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第681話
「お待たせ~」
「どれも美味しそうで、迷っちゃった~」
「適当に、料理と飲み物持って来たよ。あっちも人が多かったよ」
3人はトレーいっぱいに料理と飲み物を乗せ運んで来た。
直ぐにテーブルは料理でいっぱいになった。
「食べよ.食べよ♪」
「取り敢えず、食べて時間見計らって沙織さん達の所に行ってみよう」
「うん。お祝いの言葉も掛けたいし写真も撮りたい♪」
俺達も料理を口にしながら、ミキ達がワイワイ…話してるのを聞いてたが、このままだと3人で沙織達の所に行きかねないと思い提案した。
「なあ、沙織達の所にはカップルで行かねー」
祐一と龍臣は俺の意図に気付き、直ぐに援護射撃して話す。
「そうだな。ここにも誰か人が居た方が良いしな」
「大勢で押し掛けるより、2人ずつ行った方が良いかもな。ただでさえ、他の人も居るわけだし」
「だよなー。2人に言葉を掛けて写真撮るのが精一杯だよな。じゃあ、交代で行こうぜ」
今度は、俺達3人で勝手に決めてそうする事にした。
ミキと真琴君は特に異論はないようだが、優希さんだけは昔っからの俺達の悪巧みや性格を知ってるだけに、やれやれと言う顔をして見てた。
様々な料理とワインやカクテルを飲み、美味しかった物はまた取りに行ったり酒類もおかわりもし雑談し、沙織達の周りに人が少なくなった所を見計らい順番で言葉を掛けに行く事になった。
最初に、俺とミキとで沙織達の所に行き言葉を掛けた。
「矢島君、沙織。結婚、おめでとう」
「矢島さん、沙織さん。ご結婚おめでとうございます。沙織さん、ウエディングドレス似合ってて凄~く綺麗でした」
「ありがとうございます。今日は出席していただき嬉しかったです」
「ありがとう。ヨシ君にそう言って貰うと本当に嬉しいわ。たぶん、ヨシ君の方がもっと綺麗よ」
嬉しそうに話す沙織だが、頭の中でミキのウエディングドレス姿を想像してるんだろう、うっとりとミキを見てた目で解る。
そりゃそうだろう。
ミキほどの絶世の美人は、どこを探しても居ない
結婚式と言う事で、ちょっとお洒落をしたかったようだが、俺が止めて「専務も居るから会社仕様で行った方が良い」と説得し、ミキも専務の事もあり納得し、スーツは以前に俺がプレゼントした少しだけ華やかなスーツを着て、会社仕様の髪形と伊達眼鏡で出席した。
本来のミキの姿で着飾れば、ここに居る男も女も足元にも及ばない程美しくなるのは解り、絶対に注目を集めると思ったからだ。
やはり、2次会は若い男女が多く…正解だった。
「矢島さん、沙織さん、疲れてるとは思いますけど、写真撮っても良いですか?あと…4人でも」
また女装の話をされたら堪らないと、ミキは慌てて話を逸らした。
「良いわよー♪」
最初は、矢島君と沙織のツーショットを何枚かカシャッカシッ…撮り、2人の両脇に俺とミキが並びスマホを近くの人に頼み数枚撮って貰った。
「本日は、本当におめでとうございます。また、皆んなで大将の所で細やかなお祝いしましょうね」
「楽しみだわ♪」
「今日は、本当にありがとうございます」
「おめでとう。あまり大勢で押し掛けるのも悪いと思って順番にしたんだ。次は、祐一達が来るはず。疲れてるのに悪いな。皆んな一言直接お祝い言いたいから」
「その気持ちが凄く嬉しいです。大丈夫ですから気にしないで下さい」
「本当に綺麗ですよ、沙織さん」
俺達は長居は無用と10分程でその場を立ち去りテーブルに戻り、入れ替わるように今度は祐一と真琴君が沙織達の所に向かった。
「どうだった?」
「優希さん、間近で見ても凄く綺麗でした~。写メ撮ったから見て.見て~♪」
早速、優希さんと写メを見てワイワイ話すミキ達の前で、俺は龍臣と話してた。
やはり、10分程で戻って来た祐一達と入れ替わりに、今度は龍臣達が沙織達の元に向かった。
真琴君は早速ミキに写メを見せてキャッキャッ…と楽しそうに話してる。
「幸せそうだったな」
祐一が俺の側に来て、そう話した。
「ああ、矢島君も頑張ってたし、今日の日を迎えられて感激してるのが見て解る。沙織も嬉しそうだった」
「何だか不思議だよなー。マコ達の絡みで、俺達8人が仲良くなって、その中から結婚するカップルが居るんだもんな。あとの6人はカップルでも男同士だし。普通なんだろうけど…俺には、何かこうやって披露宴や2次会に呼ばれるのって、不思議な感覚だ」
祐一の話す事は、俺には良く解る。
俺も祐一も真性のゲイだからだ。
まだ、俺は一般的な会社員と言う事もあり、披露宴や2次会には呼ばれる事もあるが、祐一は店もゲイの集まる店だし普通のカップルとは縁が無いから、そう思うんだろうな。
「確かにな。まあ、あれが世間では普通なんだよ俺達には関係ないけどな。ま、俺達は俺達だ‼︎ 本人達が幸せなら、それが一番だ」
「別に、俺はマコとの事をどうこう言ってるわけじゃないぞ。俺はマコが居れば、それだけで幸せなんだからな。ただ、ここに居る自分が居て良いのか?と複雑だなって思っただけ」
「別に、良いじゃねー。矢島君と沙織の友人には違いがねーんだから。それに、外見でゲイかどうかなんて誰にも解んねーし。祐一、考え過ぎー」
そう言う店だし、どっぷり浸かってる祐一には、こういう所に出てる事に気遅れしてるみたいだ。
昼の世界や世間一般とはかけ離れて生活してるから、尚更かも知れない。
俺は軽い口調で祐一に話した。
「そうだな。ちょっと考え過ぎたようだ。こう言う華やかな所に来る事も無いから、神経質になってたのかも」
「夜の華やかな世界に居る男が何言ってんだー」
「その華やかさとは違うっつーの」
やっと祐一からも笑顔が出た。
「戻った」
そこに龍臣が戻って来た。
「幸せそうだった」
祐一と同じ事を話す。
「皆んな同じ感想言うな」
「あと、矢島君がデレデレだった」
「それは俺も思った」
「あれは、尻に敷かれるな」
「「間違いない」」
俺達は顔を見合わせ声に出さず笑った。
仲間内から結婚し祝福される幸せな2人が羨ましくもあり嬉しくもあった。
幸せの形は人それぞれだ……俺達は結婚式や皆んなに祝福される事はできないが、今はそれぞれの幸せの中で生活してる。
祐一も龍臣もそれは解ってるはずだ。
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