを持ち『結婚、おめでとう』とグラスを合わせ乾杯した。
グビグビグビ…
ん~旨い‼︎
幸せそうな2人を見て、酒もいつもより旨く感じる。
「それでね。結婚の報告もなんだけど、皆んなには披露宴に友人として出席して欲しいの。勿論、2次会にも出席してね。2次会は会社の子達が仕切ってくれる事になってるし、本当に若い子達だけだから気兼ねしないと思うわ」
「披露宴には親戚や会社関係者も出席しますが、友人枠は俺の学生の時の友人数人と沙織さんの方もそんな感じです」
「嬉しいけど……披露宴まで出席して良いのかな?」
「マコと一緒で、2次会には勿論出席しますけど……」
「私と大ちゃんにとっては、今、1番親しくしてる友人ですもの。是非、出席して欲しいの」
「俺も同じ気持ちですから、是非お願いします」
「当の2人がこう言ってるんだから出席しても良いんじゃない。私は沙織さんのウエディング姿も見たいし。そう思わない、龍臣」
「俺は……そう言う場は相応しくないから2次会で充分だ」
「龍! そう言う事言わないの! 沙織さんだって出席して欲しいから、こうして私達を呼んで話してるんだよ」
「そうですよ。俺も海堂さんには仕事面でも世話になってますし、沙織さんも俺も是非出席して欲しいから、こうしてお願いしてるわけで」
「大ちゃんと優希さんの言う通りよ! もし、来て欲しくなかったら今日呼んでないから。それに、今は立派な会社でしょ?昔の事に拘ってるのは海堂さんだけよ。今は私達と同じ一般人なんだから」
優希さんと矢島君と沙織に半分説得され半分は説教され、それでも3人の気持ちは伝わったようで
龍臣も笑顔を見せた。
良かったな、俺達以外にも龍臣の事を解ってくれる奴が居て。
「龍臣の強面の顔は、今更どうにもならねぇ~けどな」
「何だと~~、俺だって解ってるつーの。仕方ねぇ~だろ、生まれもった顔なんだし」
場の雰囲気を明るくしようと龍臣を揶揄うと、龍臣も俺の意図が解り乗ってきたが、1人だけ空気を読めないっつーか解ってない天然が居た。
「伊織さん! だめですよ。外見で人を判断しちゃ~。それに海堂さんは一見怖そうだけど、笑うと少年みたいな顔になるのがチャーミングです」
学生の時も龍臣の怖そうな外見と普段笑わない龍臣がくしゃくしゃの少年みたいな顔で笑うギャップで落ちる奴は居たなぁ~。
まさか…龍臣のギャップに…ミキも……いや、それは無い!
「美樹君、良く解ってるね。龍臣はそのギャップで、今でもお店のキャバ嬢やクラブのホステスに大人気なんだよ~~。ここぞって言う時に使ってんだからね~」
「ゆ、優希~~」
優希さんは嫌味たっぷりに普段言えない不満をここぞとばかりに話し、龍臣はあたふたと焦って居た。
優希さんには頭が上がらない龍臣を見る姿は楽しい~。
クスクスクス……
くっくっくっくっ……
はははは…ははは……
そんな2人を見て笑いが起こった。
「じゃあ、決まりね! もう、式場は押さえてあるの。6月5日(土)だから、その内招待状届くと思うけど、空けといてね。勿論、2次会も参加ね。マコちゃん、土曜日なんだけど……桐生さん、来られるかしら。披露宴は14時からなの。何とか来てもらえないかしら、マコちゃんからもお願いしてくれない?」
「話してみます。バイト歴長い人が居るので、頼めば何とかなるかも」
「俺からも祐一に話しておく」
「お願いね。これから結婚式やら披露宴の打ち合わせで忙しくなるわ」
「ウエディングドレス決めたの?」
「沙織さんなら、どんなドレスも似合いそう。お色直しは?」
「それより、プロポーズの言葉は?どこで?」
ミキ達に質問攻めにされ、沙織と矢島君は大変そうだが嬉しそうだ。
そんな2人を見てるとこっちまで嬉しくなる。
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