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第691話

8月末の仮決算に向けて、少しずつ準備をし始めた。 毎年の事だが、通常業務をしながらも少しずつ始めておけば後が楽だからだ。 それと言うのも、夏休みをゆっくり何も考えずに過ごす為だ、俺は絶対に旅行に行こうと決めてた 本来なら長い休みのGWに、どこか旅行に行こうと思ってたが……車でドライブしたり家具や日用品を買いに行ったりと、家で過ごす日が多かったからだ。 「GWに、どこか旅行に行くか?」と、ミキの行きたい所を聞くと、少し考えて「止めておきます」と断られた。 「どうしてだ?」 何か、気兼ねでもしてるのか?と思い聞いてみた 「6月に、沙織さん達の披露宴や2次会でお金が出るでしょ?」 そんな事か。 「金の事なら、気にしなくていい」 俺がそう言うと、ミキは怪訝な顔をした。 「伊織さん! お金に対して、ちょっと無頓着ですよ。出るのが解ってるのに…旅行なんて、とんでもないです。少し経済観念を考えましょうね」 子供に教えるように諭された。 確かに、俺は基本的に金には無頓着だ。 金に苦労した事がないからな。 ミキもそんなに苦労してないはずだが……経済観念はしっかりしてる。 残念だが……ミキの話すのも一理ある。 「解った。その代わり、お盆休みの夏季休暇は、旅行に行くぞ」 俺も黙って引き下がる事はしない。 「それまでに、旅行代貯めましょね」 旅行代なんて……改めて貯めなくてもあるが……それを言うと「生活費と旅行代は別です」と言われそうだ……ここは黙って肯定しておこう。 「解った。旅行代貯めると思うと、仕事もまたやる気が出る。頑張るか!」 クスクスクス…… 「GW行かない分、夏季休暇の旅行楽しみになりましたね。俺も頑張って貯めますね」 しっかり者の奥さんに、俺もタジタジ…だった。 新婚旅行から帰って来た沙織達がカナダも良いって言ってたな。 南の島と迷ったとも言ってな。 海外…南の島……か。 綺麗な海でシュノーケリングして砂浜でゆっくり過ごして、また夜の海岸の散歩も良いな。 折角、海外に行くならマリンスポーツをたくさんしても良いな。 サーフィンは無理でも、ボディーボードやウィンドサーフィンとかバナナボードやパラセーリングも良いな。 日本で出来ないマリン体験するのも良い。 良し‼︎ 夏季休暇は、海外に決めた‼︎ ミキが何と言ってもそうする! 2人で海外に行ったのは……アメリカ出張の時だけだし、2人共英語圏の所なら問題はない。 静かな所が良いな。 海と砂浜.星空が綺麗で、魚達が優雅にたくさん泳いでる所が良い! 帰りに、旅行パンフレットを貰いパソコンで良さそうな島を調べて見るか。 残業しながらパソコン画面を見つめ、頭ではGWに行けなかった旅行の分、夏季休暇に思いを寄せ今から楽しみになった。 楽しみが出来ると、俄然仕事もやる気になるな。 良し‼︎ 早いとこ、今日の分は終わらせて帰るか。 それから俺は仕事モードに切り替え30分程で仕事を終わらせ会社を出た。 「ただいま~」 「お帰りなさ~い。お疲れ様でした」 リビングの中に入ると、部屋の中は良い匂いが漂っていた。 「すげ~良い匂い。今日の夕飯は、何?」 「帰りにスーパー寄って来て、かき揚げ天ぷら買って来たから、天丼にしようと思って。伊織さん、卵綴じにしますか?」 「そうしてくれ。直ぐに、着替えて来るな」 「その間に、用意しておきますね」 寝室に行きクローゼットの中にスーツを掛け、部屋着にしてるスウェットを着てリビングに戻る。 「少しだけ、待ってて下さい」 「ああ、何か手伝うか?」 「じゃあ、そこにあるサラダと箸お願いします」 「了解!」 卵綴じ天丼.サラダ.味噌汁.胡瓜の漬物と、今日も美味そうな料理がダイニングテーブルに並んだ。 椅子に座りながら、旨そうな匂いを嗅ぐ。 「美味そうだな」 「頂きましょう。