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第686話
俺達の威圧感に耐え切れず、先にミキから口を開いた。
「ごめんなさい」
なぜ、謝る?
謝る前に、そうなった経緯とか説明が欲しい。
そう思ってると、今度は真琴君がミキを庇うように、ミキを守る為に自分が盾になり必死に話す。
さっきまで祐一に冷たい目線に怖気付いてた真琴とは別人の様だ。
「謝る必要なんか無いよ。だって、何も悪い事してないじゃん。僕達はデザートを取りに行ってただけだし。その間に、女の子達とここで仲良く話してたのは祐さん達の方でしょ?」
……見られてたのか?
俺は祐一をチラッと見るとバツが悪そうな祐一と目が合った。
見られてたとは思って無かった俺達は誤解だと説明したい所だが、真琴君が話し出した事で言い出すタイミングを失った。
「女の子達が居なくなるまで、あっちでデザート食べてようって事になって、たまたまスイーツ好きの人が女の子の多さにデザートを取れずに居て躊躇してたから一緒に食べてただけ。僕達はスイーツの話しをしてただけで、別に、悪い事して無いもん」
スイーツ好き男子か?
そりゃ~、話しが合うだろうな。
真琴君の話し振りと顔から嘘では無いと解る。
「そんなの放っておけば良かっただろ?何も、一緒に食べる事ないだろ?」
祐一はまだ納得して無いようだ。
俺はミキが謝った事で……本人も少しは悪いと反省してると思って何も言わずに、祐一と真琴君の成り行きを側で見守ってた。
できるなら……真琴君みたいに説明し、自分の思った事や言いたい事をぶつけて欲しい所だが……ミキの性格上……穏便に済ませたいとか自分が謝ればこの場は収まるとか、俺の気分を害した事に対して謝ったんだとは解る。
ミキの優しさや人間関係を大切にする所は良い所でもあるが……その反面、自分を犠牲にしたり流されるような所はどうか?とも思ってる。
それでも俺が口煩く言ってる事もあり、以前よりは多少は自分の思ってる事を話すようになってはきてるが……咄嗟の時には、まだまだ…だな。
「スイーツ食べたいのに遠巻きに見てて困ってたから、別にそれだけ……祐さん達こそ、女の子達と仲良く話してたじゃん。それこそ、いつものように無視したり追い払う事できたじゃないの?それをしなかったのは……タイプだったから?」
俺達が女に興味が無い事を知ってるはずなのに……嫌味のように話す真琴君はかなり妬き持ちを焼いてるのか?追い払う事をしなかった俺達に頭にきてるようだ。
「マコ! そう言う言い方は、よせ! 俺と伊織の事は知ってるだろ?本当なら、無視も追い払う事もしたいのは山々だったが、沙織さんの友達と言われて邪険には出来なかった。勝手に話すのを相槌を打って聞いてただけだ」
祐一が周りに気を使いながらも、キツい口調で真琴君に説明した。
祐一の真剣な顔や目を見て、誤解だと沙織の顔を立てる為と解ってくれたようだ。
真琴君の顔が、言い過ぎたと反省してる顔に変わった。
「ごめんなさい。そんな事とは知らずに……妬き持ち……焼いた」
俯く真琴君の頭を2~3回撫で、目を細め愛おしそうに見てる。
祐一のそんな顔を見れるとはな。
良いもんを見た。
俯いてる真琴には、祐一のそんな表情を見る事が出来ないのが残念だ。
真琴君に、愛されてると言ってやりたい。
ま、余計なお世話か。
そして俯く真琴君の耳元で祐一が何かを囁くと、祐一を見上げる顔は赤くなってた。
どうせ……帰ったら、お仕置きとか言ったんだろ。
こいつは、こういう時は見逃さず上手く利用するタイプだ。
上手く、やりやがって~~!
「伊織さん……マコが言った事は本当です。本当にスイーツの話しをしてただけです。でも……気分良く無いですよね?俺も……伊織さん達が女の子と仲良く話しるのを見て…やはり気分良くなかったから……女の子とは何でも無いと解ってても……そう言う場面を見ると…妬き持ち焼いて…ごめんなさい」
今度は、きちんと自分の気持ちを言えたミキが愛おしかった。
俺は思わず抱きしめたくなったが、頭をポンポンする事で何とか我慢した。
「俺達も沙織の居ない所で、変な気を使ったみたいだ。本人が居ないのに、余計な事だよな。普段やらない事をして疲れた。ミキ達だけじゃない。俺達も妬き持ち焼いたんだ。悪かった」
「妬き持ち?……嬉しいです」
こう言う素直さは、好きだ。
俺もミキを愛おしく見てると、ニタニタ笑う顔が見えた。
俺は笑うな!って顔で、祐一に意思表示した。
「何かホッとしたら、喉渇いた~」
真琴君が突然言い出した。
祐一はそんな真琴君に微笑んで
「ジュースで良いか?取ってくる。ミキの分もな」
「お願いします」
「俺にはコーヒーな」
「お前もかよ~、ま、良い」
「祐さん1人じゃ大変だから、僕も行く!」
「じゃあ、一緒に行くか」
「うん! ミキ、待っててね」
「うん!」
2人仲良く一緒にドリンクを取りに行った。
「ミキ、これからは俺や他の人に気を使わずに、自分が思ってる事を何でも言って良いんだぞ。ミキの周りの人を大切にしたい気持ちも解るが、何も言わずミキが我慢するのは良く無い。信用されてないようで寂しく感じる人も居るだろう。俺達はミキの性格知ってるから、そうは思わないが…直ぐには無理かも知れないが、少しずつ直していこうな」
俺が言ってる事が解って貰えただろうか?
傷ついて無いか?
「……すみません。優柔不断で……気を付けます」
「優柔不断って言うより優し過ぎだ。ま、そこも良い所でもある」
「……はい」
気落ちしてるミキの所に、祐一達が戻って来た。
ミキの様子に直ぐに気が付いた真琴君が俺の顔をきつい目で見た。
「成宮さん! 僕が居ない間に、ミキに何か言ったの?」
俺とミキはそれぞれコーヒーとジュースを受け取りながら聞いた。
「いや、変な事は言って無いし怒っても居ない」
ミキ贔屓の真琴君に睨まれたら困ると慌てて話す
「マコ、違うよ。伊織さんはこれからは俺も我慢せずに言いたい事を言って構わないって言ってくれたんだ。俺、直ぐに何も考えずに謝っちゃうから」
「そうなの?でも、そんな素直なミキが僕には魅力的だし好きな所だよ」
真琴君が言う言葉は変な意味じゃない事は、充分に解ってる。
ミキへの純粋な憧れと信者ともとれる程に崇拝してるからな。
俺と祐一はこれまでも何度もあった事で、またか?と苦笑いした。
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