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第687話
ジュースを飲みながら談笑してるミキと真琴君を眺めながら祐一に話し掛けた。
「ややこしい事にならなくて、良かったな」
「だな」
「祐一……俺な、付き合う前は誰にも取られたくない早く自分の者にしたいと多少強引に付き合って、付き合うと今度は束縛したい気持ちに駆られ妬き持ちも激しくなった。同棲したら、そんな気持ちは少し落ち着くかと思ったら……そんな事も無く、逆に離れる事が怖くなって同棲する前より束縛したり妬き持ちも激しくなる一方だ。表立ってはそんな素振りも心情も見せては居ないが……一緒に生活して、更にミキが愛おしくなり誰かにかっさわれるのが……怖いっつーか、ミキが居ない生活は考えられない! 祐一達は同棲長いから、もう大丈夫だろ?そう思った事あるか?」
いつもは強引で強気な俺には珍しく弱気な話しを神妙な顔で聞いてた。
「そう思うのは伊織だけじゃない! 俺も龍臣も今だにそう思ってる。今、龍臣がここに居ない事が何よりの証拠だろ?」
確かに、妬き持ち焼いて人が居ない所で話しをしてるんだろう。
そうか、俺だけじゃないんだ!
そう思うと、少し気持ちが楽になった。
「俺は伊織や龍臣みたいに感情を表立って出す方じゃないが、気持ちの中ではマコの事になると妬き持ちも束縛したい気持ちやドス黒い気持ちもある。他の人には解り難いらしいが、マコはそんな俺の気持ちを察してくれる。付き合ってる時は、それだけで楽しかったり嬉しかったりするが、同棲して生活すると……長くなればなる程……掛け替えの無い人になる。伊織の愛おしい気持ちや誰かにかっさわれてしまうかも知れないと言う怖さは、俺にも龍臣にも心のどこかにはある。色々あっても、後はお互いの信頼関係だ」
祐一の説得力のある話しに聞きいってた。
1つ1つの言葉が、心にストンストン…と入ってくる気がした。
信頼関係…か。
もっともっとミキが不安にならないように、俺が頼り甲斐のある男で居ないと……それにはやはり会話だな。
楽しそうに笑ってる2人を見て感慨深く思ってた所に龍臣の声がした。
「お待たせ~~。悪かったな」
「龍臣」
「「優希さん、大丈夫だった?」」
ミキと真琴君は優希さんに駆け寄り心配してた。
「大丈夫.大丈夫だよ。ちょっと話してただけだから」
優希さんとミキと真琴君が話してる側で、俺と祐一と龍臣とでこそこそと話し始めた。
「どこ行ってたんだ?」
「優希さんにキツく言ったりしなかっただろうな凄い形相だったからな」
俺と祐一の心配を他所に、龍臣は行った時とは違って何だか機嫌が良い?
祐一もそう思ったらしい。
「話さないとマズいと思って、会場を出てトイレに連れ込んだ。ま、お互いの誤解は解けたから万事上手くいった」
変だ! やはり機嫌が良い!
俺は優希さんを良く見た。
何だか頬がほんのり赤い?
髪も少し乱れてる?
トイレ?
個室?
ハッと気が付いた。
まさか……いや、幾ら龍臣でもそこまではしないだろう。
その証拠に龍臣の服の乱れはない。
こいつ~~‼︎
キスはしたな~~‼︎
どさくさに紛れて仲直りのキスはしたって事か⁉︎
こっちは抱きしめたいのも.キスしたいのも我慢してんのによー‼︎
俺は祐一の腕を肘で突っつき声を出さずに ‘キスしやがったー’ と口パクで言った。
祐一も合点がいったらしく、俺と一緒に胡乱(うろん)気な顔で龍臣をジッと見たが、そんな俺達に慣れてる龍臣には全然効かないし、逆に俺達が疑いの目で見てる事に気付かない振りまでしやがる。
ま、良かったな。
あの形相と気持ちのまま行ったからな、心配はしてた。
矢島君と沙織の結婚式の2次会じゃなかったら…気性の激しい龍臣の事だ、今頃、優希さんを連れて帰ってたかも知れない。
仕事では冷静沈着で時には暴虐.残忍さで恐れられてる龍臣だが、優希さんの事になると我を忘れカッとなるのは昔とちっとも変わらない。
あれから何年経っても変わらずに、優希さんの事を愛してるって事なんだろうな。
さっき話してた祐一の言葉を思い出し納得した。
俺達3人……惚れた方が負けか。
いや、愛情の深さなのかもな。
高校の時からの付き合いで、唯一変わったのは、それぞれ大切な人が出来た事だ。
お互いの愛情表現の仕方は違うが、愛しい気持ちは一緒だ。
祐一と話し龍臣の行動を見て、俺だけじゃないと気持ちが楽になった。
会場に司会者の声が聞こえた。
「宴もたけなわではございますが、楽しい2次会もいよいよお開きの時間が近づいて参りました。最後に、新郎.新婦より皆様にお礼のご挨拶がございます。では、新郎.大輔君、新婦.沙織さん、宜しくお願いします」
司会者の声で一斉に新郎新婦に注目が集まる中、新郎の矢島君は立派な挨拶をし会場は拍手喝采だった。
それから司会者の進行に合わせ、新郎新婦が出口で会場に居る人達1人1人に挨拶し見送りしてた。
順番に出口に向かい俺達6人の番になり、矢島君も沙織も幸せな顔で俺達に挨拶した。
少し照れ臭いが「幸せにして、やってくれ!」と矢島君に言い、「幸せになれよ!」と沙織には言い、2人に祝福の言葉を残して2次会の会場を出た。
そしてまだ時間が21時と言う事もあり、3次会をアナウンスしてたが俺達は外に出て帰る事にしてた。
「祐一は、これから仕事か?」
「まだ21時だしな。俺の場合はこれからが稼ぎ時だしバイトに店頼んで来たしな」
「マコは、家に帰るの?」
「う~……祐さんのお店に、このまま一緒に行こうかな?少し飲んだらタクシーで帰る! 良い?」
「解った」
沙織達の幸せそうな雰囲気に当てられたな。
祐一と離れるのが寂しくなったらしい。
「それなら伊織さん、俺達もこのまま祐さんの店に行きません?優希さん達もどうですか?」
「えっ! 行きたい!行きたい! ずっと、桐生の店に行きたかったんだ~。龍臣の奴、その内.その内って全然連れてってくれないから……。良い機会だし行きたい!」
優希さんは行く気満々だ。
龍臣は渋い顔をしてたが、行く気満々の優希さんには ‘だめだ’ とは言い辛いらしい。
俺も、酒も入り色っぽいミキの姿は他の奴らには見せたくないが……今日の格好は会社用だし、いつものミキとは解らないかも知れないと思い直し俺も龍臣も渋々「解った」と了承した。
祐一の店は客層も品も良いが、やはりゲイの集まる店に優希さんを連れて行きたく無いんだろうな。
どんな誘惑が待ってるか?解らないからだ。
その気持ちは凄く俺には解る。
こうして俺達だけの3次会に行く事になった。
だが、その不安要素も龍臣と俺の鉄壁なガードで杞憂に終わる事になった。
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