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第711話

夜の海辺を散歩しヴィラに戻り、少し飲みながら最後の夜を過ごす事にした。 大きめのソファに2人で並びワインを片手に飲み始めた。 「今日で最後なんですね。凄く、楽しかったなぁ~」 そう言ってコクッ!とワインを飲む喉元と少し酔ってるんだろう目元が潤み色っぽい。 「あっと言う間だったな。何だか、ずっと海の中に居た気がするが、それはそれで楽しかったな。今思えば、バナナボートとかパラセーリングとかのアクティビティもやってみたかったな」 「あっ! 本当ですね。でも、シュノーリングも楽しかったし、それはまた今度って事で」 3泊4日だと、観光もしたいし色々なアクティビティをやりたいと思うと足りなかったな。 もっと計画的にすればよかった。 少し後悔してたが、次の旅行の楽しみにすると笑顔を見せ話すミキに救われ、また楽しい旅行を今度は計画的にしようと思った。 そんな事を暫く話し飲んでると、ミキの話すスピードもゆっくりになり、そして途切れ途切れとなり始めた。 「おい、大丈夫か?飲み過ぎたか?」 頭がこっくりこっくり…揺れ出した。 「ん~~眠い…かも。伊織さ…ん、少し…だけ」 空になったグラスを取り上げテーブルに置くと、揺れてた頭が俺の肩にちょこんと乗った。 「寝るのか?」 「寝ま…せ…ん。少し…だけ」 大丈夫か? 折角の最後の夜なんだが……俺の方はヤル気満々だが……。 そう言えば…昨日の夜は散々攻め、朝は起きれなかった程だったし…あとは、ずっと海の中で遊んでたからなぁ~~……腹がいっぱいになって飲んで疲れが出たんだろうな。 少しだけ寝かせてやるか。 スースー……寝息を立て、俺に身を預けてるミキが愛おしい。 俺はチビチビ…ワインを飲み、スマホを手に取り この旅行が始まってからの写メや動画を見てた。 空港に着いた時.レストランに入って食事した時.観光の時.ヴィラの中で.ツアーの時.夕日をバックに.食事の時.砂浜で……沢山の写メがあり、どれも笑顔で溢れて、本当に楽しそうな2人が映し出されてた。 楽しかったなぁ~~。 旅行に限らず日常生活でも、ミキが側に居るだけで癒され幸せな気持ちになる。 俺は強運の持主だ。 こんな宝物を手に入れたんだ。 肩に寄り掛かってるミキの髪を撫で目を細め見つめた。 愛しくて、愛しくって仕方無い。 「…ん……」 撫でてた手に反応したのか? 「起きたのか?」 そのままズズズ……と頭が下がり、俺の太腿に頭が乗りソファに足を上げ横になってしまった。 「おい!」 「ん…ん……気持ち…良い…撫で……て」 そしてスースー……また寝息を立てた。 俺は言われた通り頭を撫でるが……こりゃ~~、今日は無理か⁉︎ 本格的に横になり寝る体勢になってしまったしな ……最後の夜に期待してただけに……熱い夜を過ごそうと思ってたが……無理…だな。 髪を撫でながら、悪足掻きだが…一応、念の為にもう一度声を掛けた。 諦めが悪いとは自分でも思うが……。 「ミキ。お~~い、ミキちゃん」 「…………」 何の反応もせずにスースー…寝息立て気持ち良さそうに寝てる。 ……仕方ねーか。 無理に起こしてまで……。 俺は気持ち良さそうな寝顔を見て諦め、このままじゃ埒があかないと残りのワインを飲み干し、ミキの頭をそぉっと退け、ソファから立ち上がり横になってるミキの背中と膝に手を回し横抱きにし寝室に向かった。 脱力した体は結構重かったが、起こさないようにゆっくり歩き、そぉっと天蓋付きのベットに横たわらせた。 「ふう~~」 ベットの側で立ち尽くし、綺麗な寝顔を見つめた 夢を見てるのか? 少し口角が上がってる。 楽しい夢でも見てるんだろうな。 幸せそうだな。 その寝顔を見てると、こっちまで頬が緩み幸せな気分にさせられる。 「さてと。俺も諦めて寝るか」 相手が居るのに1人で自慰をするのも……何だか虚しいと諦め、ベットに上がりミキの隣に横たわり背後からミキを抱きしめ髪の匂いを嗅ぎ首筋に顔を埋めた。 「ん~も……食べれ…ない」 「………寝言?」 食べ物の夢でも見てるのか? 一応、顔を覗きに込むが、目を閉じ綺麗な寝顔でやはり口角が上がってる。 プッ! 俺は声を出さないように静かに笑った。 可愛い~~な。 改めて抱きしめ、俺は明日の予定を考えた。 明日は…午後からの飛行機だったな。 早めに起きれば……1回位は……いや、無理か。 始まったら…1回じゃ終わらないしな。 朝食をレストランで食べ、荷物を詰め……早めに出て、空港近くの大型商業施設で土産を買うつもりだ。 昼もそこで食べて、ゆっくり過ごして空港に向かえば良いか。 旅行最後の夜に思惑が外れたが、日本に帰ったら……今日の分の埋め合わせを兼ねて……それはそれで大義名分が出来……良いかも‼︎ 楽しくなってきたな。 良~し、俺も今日は大人しく寝て飛行機の中でも充分に体を休ませて、明日の夜に備えるか。 そう決め、ミキの匂いを嗅ぎ眠りに着いた。 日本に帰国し、マンションで荷解きもそこそこにミキを襲ったのは言うまでも無い。 翌日には案の定ベットの住人になり、文句を言われるのも毎度の事だ。 〜後日談〜 夏季休暇の最終日には、2人でミキの家族が眠ってる墓に行った。 2人で行くのも、もう何度目かになる。 それ程、俺達の付き合いが長くなってる事実と強い絆で結ばれてると実感出来た。 車中では前に話してたように、家族との思い出話を1つする事が俺達の恒例になってた。 今回は家族で海やプールに行った話をしてくれた 初めて2人で墓に行った時には、まだ傷が癒えずに悲しげに語ってたが、もうそれも無くなった。 今は懐かしい楽しい思い出を笑って話すようになった。 1人じゃない俺が側に居る事で安心し、自分の居場所を見つけたと思ってくれてると勝手に俺は思ってる。 そうであったら嬉しい。 ミキに続き、俺は墓の前で手を合わせた。 ‘また、2人でここに来る事が出来ました。俺は凄く幸せです。ミキが側に居てくれるそれだけで。ミキもそう思ってくれてるはず。だから、これからも天国で俺達を見守って下さい’ そう心で唱えた。 そして晴れ渡る空を見上げた。 来年も再来年も…この先ずっと2人でここに来て毎年同じ事を誓う‼︎と。 こうして俺達の夏季休暇は終わった。

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