頂きます」 「頂きま~す」 卵綴じ天丼を口に入れると、卵がとろとろで天ぷらに味が染み込み美味い‼︎ 「美味い‼︎ 絶品だ‼︎」 「天ぷらはお惣菜ですよ。でも、口に合ったなら良かった。ん~美味しい♪」 自分でも上々の出来だったようだ。 ミキの美味しそうに食べる顔で解る。 「この胡瓜の漬物、美味いな」 「塩揉みして、胡麻油少し垂らしました」 「ミキが作ったのか?」 「はい」 「塩加減も胡麻油も効いて美味い‼︎」 「直ぐに出来ますよ。伊織さんって、何を作っても美味しいって言ってくれるから嬉しいです」 「美味しいから美味しいって言ってる。お世辞じゃないぞ。マジ、美味い! 俺は料理上手な奥さん貰って幸せだ‼︎ 夜の方の相性もバッチリだしな」 最後はウィンクし話すと、ミキは少し照れ頬を染める。 「んもう! 伊織さんったら~」 その恥じらい方が…どんなに長く付き合っても初々しいな。 こんな穏やで楽しい食卓風景は、ミキと同棲してからずっとだ。 何もしなくても、ミキの雰囲気から癒やしを感じ俺も心が安まる。 美味くて、ついついガツガツ…食べてしまった。 それをミキは嬉しそうに見て食べてる。 粗方食べ終わり、ミキに夏季休暇の旅行の事を持ち出した。 「夏季休暇の旅行だが。海外に行かないか?南の島でマリンスポーツでもして、ゆっくり過ごさないか?旅行の候補地のパンフレット貰って来たから、片付けたら一緒に見て決めよう」 「海外?う~ん……別に、海外に行かなくても」 また、金の事を気にしてるのか? 「ミキに言われてから、旅行代金貯めたから大丈夫だ。日本では出来ないマリンスポーツも出来るぞ~。取り敢えず、パンフレット見てから…な?」 「……解りました。折角、パンフレット貰って来たなら、一応見ますね」 海外は、あまり乗り気じゃない…みたいだな。 片付けを始めたミキと一緒に食器をキッチンに運び、後はミキにお任せした。 そして俺はビジネスバッグからパンフレットを何冊か取り出し、リビングのテーブルに並べソファで待つ事にした。 片付けを済ましたミキが俺の隣に座り、テーブルに並んでるパンフレットを手に取り、パラパラ…と見てる横で、どうしても海外旅行をしたい俺は色々と話し掛けた。 「なあ、近い所なら3時間程でサイパンかグアムに行けるし。5時間程ならセブ島やダナン.パラオにも行ける。もう少し時間掛かるが、バリ島なら日本から7時間だ。俺は出来ればセブ島かダナン.パラオが良いと思ってるんだが。ハワイは観光客多いから止めようと思ってるが、ミキはどう思う?」 何冊かパラパラ……とパンフレットを眺めてるミキの横顔を ‘綺麗だなぁ~‘ と思って見て居た。 不意に顔を上げて微笑むミキ。 それまでジッと見惚れてた俺は内心慌てた。 「そうですね。俺もセブ島かダナン,パラオ辺りが良いです。何だか、パンフレット見たら俺も南の島に行きたくなりました」 「そうか.そうか。パンフレットだけじゃあれだから、もっと詳しく調べてどこにするか決めよう。書斎のパソコンで検索しよう」 「はい」 俺はミキの手を引いてそのまま書斎に連れ込み、パソコンの電源を入れ椅子に座ると、ミキは隣で立ちながらパソコンを見る体勢をとってた。 「おい、ミキの座る場所はここ!」 隣に立ってるミキの腕を掴み強引に、俺の膝に横抱きに座らせた。 「い、伊織さん!」 「何?誰も見てるわけじゃないし、家なんだから良いだろ?」 「重くないですか?」 「全然‼︎」 俺はミキを抱きしめるように腰に手を回し膝に座らせ、もう片手でマウスを動かす。 こうやってイチャイチャ…しながら、旅行を決めるのも良いなぁ~。 ミキも諦め黙って俺の膝に座りながらパソコンを眺め、あ~でもないこ~でもないと2人で話し楽しい時間を過ごした。 そして行き先を決めた! 夏季休暇の旅行が現実的になると俄然心が躍る。 そしてそのまま良い雰囲気の中でセックスに持ち込んだのは言うまでも無い‼︎

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