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第696話

<ジンベイザメ&モアルボアルツアー>に、俺達は申し込んでいた。 ジンベイザメはもちろんだが、モアルボアルの海での海ガメやイワシの群れを間近に見られるとの宣伝文句に心を惹かれた。 日本ではなかなか体験出来ない事やこの綺麗な海を満喫しながらシュノーケリング三昧しようとこのツアーにした。 ホテル往復.専属ガイド.貸切車両.gopro水中カメラ無料貸出.シュノーケルギアが付き、他にもツアー代金に含まれてるものがある。 特典として、水中カメラマンが無料でツアー参加者とジンベイザメとの写真撮影もあるのも良い。 俺は2人で貸切車両で良かったが ‘安くなるから’ と言い、ミキが頑として ‘相乗りにする’ と聞かず、渋々そうする事にした。 朝の暗いうちに手荷物を持ち、4時にホテル前でツアーガイドが大型バンで迎えに来た。 カップルや友達同士と俺達以外にも数人程ツアーに参加するらしい……これが相乗りって言うやつか。 ガイドが簡単にツアーの注意事項を確認し、ホテル前から出発した。 車内で2掛けの椅子に座り、これから3時間程車での移動だ。 「眠くないか?」 「ん~、大丈夫。こんな暗いうちに出発して、何かワクワクしますね」 「着くまで3時間程かかるらしいから、仮眠して体力温存しないとバテるぞ」 「眠くなったら、寝ますね」 やはりカップルで話してる者や車の揺れと朝が早かった事もあり直ぐに寝てる者も居た。 1時間程で車は止まり、フィリピンの国民的ファーストフード店で朝食らしい。 俺達はハンバーガー.ポテトとコーヒーを頼んだ。甘めの味付けだったが腹も空いてたし美味しく食べた。 そして車に乗り込みジンベイザメが待ってるオスロブへ移動する。 車内では朝食を食べ腹が膨らみ皆んな寝てた。 ミキも俺の肩に寄り掛かり眠り、俺も車の揺れと腹がいっぱいでいつの間にか眠ってた。 「あと20分程で着きます。ここで注意事項を説明しますから」 ガイドの声に起き、簡単な注意事項を聞いた。 ・ジンベイザメにストレスを与えないように決して触れない事。 ・ジンベイザメとぶつかって怪我をしないように4m程離れる事。 ・撮影にはフラッシュは使わない事…etc 説明を受け、そのうちにジンベイザメのオブジェの建物の前に到着した。 ガイドに従い車から降り20分後に建物の前に集合した。 必要無い荷物は車の中に置き、俺達は既に海パンになってた事もあり着替える必要は無かった。 他の人達が着替えに行ったりしてる間に、gopro水中カメラの使い方をガイドに聞きフィンを借りた。 gopro水中カメラと言っても写真ではなく水中撮影用の動画機械で、ミキの泳ぐ姿を撮影し日本に帰国してから、このツアーの思い出を2人でいつでも見れるようにと思って居た。 そして皆んな揃った所で、ライフジャケットを着て小さなボートに乗り込み、いよいよジンベイザメに会いに行く。 沖合50m程行くとそこにはジンベイザメがたくさん回遊していた。 ボートの上からでもエメラルドグリーンの綺麗な海の中で、大きなジンベイザメが近くで悠々と泳ぐ姿が見え、その光景は圧巻だった。 「伊織さん、凄い!」 「そうだな。こんなにジンベイザメを見る事は無いからな」 20頭程が漁師が撒くオキアミに寄って来る。 朝の時間帯に餌付けをする事で、ジンベイザメスポットになっていた。 腹がいっぱいになると集まって来なくなるらしく腹がいっぱいになる前の朝からせいぜい午前中までが、この光景を見れ一緒に泳ぐ事ができると聞いた。 貴重な時間だな。 こんなにジンベイザメが居るとは……予想外だった。 運が良かったな。 9時になり 「準備出来た方から、どうぞ。撮影や写真などは遠慮なくダイバーに言って下さい。それから合図しましたら速やかに船上して下さいね」 ツアー客が続々とボートから海の中へ入って行く 「ミキ、行くぞ。離れるなよ」 「はい」 俺達も早速海の中へ入った。 お待ちかねのジンベイザメとの遊泳だ! 綺麗な海の中に入れば、早速目の前に大迫力のジンベイザメが‼︎ デケー‼︎ つーか怖ぇ~~! 思わずそう思う程至近距離に近づいて来るジンベイザメに興奮する。 ミキも手振りで大きい!と表現してた。 大きな口をパカっと開け、海水と一緒にプランクトンや小魚を一気に吸い込む姿を近くで見ると圧巻の一言に尽きる。 人間は食べないと聞いてたが、吸い込まれてしまうんじゃないか?と錯覚しそうになる。 ジンベイザメは穏やかで好奇心が強く近づいて来る。 俺は早速goproでミキとジンベイザメが一緒に泳ぐ姿を撮影した。 大きなジンベイザメが水面で餌を求め悠々と泳ぐ近くで、ミキも追うように隣で一緒に泳ぎピースサインをしてる。 楽しそうなのが解る。 大きな口を開け餌を食べる瞬間や大きな尾ひれを動かし泳ぐ姿.大きな体の割に小さなつぶらな瞳が何とも可愛らしい。 散々、ミキとジンベイザメが一緒に泳ぐ姿や戯れる姿を撮影すると、今度はミキが変わって撮影するとジャスチャーしてきた。 俺はgoproを渡し、ジンベイザメの隣で一緒に泳ぐ。 デカさに圧倒される。 それからツアーダイバーに頼み、数分間だけジンベイザメと一緒に、俺とミキは手を繋ぎ泳ぐ姿を撮影して貰い、ジンベイザメが背後で遊泳してる前で、俺とミキはピースサインし特典の写真撮影した。 優雅に悠々と泳ぐジンベイザメの姿はちっぽけな悩み事や日常の慌ただしさなんか忘れさせてくれ人生観が変わりそうだ。 楽しくジンベイザメと泳ぐミキも今頃そう思ってるかも知れない。 そしてアッと言う間に、ジンベイザメと泳ぐ事が出来る30分は過ぎ、ツアーガイドの合図で船上した。

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