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第708話
木陰でうつ伏せに横たわってるミキの側に行くと
「ミキ」
「…………」
小さく声を掛けるが返事が無い。
荷物を置き隣に座ると微かな寝息がスースー…聞こえた。
疲れて寝ちまったか。
日差しを遮り木陰の場所と心地よい風。
泳ぎ疲れた体には絶好のシチュエーションだ。
眠くなるのも解る。
俺は暫くうつ伏せで手に顔を乗せた横顔を眺めて居た。
綺麗な寝顔だ。
少し口が開いてるのも可愛いらしい。
俺は思わず半乾きのミキの髪を無意識に撫でていた。
「…ん……ぁ…伊織さ…ん」
「起こしたか?」
「ごめんなさい。横になってたら風が心地良くって、少しだけ目を閉じるつもりが……知らないうちに寝ちゃったみたいで」
「15分か20分位だろ。腹、空いただろ?適当に食いもん持って来たから、食べようぜ」
「はい。すみません」
「そこは ‘ありがとう’ だろ?」
直ぐに謝るミキの癖を正す。
俺に指摘され、笑顔になり「ありがとうございます」と素直に口にし体を起こした。
俺もミキの素直さに笑顔になり、持って来たスナック菓子やマンゴーやサンドウィッチをバスタオルの上に広げた。
「伊織さん、サンドウィッチも作ってくれたの?」
「ああ。今日で滞在期間は終わりだし食材残して置いても仕方ないと思って、冷蔵庫にある卵やべーコンとか適当に食パンに挟んだだけだ。冷蔵庫の中も殆ど空だ。あるのはワインとチーズ位か、それは今日の夜にな」
「うわぁ~~、ありがと。至り尽せりで、凄~く幸せ♪」
「普段はミキに家事や料理任せっきりだからな。こう言う時位はな。いつも頑張ってるミキに少しのんびりして欲しいと思ってな」
「んもう~、そう言う所……大好きです。そう言う気持ちが凄く嬉しいです」
何だか照れる。
あまり普段はしない事をし、こんなに喜ばれると…。
やろうと思ってもミキが先にするし ‘俺がやる’と言うと ‘俺がやりますから、伊織さんはゆっくり休んで下さい’ と言われてしまう。
俺も甘えて、ミキに任せてしまってたな。
些細な事でもこんなに喜ぶなら……これからは少しは率先してやるか。
「そんなに喜ぶなら、これからは俺も家事やるかな」
「お風呂掃除とかトイレ掃除してくれてるじゃないですか~。充分ですよ。伊織さんが家事やら料理しちゃったら俺がする事無くなっちゃう。でも偶にこう言うサプライズは嬉しいです」
「ミキが負担に思わないなら良いが。ま、ケースバイケースでやっていこうな。ほら、食べよう」
「はい、頂きます」
俺が適当に作ったサンドウィッチを頬張る顔が可愛い。
「ん~~、美味しい♪上手に出来てますよ」
「そうか。じゃあ、俺も食べるか」
美味しいと言われ、ホッとし俺も食べ始めた。
冷えたマンゴーも美味しかった。
スナック菓子とかで満腹まではいかないが、取り敢えずは腹も満たされた。
休憩しながらの食事も終わった。
「ねぇ~、伊織さん。この遊び懐かしく無い?」
砂山に木の棒が刺さってた。
「懐かしい~な。子供の頃に海に行った時や公園の砂場でやったな」
「俺もです。今からやりませんか?」
「よ~~し、負けないぞ‼︎」
砂山からお互い交互に砂を手で取り棒が倒れた方が負けと言うゲームだ。
何でも勝負事には負けず嫌いを発揮する俺はミキ相手でも手加減はしない。
ズズズ…俺は大きく砂を取り除く。
「え~~、最初からそんなに?」
ミキは慎重に少しずつ砂を取り除く。
こう言う所にも性格が表れるな。
大胆な俺と慎重派のミキ。
何度か砂を取り除くと砂山もヤバくなる。
俺も最初の勢いも無く少しずつ取り除く。
「もう、倒れそう」
「ほら、ミキの番」
ズズズ……ポトッ!
棒が倒れた!
「やりぃ~~、俺の勝ち~~‼︎」
余りにも喜ぶ俺を見て、珍しくミキが口をつ尖らせた。
「もう1回」
「何度やっても一緒だと思うけどな」
「そんな事ないもん。ね、もう1回」
「ん、じゃあ今度は、何か賭けようぜ」
「……伊織さんって……こう言う勝負事は何か賭けたがりますよね?純粋に楽しむってのは?」
「無い.無い‼︎ 俺は勝負事は昔っから何か賭けた方がより燃えるし楽しめるタイプだからな。じゃなきゃ、やらない!」
「……解りました。変な事は無しですよ⁉︎」
「ん~~、そうだなぁ。勝った方の言う事を1つ聞く!ってのは?」
「……内容は?どんな事?」
今までの経験上からか?疑う顔で俺を見て聞く。
「それは勝った方が決めるって事で‼︎ 俺もまだ決めて無いし」
「解りました‼︎ 絶対に負けません」
俄然、楽しくなってきた~~。
砂山を作り棒を刺しゲームが始まった。
お互い相手の出方を見て砂を取り除く。
さっきより真剣だ。
ズリズズズ…シャリシャリ……
何度目かのターンでそろそろ棒が倒れそうだ。
俺の番か。
ヤバそうだな。
俺は棒の周りから少しずつ慎重に取り除く。
……ポトッ!
やっちまった~~!
砂を取り除く手をそのままにし、ミキの顔を見た
ニコニコ…嬉しそうだ。
くそぉ~~!
負けた‼︎
どんな勝負事にも熱くなる俺は心の中では悔しかったが、顔には出さず話した。
「負けた‼︎ ……それで、何すれば良い?」
悔しさで少し間が開いてしまったが、ミキの事だ…大した事は言わないだろうが。
俺なら……ま、H系だけどな。
俺に言われて「どうしょうかな~」と言い、思案してたが「今、直ぐには考え付かないから、後でも良い?」と言われたが「いや、ダメだ」と言い放った。
暫く考えたミキは立ち上がり腰を屈め、俺の頬に手を当て「伊織さん、目を閉じて」と言った。
これは…キタ~~‼︎
キス…キスだよな。
このシチュエーションなら、キスしかねーよな。
俺が勝ってもそうしてた‼︎
俺は嬉しさで顔を上向きにし、目を閉じミキからのキスを待った。
なんかキスを待つと言うのもドキドキ…する。
静かに、そしてミキの息遣いで顔が近づいてくる気配が解った。
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