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第692話
「暑いな」
「うわぁ~、本当ですね。滞在中に雨降らないと良いですね。今の時期は雨季ですよね?」
「ああ。でも、日本の梅雨みたいに1日中降ってるわけじゃない。スコールで1時間か2時間で止むしな。暑いが湿気が無く割と過ごし易いかもな。ミキ、日焼け止めだけはしてろよ」
「はい。あ~、楽しみ♪」
俺達は夏季休暇にフィリピンの空港に居た。
これから少し観光してホテルに向かう予定だ。
2人でパソコンで検索した結果、フィリピンのセブ島に決めた。
「ジンベエザメを近くで見てみた~い♪出来れば一緒に泳いでみたい! ヴィラに泊まってみたい‼︎」
と言うミキの希望でセブ島に決めた。
旅行先が決まると、それまで旅行に関してイマイチ乗り気じゃなかったミキとは打って変わって、楽しみで仕方がないと表情に出てるミキが可愛いらしかった。
旅行先の予約をし、ジンベエザメのツアーの申し込みも忘れずにした。
自分の分は自分で出すと言うしっかり者のミキに俺は条件を出した。
「滞在中の食事や諸々掛かる費用は、ミキ持ちで頼む」
「それじゃあ~、全然旅行代の方が高いです」
「そうか?基本、ホテルの店での食事か外食が多くなるはずだ。結構、掛かると思うが?」
旅行代に比べるとそれでも大した事は無いが……こうでも言わないと ‘自分の分は自分で出します。伊織さんの負担になりたく無い‘ ‘それなら旅行は止めます’ とか言い出した兼ねない。
「それでも……」
セブ島には行きたいらしいな。
それなら……今なら、何でも条件を飲んでくれそうだな。
良し‼︎
「じゃあ、俺の頼みを1つ聞いてくれ」
何かを感じとったミキは怪訝な顔をした。
「何ですか?」
「今年も去年と同じ所に、また花火大会に行くつもりだ。その時に……女装って言うか.去年の浴衣着てくれないか?花火大会で気兼ね無くイチャイチャしたい‼︎……だめか?」
俺は心の中では ‘大丈夫.大丈夫。ミキは条件を飲む’ と思ってたが、一応、ミキのお伺いを立てる振りで頼んでみた。
「………良いですよ。俺も伊織さんとイチャイチャしたいですから………でも…これから毎年花火大会の度に……恒例になるのは嫌ですからね。今回は旅行代の1部と言う事で……あと、お土産代とか出しますし、欲しい物あったら遠慮なく言って下さいね。絶対ですよ!」
「ああ、頼むよ」
心の中でシメシメやった~‼︎と思ってる事は、内緒だ。
こうして旅行先が決まると夏季休暇の楽しみがあると思うと、仕事にも張りが出てスムーズにいく
アメリカ支社からは夏シーズンと言う事もあり、籠バッグや畳サンダルの需要が増え、また売れ始めたと報告もあり、G&Kからもヘルシー食の予約が数ヶ月先まで入って順調らしい。
仕事面も順調で、これで心置き無く楽しみめる。
「さてと、ホテルの迎えの車は断ったからな。近場で飯食べて、それからタクシーで観光してホテルに向かおう」
「はい。食事代もタクシー代も、もちろん俺持ちです!」
「はい.はい。頼みます」
この旅行中は頑として諸費用は自分が持つと言い張るミキには困ったもんだ。
どっちでも良いと思うが……。
スマホで検索し、今回は無難に空港近くのショッピングモール内のフィリピンのチェーン店に行く事にした。
空港からシャトルバスで行き15~20分ぐらいで着き、日本と変わらない程の大きなショッピングモールで、映画館.デパート.レストラン.スーパーマーケット.店舗数も多く、ここで全て賄う事が出来そうだ。
緑もあり広い敷地は開放感があり、庶民的で入りやすそうだ。
俺達は良さそうなレストランに入り、ホタテのクリーム焼き.春巻き.豚肉と玉ねぎの唐辛子炒めで熱々鉄板に乗せ卵を落としたフィリピンでは定番の料理を注文し、2人で取り分けて食べた。
少し味が濃い(?)感じがしたが美味しかった。
食べながらこれからの予定を話し、ミキがここのショッピングモールを見て歩いて必要な物を買って1度ホテルにチェックインしようと言われ、荷物もあるしそうする事にした。
ショッピングモール内は広大で周り切れないと判断し、日用品売場とスーパーマーケットに行く事にした。
道すがら他は歩きながら流し見たが、ほんの一部だろう。
「広過ぎて迷子になりそうですね。でも、何でもあるから、ここで全部済ませられるのは良いですね」
「そうだな。物価も安いしな。それも買うのか?ヴィラにアメニティぐらいあるだろ?」
「ん~、あるとは思うんですけど……一応、あとはタオルとかも少し買おうかな」
「タオルも?」
「ホテルと違うから、直ぐには持って来てくれないかも……それに海に入るでしょ?洗っても直ぐに乾くとは思うけど……一応ね」
やはりアメニティの部分が不安でネット検索して一緒に見た時には、一応は歯磨きや石鹸.ボディソープやシャンプー.トリートメントなど最低限の物は揃ってると安心したが……腐る物じゃないから良い…か。
「それなら日焼け止めと化粧水とかも買った方が良いぞ」
「あっ! それも買おう…と」
他にも日用品を購入し、今度はスーパーマーケットに行き、お菓子や水.食パンや卵やベーコン.スティックコーヒーやワインとおつまみ系を籠に入れいそいそ買い物する姿は楽しそうだ。
「食事なら敷地内に店があるから、そこで食べれば良いだろ?海を見ながらオープンエアーで食べられるぞ。あとは、ホテル内のレストランでも良いし」
「ん、それも凄~い楽しみにしてます。1日ぐらい折角キッチン付いてるなら、朝ゆっくり起きて軽い食事なら作って2人で海を見ながら食べるのも良いかなって」
「ん~、それも良いな。でも、折角の旅行で何もしなくて良いのに……ミキが良ければ、別に構わないが。偶には、ゆっくりしろよ」
「ふふふ……別に大した事ではないので。食パン焼いて、ベーコンエッグですけどね。家での朝食と変わりませんけど」
「いや、ロケーションが違うとまた違うと思う」
「そうですね」
ゆっくり過ごせるのに……とは思ったが、1日ぐらい試しに自分でもやってみたいんだろう。
それもミキの1つの楽しみなのかも知れない。
飛行機の中でも楽しみで仕方がないって感じだっだが、セブ島に来て南国の雰囲気にテンションが上がってるようだ。
可愛い~奴だ。
物価が安い事もあり、あれもこれもで結構な買い物をし、やはり荷物が増え予定通りタクシーを捕まえ宿泊先のホテルに向かった。
これからが俺達の旅行が始まる。
俺も楽しみで仕方ない。
ミキの事は言えないな。
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