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第679話

「沙織さんのウエディングドレス姿、凄く綺麗でしたね」 「そうだな。孫にも衣装だな」 「失礼ですよ。伊織さんは、直ぐに、沙織さんの事になるとそう言う風に言っちゃうけど、本当は心の中では綺麗だと思ってるんですよね?本当に素直じゃないんですから」 俺の性格を良く解ってるな。 「矢島君もデレデレだったな」 「本当に、沙織さんの事が大好きで仕方ないって感じでしたね。最後には、泣いちゃって……俺も感動しました」 披露宴で、最後の方に沙織が親に感謝の手紙を読んだ時だな。 披露宴に居た他の人達も感動してたし、会場の雰囲気もそんな感じに包まれてたが、俺には沙織の演出にしか見えなかった。 確かに、親にここまで育てて貰った感謝の気持ちの手紙だったが、1人娘で新婚のうちは実家から近い所に2人で住むらしいが、いずれは同居が決まってるし矢島君も婿養子に入ったわけだから、全て沙織の思い通りに事が運んでるわけだ。 感動の手紙に惑わされてるが、要は、あまり変わらない生活だって事だ。 素直なミキには、そんな沙織の裏は解らないだろうな。 「僕も釣られて泣いちゃった。ミキも泣いてたよね?」 「マコ! あれは……皆んな、泣くよ」 「2人共、純粋だからねー。それに比べて、成宮.桐生.龍臣は相変わらずだよねー。皆んなが感動してると逆に冷めちゃってさ。本当に、天邪鬼なんだから」 優希さんに言われると、俺達3人の高校の時から知ってる人なだけに何も言えない。 俺と祐一は黙りを決め込むが、龍臣だけは反論した。 「感動はするさ。だけど、沙織さんの披露宴だけじゃなく、あ~言うのって如何にも泣いて下さい.お涙頂戴の演出が解って冷めるんだよな?な、伊織、祐一」 俺と祐一はコクコク…と頭を縦に振った。 余計な事は言わない方が得策と判断した。 「全く! そう言う所変わってないし変な所では気が合うんだよね、あんた達は」 まだ、優希さんと龍臣は言い合ってるが俺と祐一はさり気なくミキと真琴と話し始めた。 俺達6人は矢島家.神崎家の披露宴に招待されてた 前列の方は親族と会社関係で、俺達は後ろの列の友人関係の席の1画にあるテーブルを6人で囲んで披露宴に参加した。 披露宴は滞りなく最後は感動の手紙で終わり、その雰囲気のまま矢島家.神崎家のご両親と矢島君と沙織に見送られ会場を後にした。 専務は、俺とミキを見て一瞬驚いた顔を見せたがまた直ぐに親の顔に戻った。 沙織からは俺は沙織の友人で、ミキは矢島君の友人と言う事で言ってあるとは聞いてたが、専務は俺の性癖も知ってるし……何か感づいたかもしれないが、特に問題無ければ何も言わない人だし、大丈夫だろう。 ミキもそれを凄く心配してたが、何かあったら俺が盾になれば良いだけだ。 2次会まで時間があった俺達はその辺りをそれぞれのカップルで見て歩き、それから待合せて6人で近くの喫茶店に入って時間を潰して雑談してた所だった。 「そろそろ、2次会の会場に行きましょう」 しっかり者の優希さんが時間を確認し、俺達を誘導してくれる。 「じゃあ、行くか~」 「行こう.行こう」 「2次会は、友人関係だけだから肩苦しくないよね?」 「うん。立食パーティーって言ってたよ」 「楽しみ♪」 「楽しみだね♪」 ちょっと面倒だと思ってる俺と祐一と龍臣に対して、ミキと真琴と優希さんは楽しみで仕方ないって感じだ。 喫茶店を出て、2次会会場にぞろぞろ6人で歩き向かう。

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