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第716話
車で真琴君と一緒に俺達のマンションまで祐一が迎えに来て、沙織が待つ実家に一緒に向かった。
‘どうせ、着替えるんだから’ と4人共ラフな格好だった。
ミキと真琴君の支度を待ってる間に、俺と祐一はTシャツとハーフパンツの姿から浴衣に着替え、沙織の実家の居間のソファに座り世間話をしてた
「祐一、結構似合ってんじゃん。お前、浴衣なんて持ってた?それと店の方は大丈夫なのか?土曜日だし、かきいれどきじゃん」
「浴衣なんて持って無かったから、どうしようか考えてたら ‘どうせ浴衣なんて持ってねーだろ?俺の古いので良ければやるよ’ って、龍臣から電話あって有難く貰った。店の方は早めに開店準備してバイトに数時間任せて来た。花火大会終わったら店に行く」
「真琴君の為か?それとも真琴君の女装姿を相当見たかったのか?」
「ま、どっちも!かな。マコが女装してまでも俺と行きたいって言うなら、それに応えてやら無いとな。普段は店の方ばかりで何にもしてやってねーし」
予想通りの返事だったが、こいつも変わったな。
以前は、真琴君も大事だが店が1番と言う感じだったが……最近は少し余裕が出来たんだろうな。店と真琴君と良いバランスで大切にしてる。
「前より真琴君と出掛けてるんじゃねーの。旅行に行ったって聞いたぞ」
「ああ、近場だけどな。ゆっくりもしたかったから温泉にな。1泊でもマコは喜んでくれた。前は店を中心に考えてたし、マコも俺の気持ち解ってたから我慢させてたと思う。お前らが付き合い始めて旅行や出掛けるのを見て、マコが羨ましそうな顔で話すのを聞いたり、お前達からも色々言われたしな。マコが何も言わ無い事を良い事に、俺の夢や気持ちを解ってくれてると甘えてた。この先もマコと一緒にやっていくのに、我慢ばかりさせてたことを反省した。これからはマコが願う事は全部とはいかないが、なるべく気持ちに沿うように叶えてやろうと思った」
何だか祐一も一回り人間として大きくなった気がする。
「良いじゃねー。前に、お前らが俺に言ったよなどちらかに負担や重荷を掛けても上手くいかないって。気づくのに遅くは無いさ。これからは今までの分、色々お前の出来る範囲で叶えてやれば良いだけの事だ」
バンッ! バンッ!
照れ臭くなり祐一の背中を叩いた。
「痛ってーな」
祐一も照れ臭そうだ。
そんな所に居間の扉が開いた。
矢島君が浴衣姿で現れた。
「お久し振りです」
「おう!」
「久し振りだな」
挨拶もそこそこに新婚生活はどうか?聞くと、矢島君から惚気話をされ ‘聞かなければ良かった’ と内心思って居た。
それは祐一も同じだったらしく、矢島君が嬉しそうに話す惚気話を適当に相槌を打って居た。
暫くすると、また扉が開いた。
今度は浴衣を着て綺麗に着飾った沙織が顔を出す
「大ちゃん! 遅かったわね~。んもう、寝過ごしちゃうんじゃないか?って、心配したわ」
「ごめん.ごめん」
目の前でイチャイチャ…してる2人。
家でやってくれよな~。
文句を言う事も出来ず、黙って呆れて眺めてた。
そんな俺達にやっと話し掛けてきた。
「支度できたわよ。あのね~、マコちゃんは凄く可愛いくなって、ヨシ君は物凄~く綺麗だよ~。洋服の方が色々加えたりでお洒落出来るけど、浴衣は何かまた違って、そんなに手は掛けられ無いけど…シンプルだから誤魔化せないのよね。腕の見せ所だと力が入ったわ」
お前の着せ替え人形談話は別によいから‼︎
自画自賛する沙織は凄く楽しそうだ。
早く、ミキの姿が見たいっつーの!
「さてと、お待ちかねのマコちゃんとヨシ君呼ぶわね」
やっとか!
「じゃあ、マコちゃんからね。マコちゃん、入って来て」
扉が開き、照れたように真琴君が部屋に入って来た。
真琴君の姿は黒地に紫の花が散りばめられた浴衣を着て居た。
髪もつけ毛なのか?ポニテールしスカーフでリボンに結ばれ可愛いらしくなってた。
化粧も派手では無いが、アイメイクバッチリで口紅はピンク系で全体的に可愛いメイクだと思った
若い!
パッと見、高校生に見える。
そんな風に思ってると、隣に座ってた祐一が小さく呟く。
「…可愛い」
思わずって感じで、本心が口から出た言葉をボソッと言った。
確かに可愛い~が、毎度毎度変わらない同じ感想だな。
そして徐ろに立ち上がり真琴君の側に行き「マコ、凄く似合ってるぞ。めちゃくちゃ可愛い」と頭を撫でる。
真琴君も祐一に言われて、やっとホッとし笑顔を見せた。
「本当?変じゃない?この浴衣ね、沙織さんのなんだけど…もう着ないからくれるって。持ってても仕方ないから断ったんだけど…沙織さんが ‘それを着て、来年は2人で花火大会行ってらっしゃい’って……」
祐一の店の事を気にしつつ話す真琴君に祐一は愛おしい目をし笑顔で話す。
「折角だから貰っておけ! 俺も龍臣にこの浴衣貰ったし。来年はこの浴衣着て2人でまた花火見に行こう」
祐一の言葉に真琴君はパァっと明るい顔になり、嬉しさが表情に出てた。
「本当‼︎ 良いの?嬉しい‼︎ 絶対、行く‼︎ 約束だよ⁉︎」
「解った.解った。そのくらいの時間は作るから安心しろ」
喜ぶ真琴君の頭をまた撫でた。
その2人のやり取りを俺と沙織と矢島君は微笑ましく眺めてた。
「その浴衣、私が高校生の時のだから本当に要らないのよ。逆に貰ってくれた方が嬉しいから。じゃあ、今度はヨシ君ね。伊織も心の準備は出来てる?呼ぶわよ、ヨシ君‼︎」
心の準備?
俺は去年、ミキの女装した浴衣姿は見てる。
去年の浴衣だし、さほど変わらないだろう。
去年も綺麗だった。
大袈裟に言う沙織は去年の浴衣姿のミキを見てないからな。
そんな事を考えてると扉が開いた。
それでも…やはりドキドキ…ワクワク…する。
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